女神は、シャクティとしてこの世界を生み出す動的なエネルギーであると広く崇められる存在です。美しさや優しさだけでなく、恐ろしさや凄まじさまで、さまざまに姿形が変化しあらわされるその存在は、私たち自身の内なる世界にも力強いエネルギーとして常に生きているものです。
その中に、アンビカーという女神がいます。「母」を意味するアンビカーは、シヴァ神の妃であるパールヴァティー女神の化身として知られていますが、パールヴァティー女神がこの姿に変容したことにも深い意味が存在しています。
シヴァ神と結婚をしたパールヴァティー女神は、結婚後も瞑想にふけり、家庭を顧みないシヴァ神に怒ることが度々ありました。しかし、怒りではシヴァ神を変えることはできないと気づき、優しい母の姿(アンビカー)となり、暖かい家庭を築くことに専念します。そうしてシヴァ神は暖かい家庭に幸せを見出し、二人の間に調和が生まれるようになったと伝えられています。
これは、精神と物質の結合であり、この現象世界にも大きな平安と秩序をもたらしました。男性原理(精神)であるシヴァと、女性原理(物質)であるシャクティの結合は、最終的な解脱とも言われ、古くから人々が求めてきたものです。そしてこの結合は、私たちの内なる世界においてこそ求められるものに他ありません。
自分自身の内に存在するエネルギーをさまざまに変容させながらも、シヴァ神のもとに調和させる行いは、幸せに生きるための大切な術の一つでもあります。そうしてシヴァ(精神)とシャクティ(物質)の調和を得る時、私たちの内は大きな至福と平安に満たされ、社会にも調和が生まれていきます。
女神としてさまざまな姿形をとってあらわされるエネルギーは、常に、私たちの内に生きていることに気づいていなければなりません。季節の変わり目にあたるナヴァラートリ祭は、この動的な女神のエネルギーと向き合う吉兆な時であると伝えられています。こうした時、改めて自分自身の内なる世界を見つめ、そのエネルギーと向かい合い、アンビカー女神のような気づきと共に豊かな日々を築いていきたいと感じています。
(文章:ひるま)
雑記帳
コメント