インドの古来の伝統において、女性は常に高い敬意を払われてきました。しかし、時代とともに様々な解釈や慣習が生まれ、特にガーヤトリー・マントラの実践に関して、女性の権利について議論が起こっています。本稿では、ガーヤトリー・サーダナにおける女性の権利について、歴史的背景と現代的視点から考察し、皆様にご紹介します。
1. インド文化における女性の地位
インドの文化では、女性は男性よりも敬虔であると考えられてきました。多くの場合、女性は「デーヴィー」(女神)と呼ばれ、シャーンティデーヴィー(平和の女神)、ガンガーデーヴィー(ガンジス川の女神)、ダヤーデーヴィー(慈悲の女神)といった名前が付けられています。
興味深いことに、多くの神々や偉大な人物は、妻の名前と共に知られています。例えば、シーター・ラーマ、ラーダー・シャーマ、ガウリー・シャンカラ、ラクシュミー・ナーラーヤナ、ウマー・マヘーシャ、マーヤー・ブラフマー、サーヴィトリー・サティヤヴァーンなどがあります。これらの名前では、女性の名が男性の名に先立って置かれています。
多くの思慮深く賢明な人々は、貞節、忠誠心、慈悲、思いやり、奉仕、同情、愛情、愛着、寛大さ、献身などの徳において、女性がより優れていると考えてきました。
2. 宗教的・精神的追求における女性の役割
すべての宗教的・精神的追求において、女性は一般的に優位性と敬意を与えられてきました。ヴェーダを詳しく調べると、リシ(聖者)だけでなく、多くのリシの妻たちもヴェーダの讃歌を啓示された「見者」であったことがわかります。
実際、リグヴェーダ(10/85)のマントラの「リシ」(作者)は、スーリヤー・サーヴィトリーという名の女性でした。「ニルクタ」(古代のヴェーダ解釈書)では、リシを「マントラを見る者、その背後にある秘密を理解し、それを他者に伝える者」と定義しています。
リグヴェーダには、ゴーシャー、ゴーダー、ヴィシュヴァヴァーラー、アパーラー、ウパニシャッド、ジュフー、アディティ、インドラーニー、サラマー、ローマシャー、ウルヴァシー、ローパームドラー、ヤミー、シャシュヴァティー、スーリヤー、サーヴィトリーなど、多くの女性リシの名前が挙げられています。これらの女性たちは「ブラフマヴァーディニー」(ブラフマンについて語る者)と呼ばれていました。
3. 古代インドにおける女性の学識と権利
古代インドでは、女性たちもヴェーダを学び、ヤジュニャ(祭祀)を行う権利を持っていました。多くの女性がヤジュニャの技術と宗教的学識に精通しており、時には父親や夫を指導することもありました。
例えば、イダーはマヌに対して、彼女がどのように火の儀式を行えば、世俗的な富、喜び、尊敬を得て、天国に到達できるかを教えました。シャタパタ・ブラーフマナでは、ヤージュニャヴァルキヤの妻マイトレーイーを「ブラフマヴァーディニー」と呼んでいます。これは「ヴェーダについて講義する者」を意味します。
4. 中世以降の変化と女性の権利の制限
しかし、中世の封建主義時代には、高位と低位、主人と奴隷の区別が生まれ、人類はいくつかの階層に分けられました。女性とシュードラ(最下層カースト)を「資格がない」と宣言し、彼らを劣等だと思わせるために、サヴァルナ(高カースト)の男性が全ての権利を享受し、女性、シュードラ、奴隷はすべての権利を奪われるような慣行が導入されました。
このような背景から、女性とシュードラはガーヤトリー・マントラを唱える権利がないと宣言されました。一部の学者たちは、人々がこれを古代からの伝統だと信じるように、聖典のテキストにいくつかの偽の詩節を挿入しました。
5. 現代における再評価と女性の権利の回復
現代は、平等と基本的人権の時代です。女性やいわゆるシュードラも人類の不可欠な一部です。インドの憲法では彼らに平等の権利が保障されています。これはガーヤトリー・マントラに関しても同様に適用されるべきです。
実際、近年では賢明で先見の明のある著名な人々が、中世の暗黒時代の悪しき慣習を廃止しようと努力しています。彼らは、中世以来続く、女性に対する強固な差別や制限から解放されない限り、インドは古代の栄光を取り戻すことはできないと認識し始めています。
6. マーラヴィーヤ氏の決定:転換点
この問題に関する重要な転換点は、1946年に起こりました。カーシー(現在のヴァーラーナシー)のヒンドゥー大学で、ヴェーダを教える課程に入学を希望した女子学生が、女性には聖典に従ってヴェーダのマントラを唱える権利がないという理由で入学を拒否されるという事件が起きました。
この論争は長期間続き、最終的に大学は、マハーマナー・マダナ・モーハナ・マーラヴィーヤ氏を委員長とする委員会を設置しました。この委員会は聖典を徹底的に研究した結果、女性は男性と同じくヴェーダに関する権利を持つという結論を出しました。
マーラヴィーヤ氏は、サナータナ・ダルマ(永遠の法)の擁護者として知られていましたが、1946年8月22日にこの委員会の決定を発表しました。これにより、問題の女子学生はヴェーダを学ぶ課程に入学を許可され、以後、女性がヴェーダを学ぶ権利を持つことが最終的に決定されました。
7. ガーヤトリー・サーダナにおける女性の現代的実践
このような歴史的背景と現代の解釈を踏まえ、ガーヤトリー・サーダナにおける女性の実践について、いくつかの重要なポイントを挙げます:
a) 平等な権利:女性は男性と同様に、ガーヤトリー・サーダナを行う完全な権利を持っています。
b) 月経期間中の配慮:月経中は通常のサーダナを中断し、精神的なジャパ(マントラの黙唱)のみを行うことが推奨されます。この期間が終わったら、沐浴後にサーダナを再開できます。
c) 家事との両立:家事に忙しい主婦のために、より簡単で時間のかからないサーダナの技法が提供されています。
d) 特別なサーダナ:未婚の女性、子どものいない女性、寡婦などのための特別なサーダナの方法が示されています。
e) 妊娠中のサーダナ:妊娠中の女性のための特別なメディテーション方法があり、これは生まれてくる子どもの知性と長寿に良い影響を与えるとされています。
f) 子どものためのサーダナ:病弱な子ども、怠惰な子ども、いたずらな子どもを持つ母親のための特別なサーダナがあります。
g) 特定の目的のためのサーダナ:家族の誰かに降りかかる可能性のある災難を避けたり、緊急の仕事の障害を取り除いたりするための特別なサーダナもあります。
8. 結論:調和と進歩
ガーヤトリー・サーダナにおける女性の権利の問題は、伝統と進歩、精神性と平等の調和を示す良い例です。古代の知恵を尊重しつつも、時代とともに変化する社会の要求に応じて解釈を更新していく必要があります。
女性がガーヤトリー・サーダナを行う権利は、単に平等の問題だけでなく、社会全体の精神的成長と調和にとって重要です。女性の直感的な知恵、慈悲心、献身的な性質は、ガーヤトリー・サーダナの実践に独特の深さと豊かさをもたらすことができます。
皆様にとって、このような議論は遠い国の話に聞こえるかもしれません。しかし、伝統と近代化の調和、精神性における性別の平等という課題は、多くの文化や宗教で共通のものです。ガーヤトリー・サーダナにおける女性の権利の問題は、より広い文脈で見れば、精神的実践における包括性と平等の重要性を示す普遍的な例と言えるでしょう。
私たちは皆、性別や出身に関わらず、自己実現と精神的成長を追求する権利を持っています。ガーヤトリー・サーダナは、その深遠な知恵と変容力によって、そのような普遍的な追求の素晴らしい手段となり得るでしょう。
参考文献:
Pandit Shriram Sharma Acharya, "Super Science of Gayatri", Yugantar Chetna Press, Shantikunj, Haridwar, India, 2000.
コメント