シヴァ神の妻であるパールヴァティー女神は、かつて、自らを守護する存在を求め、身体の垢から人形を作ったことがありました。
その人形に命を吹き込むと、母を守る美しい息子が誕生します。
しかし、その息子とシヴァ神との間で対立が起き、シヴァ神は息子の命を奪ってしまいます。
悲しみに暮れるパールヴァティー女神の姿に困惑したシヴァ神は、最初に出会った動物である象の頭を息子に与えました。
そして、ガンジス川の聖水をその体に注ぐと、息子は命を吹き返します。
ガネーシャ神の誕生を伝えるこの神話は、ガネーシャ神が二つの母の愛に包まれて成長したことを象徴的に物語っています。
それは、肉体の母であるパールヴァティー女神と、精神の母であるガンガー女神(ガンジス川)です。
実際に、ガネーシャ神には「二つの母を持つ者」という意味がある「ドヴァイマートゥラ」という別名があります。
物質世界の根源であるパールヴァティー女神は、私たちの人間としての出発点であり、清らかな流れのガンガー女神は、その魂の浄化と昇華を促す導き手です。
このパールヴァティー女神とガンガー女神に育まれるガネーシャ神の誕生と成長の神話は、肉体を持って生まれた私たちが精神的な目覚めへと向かう歩みを映し出しています。
例えば、物質世界(パールヴァティー女神)に根差しながら、精神的な浄化(ガンガー女神)によって生まれ変わるガネーシャ神の姿は、私たちもまた、物質と精神の両面から育まれているという事実を教えてくれています。
その事実は、私たちが与えられた人生において困難や試練という障害を克服し、精神的な成長を遂げていくことの尊さを伝えています。
私たちの精神的な成長を促す歩みには、瞑想、内省、献身などの実践が含まれます。
こうした実践により、思考、意図、行動を浄めることで、私たちは困難や試練という障害を克服し、人生を豊かに変容させることが可能になります。
ガネーシャ神がガンジス川の聖水で生まれ変わったように、その変容の力が私たちの魂を高みへと導くことを、この神話は静かに語りかけています。
このガネーシャ神の誕生と成長の神話に触れることで、私たちは人生の困難や試練を乗り越える知恵を得て、浄化と成長という美しき魂の旅路を歩むことができるはずです。
その最後には、ガネーシャ神が示す究極の解脱という祝福に与ることができるに違いありません。
(文章:ひるま)
※ガネーシャ神の二つの母については、この他にも異なる神話が伝えられます。
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