人生という長い歩みにおいては、幾多の試練に直面し、困難が果てしなく続くように感じられることがあります。
インド占星術によれば、このような苦難が生じる原因のひとつに、カーラ・サルパ・ドーシャがあるとされます。
カーラ・サルパ・ドーシャは、天空の蛇といわれるラーフ(月の昇交点)とケートゥ(月の降交点)の間に、他の7つの惑星が位置している時に生じるとされる好ましくない影響です。
古来より、このカーラ・サルパ・ドーシャの影響を軽減するために、蛇神を称えるナーガ・パンチャミーの礼拝が勧められてきました。
加えて勧められてきたのが、アースティーカ仙の礼拝です。
アースティーカ仙は人間の父と蛇の母を持ち、異なる世界の橋渡し役として生まれました。
対立を超えた調和の可能性を示すアースティーカ仙には、それを象徴するある有名な神話が伝わります。
ジャナメージャヤ王による蛇族の根絶を阻止したという神話です。
かつて、ジャナメージャヤ王は蛇に命を奪われた父のパリークシットの仇を討つために、蛇の供犠を行っていました。
両者の間では、世代を超えた根深い復讐のやり合いが行われていました。
しかし、アースティーカ仙は王の心の奥底に眠る慈悲の心に語りかけ、復讐の連鎖を断ち切ることに成功します。
こうして蛇族を救ったアースティーカ仙への祈りは、カーラ・サルパ・ドーシャの影響を緩和する力があるとして尊ばれています。
この神話は、私たち一人一人の心に宿る崇高な精神と慈愛の力を引き出す教えとしても、今日まで受け継がれています。
日々の生活の中で、私たちもまた怒りや憎しみ、そして復讐心に囚われ、終わりのない苦しみに悩まされることがあります。
しかし、アースティーカ仙の教えは、許しと慈悲の心を持つことで、自身の苦しみから解放されるだけでなく、周囲にも平和をもたらすことができるということを伝えています。
このような尊い教えは、カーラ・サルパ・ドーシャに象徴される人生の苦難に直面したときにこそ、その真価を発揮します。
試練は、私たちを成長させ、内なる強さを引き出す貴重な機会となるものです。
アースティーカ仙のように、そこで対立を超えた調和を見出す目を養うことができれば、私たちは人生のあらゆる局面で真の幸福への理解を深めることができるはずです。
周囲への思いやり、自分自身への慈しみ、そして世界との調和を意識することで、私たちは人生の苦難を断ち切ることが可能になります。
そうして試練を学びの糧として受け入れていく時、私たちは人生の歩みにおいて、真の幸福を体現する存在へと成長していくことができるに違いありません。
(文章:ひるま)
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