ラクシュミー女神の二本の腕

私たちの心の奥底には、神々の恩寵を求める静かな願いが常に宿っています。
しかし、日々の喧騒に包まれると、その恩寵はどこか遠くにあるもののように感じることが少なくありません。
光が溢れるディーワーリーの夜、私たちが祈りを捧げるラクシュミー女神は、豊かさの象徴としてその恩寵を授ける存在です。
中でも、サーマーニャ・ラクシュミー女神は、慈愛に満ちた恩寵が私たちの暮らしのずっと近くにあることを優しく語りかけています。

多くのラクシュミー女神の姿が四本の腕で描かれるのに対し、このサーマーニャ・ラクシュミー女神の姿は二本の腕で描かれます。
ラクシュミー女神は夫であるヴィシュヌ神に寄り添う時、この二本の腕で描かれることが特に多くあります。
この姿には、私たちの歩みを照らし、明るい導きを与える深い意味が秘められています。

二本の腕という、より人間に近いその姿は、ラクシュミー女神が私たちの日常に寄り添う親しみ深い存在であることを示しています。
サーマーニャに「一般的」「普通」という意味があるように、ラクシュミー女神は決して手の届かない存在ではありません。
その恩寵を受け取るために、華麗な儀式や贅沢な供物は必要ないということがその姿に示されています。
むしろ、日々の誠実な営みの中に、その恩寵は自ずと現れるということを、ラクシュミー女神は二本の腕で伝えています。

中でも、ラクシュミー女神とヴィシュヌ神が夫婦であることは、正義（ヴィシュヌ神）と繁栄（ラクシュミー女神）の切っても切れない結びつきを強く象徴しています。
特に、二本の腕のより人間らしいラクシュミー女神がヴィシュヌ神に寄り添う姿には、日々の暮らしの中で、正しい道を歩むところに必ず繁栄が訪れるという教えが示されています。

現代を生きる私たちは、ともすれば物質的な成功だけを追い求めがちです。
しかし、サーマーニャ・ラクシュミー女神は、日々を正しく生きるという精神的な成長の尊さを静かに語りかけています。
真の幸福は、その物質と精神の調和の中にこそ宿るものです。

このサーマーニャ・ラクシュミー女神の教えに従う生き方は、物質的な成功と精神的な成長の調和のとれた人生への道を開きます。
それは、神の恩寵を遠くに求めがちな私たちに、日々の行いを誠実に務めることの大切さを伝えています。
その行いの中で生まれるラクシュミー女神は、私たちの人生に限りない豊かさをもたらしてくれるに違いありません。

（文章：ひるま）