神授の視力を持つサンジャヤによって盲目のドリタラーシュトラ王へと伝えられたバガヴァッド・ギーター。
そこには、私たちの人生の指針となる多くの教えが含まれています。
この叡智が私たちに伝達されてきた過程には、バガヴァッド・ギーターの教えを深める学びを得ることができます。
叙事詩マハーバーラタの精髄とされるバガヴァッド・ギーターは、戦場で苦悩するアルジュナへクリシュナ神が説いた教えとして知られます。
アルジュナは敵陣であるカウラヴァ側に親族や師の姿を目にし、深い葛藤に苦しんでいました。
その戦場で交わされたクリシュナ神とアルジュナの対話は、サンジャヤによってカウラヴァ側にいる盲目のドリタラーシュトラ王へと伝えられていきます。
ドリタラーシュトラ王が盲目であることには、私たち人間の内なる無明を象徴する意味があるとされます。
王として高い地位にありながら、ドリタラーシュトラ王は息子たちへの執着と権力への渇望という内なる闇に覆われていました。
そうして描かれるドリタラーシュトラ王の姿は、物質的な欲望に囚われ、真の目的を見失い、人生に混乱する私たちの姿に重なります。
そんな盲目の王に対し、クリシュナ神がアルジュナに説く教えを伝えたのが、神授の視力を持つサンジャヤでした。
サンジャヤは単なる語り手ではなく、その叡智を伝える神聖な架け橋として存在しています。
このサンジャヤの神授の視力は、私たちが求めるべき霊的な目覚めの象徴でもあります。
ドリタラーシュトラ王は、サンジャヤの語りを通じて遠く離れた戦場で交わされるクリシュナ神とアルジュナの対話を「聞く」という形で受け取りました。
それは、たとえ自分が真実から遠く離れていたとしても、謙虚に耳を傾け、学ぶ姿勢を持ち続けることで、必ず導きの光が与えられることを示唆しています。
バガヴァッド・ギーターは、こうして盲目の王に語られることで私たちに重要な教訓を示します。
物質的な闇に囚われていても、真実に耳を傾ける意志さえあれば、誰もが神聖な光に通じることできるということです。
霊的な教えは単なる知識の伝達ではなく、魂の深層における目覚めをもたらすものであることがそこに示されています。
ドリタラーシュトラ王の盲目さは、バガヴァッド・ギーターが生まれることとなった争いを引き起こす一因となりました。
私たちもまた、日々の生活の中で内なる混乱を経験することがあります。
しかし、その闇こそが内なる視力を磨き、真実の光を見出す力となることを忘れずにいなければなりません。
その歩みの中で、バガヴァッド・ギーターの教えに真摯に耳を傾ける時、私たちは真の目覚めへと突き進んでいくことができるはずです。
(文章:ひるま)
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