蛇を象徴とする巳年が幕を開け、新たな一年が始まりました。
古い皮を捨てて新しい皮を得る蛇は、インドでも古来より神聖視され、その神秘的な姿には深い祈りが捧げられています。
この節目に、ナーガと呼ばれる多くの蛇神を産んだ母のカドゥルーの存在に学びを深め、新しい一年の力を呼び覚ましたいと感じます。
脱皮を繰り返す姿に再生や不死の象徴が見られてきた蛇は、私たちの内に宿る根源の力になぞらえられます。
クンダリニーと呼ばれるその力は、眠れる蛇のように私たちの身体の最下部、ムーラーダーラ・チャクラに渦巻いているとされます。
このムーラーダーラ・チャクラは五大元素における土の要素を持ち、それを象徴する色は赤とされてきました。
ナーガの母であるカドゥルーの名前には、同じように「赤褐色」という意味があります。
赤褐色は肥沃な大地の色を象徴し、創造と成長の源を想起させる色です。
カドゥルーとその子どもであるナーガは、こうした象徴を通じ、人間のもっとも原始的で、同時にもっとも崇高な生命への渇望をありありと示しています。
興味深いのは、このカドゥルーに「謙虚」という意味の名前を持つ姉妹のヴィナターがいたことです。
ヴィナターの子どもは、天を翔る神鳥ガルダでした。
カドゥルーとヴィナターは時に対立するも、それぞれ地を這う蛇と天を舞う鳥を子どもに持つこの姉妹の対比は、物質的な渇望と精神的な上昇という二つの異なる力のあらわれとしても見ることができます。
一見すると相容れないように見えるこの二つの力は、実際には私たちの成長に不可欠な両輪です。
カドゥルーとヴィナター、ナーガとガルダのように、相対する力が織りなす壮大な調和は、私たちの人生に計り知れない学びを与えてくれるものに他ありません。
何より、蛇が持つ脱皮という特徴は、この物質と精神の狭間にある変容の力を如実に示しています。
蛇が脱皮するように、私たちもより高次の意識へと生まれ変わることができるということです。
カドゥルーの子どもであるナーガは、この地に生を受けた私たちに、より高次の意識への上昇の道が開かれていることを教えてくれています。
カドゥルーは、私たちの内に眠る変容と再生の力を呼び覚まします。
その歩みは、物質的な力を精神的な成長への糧としていく道筋です。
この巳年の始まりに、カドゥルーの母なる力に祈りを捧げ、内なる力を真の成長に向けて目覚めさせたいと感じます。
この新しい一年が、私たち一人一人の精神的な変容の機会となりますように、心よりお祈り申し上げます。
(文章:ひるま)
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