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雑記帳

クリシュナ神とカーマデーヴァ

柔らかな光に包まれ、色とりどりの花が目覚める春の季節。
インドの伝統的な祭典であるホーリー・フェスティバルは、この生命の息吹に歓びを感じる明るい春の陽気の中で祝われます。
この祭典では、愛と欲望の神であるカーマデーヴァや、至高の神であるクリシュナ神が讃えられ、そこに込められた豊かな教えを学ぶことができます。

カーマデーヴァは、欲望を通じて生命を繁栄させる力を持つ神格として崇められます。
一方で、クリシュナ神は純粋な喜びや無条件の愛を体現する存在として、人々の心の支えとなっています。
この二柱の神の出会いには、私たちに深い気づきをもたらす貴重な教えが秘められています。

カーマデーヴァは、生きとし生けるものに欲望の矢を放ち、その心に情熱や活気を生み出すことを天命としていました。
しかし、バガヴァッド・ギーターでクリシュナ神が説くように、この欲望こそが個の魂の霊的な目覚めを妨げる最大の障壁となっていました。
そして、誰もがその矢を受け、この物質世界に縛られていました。

ある夕暮れ時、その日の務めを果たし終えたカーマデーヴァは、クリシュナ神の聖なる住処であるヴリンダーヴァンに辿り着きます。
そして、ヤムナー川のほとりで牧女たちと戯れるクリシュナ神を見たカーマデーヴァは、クリシュナ神もまた自分の矢の的になると考えました。
しかし、木々の陰から弓を構えクリシュナ神を見つめたその瞬間、カーマデーヴァは比類なきクリシュナ神の美しさに魅了され、その手から弓と矢を落としてしまいます。
すべての存在を欲望で支配してきた愛の神自身が、クリシュナ神の美しさにその心を奪われた瞬間です。

後にカーマデーヴァは、シヴァ神の第三の目から出た閃光によって灰になるも、クリシュナ神とルクミニーの息子であるプラデュムナとして生まれ変わります。
この再生は、欲望と神性の調和を象徴し、愛の神というもっとも強力な欲望でさえ、最終的にはクリシュナ神の慈愛の中で昇華されることを示唆しています。

この神話は私たちに、物質的な欲望を超えた精神的な信愛の価値を伝えています。
カーマデーヴァが生み出す欲望は、私たちを成長へと導く原動力となるものでありながらも、制御されないそれは苦しみを生み出します。
しかし、その欲望がクリシュナ神へと向かう時、私たちは利己的な欲求を超えて、魂の深い喜びをもたらす真の愛に目覚めることが可能になります。

春の陽光の中で祝われるホーリー・フェスティバルは、こうした深い精神性の目覚めを私たちに促してくれています。
カーマデーヴァがそうしたように、クリシュナ神が映す色鮮やかな喜びに的を定めることで、私たちは生きる力を真の幸福へ向かう道に導くことができるはずです。

(文章:ひるま)

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