ディーワーリー祭や結婚式など、インドの日常に溢れるさまざまなお祝いでは、美しい色や模様を目にすることがとても多くあります。お祝いだけでなく、日々の一瞬一瞬でも目にする美しい色や模様の数々は、自分自身の内にとても清らかな流れを生み出してくれることを幾度となく実感することがありました。
そんなインドの日常に欠かすことができないものに、ランゴーリー、またはコーラムなどと呼ばれる美しい模様があります。ランゴーリーが「色の列」を意味するように、カラフルに色づけされた砂や粉を用いて、家々の入り口や庭の地面に描かれるこれらの模様は、神々や他者を温かく迎え入れるため、日常的に多く描かれるものです。伝統的には米粉や米粒などを用いて地面に描かれてきましたが、それらが餌となって鳥や蟻を招くことから、他との調和をもたらすとも信じられてきました。
これらの模様は、私たち自身により良い影響を与えるものでもあります。一説には、地面をほうきで掃いたり、伝統的に牛糞を塗ったりするとき、そこには不規則な掃き跡(塗り跡)が残ることがあります。こうした不規則な線や模様は、周囲の環境にさまざまな悪影響をもたらすと信じられ、そこにランゴーリーのような吉兆な模様を描くことで、より良い影響が生み出されると信じられています。
伝統的に描かれてきたこうした吉兆な模様の数々には、神聖な波動が含まれていると教えられたこともありました。例えば、金属製のプレートなどに塩を撒いて音を出し、音の振動がプレートに伝わる時、プレート上の塩がさまざまな模様を形成する「音の形」という有名な実験があります。伝統的に受け継がれてきたランゴーリーの模様を見て心の平安や清らかさを得るのは、それらの模様がマントラのような神聖な音の波動を秘めているからだと伝えられることもあるそうです。
ランゴーリーは模様だけでなく、神聖な動物や植物、神々が描かれることも多くあります。そういったものを描くことに夢中になる瞬間は、それだけで、心に大きな安らぎをもたらしくてくれるものです。何より、こうした美しさや神聖さが形となって側にある時、日々の美しさや豊かさをより深く感じることができるに違いありません。
(文章:ひるま)
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