新年あけましておめでとうございます。
नववर्षे भवद्भ्यः सर्वेभ्योऽपि शुभाशयाः सन्तु।
navavarṣe bhavadbhyaḥ sarvebhyo'pi śubhāśayāḥ santu|
「新しき年に、皆様すべてに吉祥がありますように」
サンスクリット語という言語の魅力は
高度かつ精緻なその文法にこそあります。
それらの知識が積み重なっていった末に、
ただの記号や音でしかなかった文のなかから
意味を理解できたときの至福の喜びは
まさに神からの賜物かもしれません。
文法の説明は無味乾燥になりがちなので、
サンスクリット語を学ぶシリーズとは別に
今年はサンスクリット語にちなんだ
くだけた話も交えていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
新年最初のテーマは
ガーヤトリーマントラにも出てくる単語dhī-(思慮、知性)を例に、
īで終わる女性名詞のうち「単音節」といわれる名詞の格変化についてです。
単音節、というのは、母音を一つだけ含む語幹。
単音節のdhī-(思慮、知性)と
以前紹介したkālī-(カーリー女神)を比べてみましょう。
dhī- (女性名詞、思慮) 単音節の例 | |||
単数 | 両数 | 複数 | |
主格 | dhīḥ | dhiyau | dhiyaḥ |
対格 | dhiyam | dhiyau | dhiyaḥ |
具格 | dhiyā | dhībhyām | dhībhiḥ |
為格 | dhiye/dhiyai | dhībhyām | dhībhyaḥ |
奪格 | dhiyaḥ/dhiyāḥ | dhībhyām | dhībhyaḥ |
属格 | dhiyaḥ/dhiyāḥ | dhiyoḥ | dhiyām/dhīnām |
処格 | dhiyi/dhiyām | dhiyoḥ | dhīṣu |
呼格 | dhīḥ | dhiyau | dhiyaḥ |
kālī- (女性名詞、カーリー女神) 多音節の例 | |||
単数 | 両数 | 複数 | |
主格 | kālī | kālyau | kālyaḥ |
対格 | kālīm | kālyau | kālīḥ |
具格 | kālyā | kālībhyām | kālībhiḥ |
為格 | kālyai | kālībhyām | kālībhyaḥ |
奪格 | kālyāḥ | kālībhyām | kālībhyaḥ |
属格 | kālyāḥ | kālyoḥ | kālīnām |
処格 | kālyām | kālyoḥ | kālīṣu |
呼格 | kāli | kālyau | kālyaḥ |
dhī-という単語は、
ガーヤトリーマントラの中にも出てきます。
ॐ भूर्भुव: स्व: om bhūr bhuvaḥ svaḥ
तत्सवितुर्वरेण्यम् tatsaviturvareṇyam
भर्गो देवस्य धीमहि bhargo devasya dhīmahi
धीयो यो न: प्रचोदयात् ।। dhiyo yo naḥ pracodayāt.
最後の行、一番最初のdhiyoはdhiyaḥというのが元の形で、
後ろに子音で始まる単語が来るためdhiyoに変化しています。
dhiyaḥ という形は、dhī- の表で探すと
単数の奪格「知性のために」、単数の属格「知性の」、そして
複数の主格「知性たちは」、複数の対格「知性たちを」、複数の呼格「知性たちよ」、
すべて同じ形です。
はたして、どう意味を考えればよいのでしょうか?
ヒントは最後のpracodayāt。
これは「~を促したまえ」という動詞です。
dhiyaḥはその目的語になるので、複数、対格であり、
「知性を促したまえ」、と理解することができます。
(文章:prthivii)
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