いよいよディーワーリー祭が間近に迫ってきました。およそ5日間にわたって祝福される盛大なディーワーリー祭は、広大なインドの地で、さまざまな祝福が執り行われます。中でもとりわけ有名なのが、ディーワーリー祭の4日目に祝福される、ゴーヴァルダナ・プージャーです。家庭では、神聖な牛の糞でゴーヴァルダナ山に見たてた山やクリシュナ神の像を作り、花や色粉で彩った後にプージャーを行い、祈りを捧げます。
ゴーヴァルダナ・プージャーには、バーガヴァタ・プラーナに記されたクリシュナ神とインドラ神にまつわる神話があります。大昔、人々は熱心にインドラ神を礼拝し、豪華な食事を捧げていました。雷雨の神であるインドラ神への礼拝は、雨を降らせ大地を肥沃にし、人々に豊かな食物を授けると信じられていたからです。
そんな人々にクリシュナ神は、「インドラ神を礼拝するのではなく、身近にある、食物をもたらす大地や、雲を生み出すゴーヴァルダナ山そのものを礼拝する方が良い。」と伝えます。そしてクリシュナ神の導きの下、人々はインドラ神の代わりに、大地やゴーヴァルダナ山を礼拝し始めました。
インドラ神はひどく怒り、7日間に渡って大雨を降らせ、大洪水を引き起こします。するとクリシュナ神は、小指でゴーヴァルダナ山を持ち上げ傘とし、人々や大地を大雨から守ったと伝えられます。その日が、ディーワーリー祭の4日目にあたると信じられています。
大地や山といった、大自然のありのままの姿を礼拝することは、ヒンドゥー教の礎として大切に伝えられてきた行いであり、今でも人々の中心にあるものです。ゴーヴァルダナ・プージャーは、「食事の山」を意味する「アンナクータ」とも呼ばれ、一部の地域や慣習では、何十種類もの豪華な食事が準備され、大自然の恵みを礼拝するといわれます。
クリシュナ神という万物の源を支えに行うこうした礼拝は、大自然を守り、調和の内に平和な社会を生み出す基本に他ありません。それはまた、大きな世界との共存を教えてくれるものであり、自分自身の周囲に幸せをもたらすものでもあります。この時改めて、自分自身の周囲を見つめ、私たちが得るこうした恵みに感謝をする時間を過ごすのもよいかもしれません。
(文章:ひるま)
コメント