インドでおなじみの挨拶「ナマステー」も
最近の若い人はあまり使わなくなっているとも聞きますが、
この言葉は二つの単語から出来ています。
नमस् ते ナマス・テー
ナマスは「礼拝」「敬意」を、
テーは「あなた」「きみ」を意味しています。
誰に対しても分け隔てなく敬意を示して
「ナマス・テー」と挨拶するのですね。
さてこの「ナマス」という言葉、
日本人には古くから繋がりがあります。
「南無阿弥陀仏」
「南無観世音菩薩」等々の「南無」
密教の真言に出てくる「ノウマク」「ナウマク」も
どちらも「ナマス」が訛ったものです。
よく知られているマントラ
ॐ नमो नारायनाय オーン・ナモー・ナーラーヤナーヤ
ॐ गणेशाय नमः オーン・ガネーシャーヤ・ナマハ
などのなかに出てくる
「ナモー」「ナマハ」も
全て「ナマス」とまったく同じ単語、同じ意味です。
ではなぜ、同じ単語なのに
ナマスだったりナモーだったり
ナマハだったりするのでしょうか?
「ナマス」が訛ったものなのでしょうか?
以前、サンスクリット語の名詞は
格変化がたくさんあるという話を書きましたが、
「ナマス」が格変化しているのでしょうか?
実はナマスという単語は格変化をしない性質があります。
また訛りでもありません。
語中や文中の音が、前後の音との影響で変化する規則
=「サンディ」によるものなのです。
サンディを詳しく説明するには時間がかかるので
今は簡単に説明すると、ナマスが
文の一番最後に来ているときは、ナマハ
後ろにナ行の子音が来ているときは、ナモー
後ろにタ行の子音が来ているときは、ナマス
というふうに、変化しています。
もう一度、三つの文を比べてみましょう。
नमस् ते ナマス・テー
ॐ नमो नारायनाय オーン・ナモー・ナーラーヤナーヤ
ॐ गणेशाय नमः オーン・ガネーシャーヤ・ナマハ
日本語でも英語でも、前後の音の連結で
発音が変化することは珍しいことではありませんが、
サンスクリット語では、文字も変わってしまいます。
そのことは以前にも
単語と単語をつなげて書く表記法
のなかで書きましたが、
サンスクリット語を学びはじめた人が
ぶつかる大きな壁がこのサンディだろうと思います。
しかし、サンディを知っていると
マントラを唱えるときにも
単語の区切りや意味が把握できるようになります。
(文章:pRthivii)
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