私たちに至高神と結びつけるための神聖な知識を授けるヴェーダ。そんなヴェーダの中で最も古いとされるリグ・ヴェーダにおいて、ガーヤトリー女神は人類にガーヤトリー・マントラを授けました。太陽神サヴィトリへの讃歌であるガーヤトリー・マントラは、 私たちに知識という光をもたらす最高のマントラであり、ガーヤトリー女神は人々の無知を取り除くヴェーダの母として崇めらています。私たちを光に導くガーヤトリー・マントラは、グル・マントラとしても崇められ、ヒンドゥー教における最高峰のマントラとして位置付けられています。
賢者たちは、ガーヤトリー・マントラの意味を伝えるだけでなく、唱えることで真の知識を授ける力を生み出すように、その言葉を示しました。ガーヤトリー・マントラの音節は、人体のすべてのチャクラにより良い影響を与えると伝えられ、正しい発音と抑揚で、1日に3度、日の出、正午、日の入りにおいて唱えることが勧められます。マントラは108回唱えることで最大の恩恵が授けられると伝えられますが、時間が限られている時は、3、9、18回などの吉祥回数を唱えることでも恩恵があるでしょう。
ガーヤトリー・マントラに秘められた力は、唱える者の知識と、霊性の成長を阻むあらゆる障害を取り除きます。サティヤ・サイ・ババは、「ガーヤトリー・マントラは、どこにいようとも唱える者を守り、その知性を輝かせ、言葉の力を強め、無知の暗闇を払いのける。」と説いています。
真理の探究が中心となるウパニシャッドでも、ガーヤトリー・マントラについて多くの言及がなされています。サーマ・ヴェーダに付属し、最初期のウパニシャッドとされるチャーンドーギヤ・ウパニシャッドでは、以下のように述べられています(第3章第12節)。
(1)ガーヤトリー(韻律の一種)は、ここに存在する一切の存在である。ガーヤトリー(Gāyatrī)とは実に声である。声は実にこの一切の存在を歌い(gāyatri)、また救う(trāyate)。
(2)この大地も実にガーヤトリーである。何故ならば、このすべての存在はそれを拠りどころとし、それから抜け出ることはないからである。
(3)この大地はまた人間における肉身である。何故ならば、これらの諸生気はそれを拠りどころとし、それから抜け出ることはないからである。
(4)この人間における肉体は実にこの人間における心臓である。何故ならば、これらの諸生気はそれを拠りどころとし、それから抜け出ることはないからである。
(5)このガーヤトリーは四足[註1]で六部分[註2]から成る。それについて、『リグ=ヴェーダ』の讃歌[註3]に〔次のように〕述べられている。
(6)その偉大さはこのようであり、
プルシャはそれよりさらに大である。
一切の存在はその足であり、
天上における不死はその三つの足である[註4]、と。
(7)このブラフマンといわれるものは、実に人間の外にある虚空である。実に人間の外にある虚空こそ、
(8)人間の内部にある、この虚空である。実に人間の内部にある虚空こそ、
(9)心臓の内部にある、この虚空である。それは充満しているものであり不変のものである。
このように知る者は、満ち足りて変ることのない幸福を得る。
[註1]一切の存在・大地・人間の肉身および心臓の四者を指す。
[註2]前記四者に声と生気を加えた六者を指すと考えられる。
[註3]『リグ=ヴェーダ』10・90・3。
[註4]『リグ=ヴェーダ』10・90・3。
(岩本裕編訳『原典訳 ウパニシャッド』ちくま学芸文庫,2013:68-69)
ガーヤトリー・マントラは、スマラナ(想起)、ディヤーナ(瞑想)、プラールタナー(祈り)という3つの側面を持ちます。その言葉の意味を理解し、真摯に唱えることで、永遠の幸福を授かることができるでしょう。
(SitaRama)
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