女神を讃える9日間のナヴァラートリが続いているインド。
その終わりとなる4月14日には、正義の化身であるラーマ神の降誕祭が祝福されます。
そんなラーマ神を心から愛し、献身的に仕えたのが、お猿の神様であるハヌマーンです。
主に北インドでは、ハヌマーンの降誕祭が、4月19日の満月に祝福されます。
ハヌマーンは、たくさんの神々が崇められるインドでも、絶大な人気を誇る神格です。
その理由は、何よりも、その強さにあります。
海を飛び越えたり、山を持ち上げたり、ハヌマーンの成した偉業は数知れません。
そんなハヌマーンは、8つのシッディの1つである、身体の大きさを自在に操る力を持っていました。
ラーマーヤナに記されたその神話には、成功を達成するための秘訣を見ることができます。
ハヌマーンは、愛するラーマ神の妃であり、誘拐されたシーター女神を救うべく、ランカー島に向かって空を飛んでいました。
その道のりには、数々の障壁があらわれます。
その一つが、スラサです。
スラサはナーガ(蛇族)の母として知られ、ハヌマーンの力を試そうとしました。
「お前は、私に飲み込まれる運命にある」と、スラサはハヌマーンの前に立ちはだかります。
すると、ハヌマーンはスラサに飲み込まれないよう、自らの身体を大きくしました。
しかし、スラサはそのハヌマーンの身体よりも、さらに大きく口を開きます。
ハヌマーンはさらに身体を大きくし、スラサはそのハヌマーンの身体よりも、さらに大きく口を開きました。
その後、ハヌマーンはあっという間に身体を小さくし、スラサの口に入ると、耳から飛び出したと伝えられます。
この神話で見られるスラサは、まるで私たちの欲望のようです。
満たされるほどに膨れ上がる欲望は、スラサの口のように、限りなく大きくなり続けます。
私たちはその欲望に飲み込まれ、数々の苦難を経験しなければなりません。
スラサに打ち勝つためにハヌマーンがしたことは、自分を小さくすることでした。
私たちが欲望に打つ勝つためには、そんなハヌマーンのように、自分のエゴを小さく抑え込むことが必要不可欠です。
そして、ハヌマーンがそれを実行できたのは、正義の化身であるラーマ神へ、何よりも深い愛を抱いていたからでした。
成功に至る道には、数々の障壁が立ちはだかります。
しかし、ハヌマーンのように心が主に定まる時、私たちは障壁を乗り越え、成功に至る道を突き進むシッディを獲得することができるに違いありません。
次の満月、そんなハヌマーンへの祈りを捧げたいと感じます。
(文章:ひるま)
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