バガヴァッド・ギーター第2章第62節

ध्यायतो विषयान् पुंसः
dhyāyato viṣayān puṁsaḥ
ディヤーヤトー ヴィシャヤーン プンサハ
感官の対象を思念する人にとって

dhyāyatas【男性・単数・属格、現在分詞 √dhyā】瞑想する、沈思する、熟考する、思念する;想像する
viṣayān【男性・複数・対格、viṣaya】[〜を、〜に]活動領域;範囲、限界、区域、届く範囲;感覚の対象;感官の対象;目的、標的
puṁsas【男性・単数・属格、puṁs】[〜の、〜にとって]男、男性;人間;召使い;霊

सङ्गस् तेषूपजायते ।
saṅgas teṣūpajāyate |
サンガス テーシューパジャーヤテー
それらに対する執着が生じる

saṅgas【男性・単数・主格】[〜は、〜が]粘着、妨害;〜に執着または接触すること
teṣu【男性・複数・処格、指示代名詞 tad】[〜において、〜のなかで]それ、その、あれ、あの、彼
upajāyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 upa√jan】[彼は、それは]生じる、生まれる;起こる、現れる;存在する

सङ्गात् संजायते कामः
saṅgāt saṁjāyate kāmaḥ
サンガート サンジャーヤテー カーマハ
執着から欲望が生じ

saṅgāt【男性・単数・従格、saṅga】[〜から、〜より]粘着、妨害;〜に執着または接触すること
saṁjāyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 sam√jan】[彼は、それは]生じる、生まれる;成長する;起こる、現れる
kāmas【男性・単数・主格】[〜は、〜が]〜に対する願望、欲望;愛、快楽;利益;性愛;愛の神

कामात् क्रोधो ऽभिजायते ॥
kāmāt krodho ‘bhijāyate ||
カーマート クロードー ビジャーヤテー
欲望から怒りが生じる

kāmāt【男性・単数・従格、kāma】[〜から、〜より]〜に対する願望、欲望;愛、快楽;利益;性愛;愛の神
krodhas【男性・単数・主格】[〜は、〜が]怒り、激怒、憤怒、激情
abhijāyate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 abhi√jan】[彼は、それは]生まれる、運命づけられる;産出させられる;(輪廻して)再生する

ध्यायतो विषयान्पुंसः सङ्गस् तेषूपजायते ।
सङ्गात्संजायते कामः कामात्क्रोधोऽभिजायते ॥ ६२ ॥

dhyāyato viṣayānpuṁsaḥ saṅgas teṣūpajāyate |
saṅgātsaṁjāyate kāmaḥ kāmātkrodho’bhijāyate || 62 ||
人が感官の対象を思念するとき、それらに対する執着が生じる。
執着から欲望が生じ、欲望から怒りが生じる。

※この節において、jāyateに付随する3つの接頭辞upa(〜に、〜の方に、こちらへ)、sam(一緒に、共に、全く)、abhi(〜へ、〜の方へ、向かって)は、韻律を整えるためのもので、意味の違いはないとされる。

バガヴァッド・ギーター第2章第61節

तानि सर्वाणि संयम्य
tāni sarvāṇi saṁyamya
ターニ サルヴァーニ サンミャンミャ
それらすべての(感官)を制御して

tāni【中性・複数・対格、指示代名詞 tad】[〜を、〜に]それら、あれら、彼ら、彼女ら
sarvāṇi【中性・複数・対格】すべての、一切の、各々の;全体の
saṁyamya【絶対分詞 sam√yam】保持して、引き締めて;抑止して制御して;束縛して;閉じて;阻止して、抑圧して、注視して;制止して、服従させて

युक्त आसीत मत्परः ।
yukta āsīta matparaḥ |
ユクタ アーシータ マットパラハ
専心して、私に専念して坐すべき

yuktas【男性・単数・主格、過去受動分詞 √yuj】くびき(軛)につながれた、(処格)に従事した、〜に専心した;(具格)に忙殺された、〜に専念した;(処格)に熱中した;集中した
※matparaのあとでは、yukta=bhakta「誠信を具えて」と訳してもよい。(辻直四郎注)
āsīta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 √ās】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]坐す;住する、止まる;住居を構う;屯営する;休む、留まる、横たわる
mat【一人称・単数・従格、人称代名詞 mad】私から、私より
paras【男性・単数・主格】〜を主要なものとする、〜を目的とする、〜に熱中する、〜に深く感動する
→matparas【男性・単数・主格】私に専念する、私に専向する
※matpara:ここで初めて、「私」(クリシュナ)に専念すべきことが説かれる。(上村勝彦注)

वशे हि यस्येन्द्रियाणि
vaśe hi yasyendriyāṇi
ヴァシェー ヒ ヤッスェーンドリヤーニ
なぜならば、感官を制御する

vaśe【男性・単数・処格、vaśa】[〜において、〜のなかで]意志、願望、欲望;力、支配、権威、主権【形容詞】〜に従う、〜の勢力下にある、〜に征服された
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
yasya【男性・単数・属格、関係代名詞 yad】[〜の、〜にとって]〜であるもの、〜である人
indriyāṇi【中性・複数・主格、indriya】[〜は、〜が]神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚

तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥
tasya prajñā pratiṣṭhitā ||
タッスヤ プラジュニャー プラティシュティター
その人の智慧は確立するから

tasya【男性・中性・単数・属格】[〜の、〜にとって]彼、それ、その、あれ、あの
prajñā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]識別、判断、知能、了解;智慧、知
pratiṣṭhitā【女性・単数・主格、過去受動分詞】(処格)に立っている・配置された・座った・位置した・留まる・ある・熟達した;確立した、証明された;安住した、悩まされない

तानि सर्वाणि संयम्य युक्त आसीत मत्परः ।
वशे हि यस्येन्द्रियाणि तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥ ६१ ॥

tāni sarvāṇi saṁyamya yukta āsīta matparaḥ |
vaśe hi yasyendriyāṇi tasya prajñā pratiṣṭhitā || 61 ||
それらすべての感官を制御して、専心し、私に専念して坐すべきである。
なぜならば、感官を制御する人の智慧は確立するから。

バガヴァッド・ギーター第2章第60節

यततो ह्यपि कौन्तेय
yatato hyapi kaunteya
ヤタトー ヒヤピ カウンテーヤ
実にアルジュナよ、努力している

yatatas【男性・単数・属格、現在分詞 √yat】努力している、〜しようと努めている、〜に専念している、〜を切望している
hi【不変化辞】なぜならば、〜のために;真に、確かに、実に
api【不変化辞】さらに、また、同様に;されど、なお
kaunteya【男性・単数・呼格】クンティーの息子よ。アルジュナの別名。

पुरुषस्य विपश्चितः ।
puruṣasya vipaścitaḥ |
プルシャッスヤ ヴィパシュチタハ
賢い人にとって

puruṣasya【男性・単数・属格、puruṣa】[〜の、〜にとって]人;人間;霊魂;個人の本体、普遍的霊魂、最高精神
vipaścitas【男性・単数・属格、vipaścit】[霊感(vipas)を知る(cit)]霊感を受けた;賢い、造詣の深い、学問のある

इन्द्रियाणि प्रमाथीनि
indriyāṇi pramāthīni
インドリヤーニ プラマーティーニ
かき乱す感官は

indriyāṇi【中性・複数・主格、indriya】[〜は、〜が]神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
pramāthīni【中性・複数・主格、pramāthin】切断する;攪乱する、扇動する、悩乱させる、苦しめる

हरन्ति प्रसभं मनः ॥
haranti prasabhaṁ manaḥ ||
ハランティ プラサバン マナハ
力ずくで心を奪い去る

haranti【三人称・複数・パラスマイパダ・現在 √hṛ】[彼らは、それらは]圧倒する、支配する、連れ去る、取り去る、運び去る、奪い去る;魅惑する;破壊する
prasabham【副詞】強いて;激しく、乱暴に;非常に、きわめて;執拗に
manas【中性・単数・対格】[〜を、〜に]心、内的器官、知性、理性、精神、良心、思考、意向、気分

यततो ह्यपि कौन्तेय पुरुषस्य विपश्चितः ।
इन्द्रियाणि प्रमाथीनि हरन्ति प्रसभं मनः ॥ ६० ॥

yatato hyapi kaunteya puruṣasya vipaścitaḥ |
indriyāṇi pramāthīni haranti prasabhaṁ manaḥ || 60 ||
実にアルジュナよ、賢い人が努力しても、
かき乱す感官は、力ずくでその心を奪い去る。

バガヴァッド・ギーター第2章第59節

विषया विनिवर्तन्ते
viṣayā vinivartante
ヴィシャヤー ヴィニヴァルタンテー
感官の対象は消滅する

viṣayās【男性・複数・主格】活動領域;範囲、限界、区域、届く範囲;感覚の対象;感官の対象;目的、標的
vinivartante【三人称・複数・アートマネーパダ・現在 vi-ni√vṛt】[彼らは、それらは]戻る、帰る;(従格)をやめる、を断念する;退く、去る、やむ、消える

निराहारस्य देहिनः ।
nirāhārasya dehinaḥ |
ニラーハーラッスヤ デーヒナハ
断食する人にとって

nirāhārasya【男性・単数・属格、nirāhāra】[〜の、〜にとって]断食【形容詞】食事を断った、食べるべきものをもたない
dehinas【男性・単数・属格、dehin】[〜の、〜にとって]生物;人間;(肉体をそなえた)精神、魂;個我、自我

रसवर्जं रसो ऽप्यस्य
rasavarjaṁ raso ‘pyasya
ラサヴァルジャン ラソー ピヤッスヤ
味を除いて。しかし味も、彼にとって

rasavarjam【副詞】味を除いて
rasas【男性・単数・主格】味、風味;味覚の対象物;味覚器官、舌;に対する賞味・嗜好・愛好・親愛;欲望;愛情;快楽、喜び;魅惑;情趣、情緒、情感
api【不変化辞】さらに、また、同様に;されど、なお
asya【男性・単数・属格、指示代名詞 idam】[〜の、〜にとって]これ、この、彼

परं दृष्ट्वा निवर्तते ॥
paraṁ dṛṣṭvā nivartate ||
パラン ドリシュトヴァー ニヴァルタテー
最高の存在を見て、消滅する

param【男性・単数・体格、para】最高の;より優れた、より高い、より良い、より悪い;最上の、卓越した、最善の
dṛṣṭvā【絶対分詞 √dṛś】見て、注視して
nivartate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 ni√vṛt】[彼らは、それらは]戻る、帰る;やめる、沈黙する;やむ、終わる、消える

विषया विनिवर्तन्ते निराहारस्य देहिनः ।
रसवर्जं रसोऽप्यस्य परं दृष्ट्वा निवर्तते ॥ ५९ ॥

viṣayā vinivartante nirāhārasya dehinaḥ |
rasavarjaṁ raso’pyasya paraṁ dṛṣṭvā nivartate || 59 ||
断食する人にとって、味以外の感官の対象は消滅する。
しかし最高の存在を見るとき、味もまた消滅する。

バガヴァッド・ギーター第2章第58節

यदा संहरते चायं
yadā saṁharate cāyaṁ
ヤダー サンハラテー チャーヤン
これが収めるとき

yadā【接続詞】〜である時、〜する時
saṁharate【三人称・単数・アートマネーパダ・現在 sam√hṛ】[彼は、それは]一緒にする、集める;寄せ集めて1つにする、(手足を)縮める;(感覚器官を)引っ込める
ca【接続詞】そして、また、〜と
ayam【男性・単数・主格、指示代名詞 idam】これは、これが

कूर्मो ऽङ्गानीव सर्वशः ।
kūrmo ‘ṅgānīva sarvaśaḥ |
クールモー ンガーニーヴァ サルヴァシャハ
亀が手足を完全に(収める)ように

kūrmas【男性・単数・主格】亀が
aṅgāni【中性・複数・対格、aṅga】[〜を、〜に]肢、支分、部分、男根、身体;要素;第二次的の部分
iva【副詞】〜のように、〜と同様に、言わば
sarvaśas【副詞】全体に、集団で、完全に、一斉に

इन्द्रियाणीन्द्रियार्थेभ्यस्
indriyāṇīndriyārthebhyas
インドリヤーニーンドリヤールテービヤス
感官を感官の対象から

indriyāṇi【中性・複数・対格、indriya】[〜を、〜に]神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
indriya【中性】神の力;支配;偉大な行為;活力;体力;精力;感官;感覚
arthebhyas【男性・複数・従格】[〜から、〜より]仕事;目的;原因、動機;意味;利得;財産、富、金銭;物、事、事物;場合
→indriyārthebhyas【男性・複数・従格、限定複合語】感官の対象から、感覚器官の対象より

तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥
tasya prajñā pratiṣṭhitā ||
タッスヤ プラジュニャー プラティシュティター
その人の智慧は確立している

tasya【男性・中性・単数・属格】[〜の、〜にとって]彼、それ、その、あれ、あの
prajñā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]識別、判断、知能、了解;智慧、知
pratiṣṭhitā【女性・単数・主格、過去受動分詞】(処格)に立っている・配置された・座った・位置した・留まる・ある・熟達した;確立した、証明された;安住した、悩まされない

यदा संहरते चायं कूर्मोऽङ्गानीव सर्वशः ।
इन्द्रियाणीन्द्रियार्थेभ्यस्तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥ ५८ ॥

yadā saṁharate cāyaṁ kūrmo’ṅgānīva sarvaśaḥ |
indriyāṇīndriyārthebhyastasya prajñā pratiṣṭhitā || 58 ||
亀が手足を完全に収めるように、感官を感官の対象から
完全に収めるとき、その人の智慧は確立している。

バガヴァッド・ギーター第2章第57節

यः सर्वत्रानभिस्नेहस्
yaḥ sarvatrānabhisnehas
ヤハ サルヴァットラーナビスネーハス
すべてのものに対して愛着なく

yas【男性・単数・主格、関係代名詞 yad】〜であるもの、〜である人
sarvatra【副詞】すべての点において、すべての場合に、常に
abhisnehas【男性・単数・主格】(処格)に対して欲望のない、愛着のない

तत्तत् प्राप्य शुभाशुभम् ।
tattat prāpya śubhāśubham |
タットタット プラーピヤ シュバーシュバム
さまざまな善悪のものに出会っても

tad tad【中性・単数・主格、指示代名詞 tad】あれやこれや、いろいろなもの、さまざまな、種々の
prāpya【絶対分詞 pra√āp】到達して、会して、邂逅して、見出して;獲得して、娶って;蒙って
śubhāśubham【中性・単数・対格、並列複合語、śubha + aśubham】[〜を、〜に]善悪、禍福

नाभिनन्दति न द्वेष्टि
nābhinandati na dveṣṭi
ナービナンダティ ナ ドヴェーシュティ
喜ばず、憎まない(人)

na【否定辞】〜でない
abhinandati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 abhi√nand】[彼は、それは](対格)に満足を感じる、〜を喜ぶ、〜を楽しむ、〜に興じる、〜に嬉しい顔をする;欲する、求める
na【否定辞】〜でない
dveṣṭi【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √dviṣ】[彼は、それは]〜を嫌う、〜を敵視する、〜に憎悪を示す、〜を憎む;〜と争う、〜の相手となる

तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥
tasya prajñā pratiṣṭhitā ||
タッスヤ プラジュニャー プラティシュティター
その人の智慧は確立している

tasya【男性・中性・単数・属格】[〜の、〜にとって]彼、それ、その、あれ、あの
prajñā【女性・単数・主格】[〜は、〜が]識別、判断、知能、了解;智慧、知
pratiṣṭhitā【女性・単数・主格、過去受動分詞】(処格)に立っている・配置された・座った・位置した・留まる・ある・熟達した;確立した、証明された;安住した、悩まされない

यः सर्वत्रानभिस्नेहस्तत्तत्प्राप्य शुभाशुभम् ।
नाभिनन्दति न द्वेष्टि तस्य प्रज्ञा प्रतिष्ठिता ॥ ५७ ॥

yaḥ sarvatrānabhisnehastattatprāpya śubhāśubham |
nābhinandati na dveṣṭi tasya prajñā pratiṣṭhitā || 57 ||
すべてのものに対して愛着なく、さまざまな善悪のものに出会っても、
喜びも憎しみもしない人、その人の智慧は確立している。

バガヴァッド・ギーター第2章第56節

दुःखेष्वनुद्विग्नमनाः
duḥkheṣvanudvignamanāḥ
ドゥフケーシュヴァヌドゥヴィグナマナーハ
不幸のなかで心乱されず

duḥkheṣu【中性・複数・処格】[〜において、〜のなかで]不安、心配、苦痛、悲しみ、悲哀、困難、苦しみ
anudvigna【過去受動分詞 an-ud√vij】激さない、驚かない、不安にならない、当惑しない、動揺しない
manās【男性・単数・主格】[〜は、〜が]心、内的器官、知性、理性、精神、良心、思考、意向、気分
→anudvignamanās【男性・単数・主格、所有複合語】心が乱されない、心が動揺しない、悩まない

सुखेषु विगतस्पृहः ।
sukheṣu vigataspṛhaḥ |
スケーシュ ヴィガタスプリハハ
幸福を切望せず

sukheṣu【中性・複数・処格】[〜において、〜のなかで]安楽、歓喜、幸福、享楽、繁栄、成功
vigata【過去受動分詞 vi√gam】離れた、立ち去った、止まった、消えた、亡くなった、無くなった
spṛhas【男性・単数・主格】[〜は、〜が]熱望、渇望、欲求、願望、欲望
→vigataspṛhas【男性・単数・主格、所有複合語】欲望がない、切望しない、執着しない

वीतरागभयक्रोधः
vītarāgabhayakrodhaḥ
ヴィータラーガバヤクローダハ
欲望、恐怖、怒りを離れた人は

vīta【過去受動分詞 vi√i】去った、消えた、失われた
rāga【男性】激しい欲望、情熱、愛、愛情、同情
bhaya【中性】恐れ、驚き、恐怖、心配、不安
krodhas【男性・単数・主格】[〜は、〜が]怒り、激怒、憤怒、激情
→vītarāgabhayakrodhas【男性・単数・主格、所有複合語】欲望、恐怖、怒りを離れた人は

स्थितधीर् मुनिर् उच्यते ॥
sthitadhīr munir ucyate ||
スティタディール ムニル ウッチャテー
叡知が確立した聖者と言われる

sthitadhīs【女性・単数・主格、所有複合語、sthita-dhī】心の堅固な、叡知の確立した、思慮の安定した
munis【男性・単数・主格】[〜は、〜が]霊感を得た人;賢人、預言者、苦行者、隠者、沈黙の誓約をした者、聖者
ucyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vac】[彼は、それは]言われる、話される

दुःखेष्वनुद्विग्नमनाः सुखेषु विगतस्पृहः ।
वीतरागभयक्रोधः स्थितधीर्मुनिरुच्यते ॥ ५६ ॥

duḥkheṣvanudvignamanāḥ sukheṣu vigataspṛhaḥ |
vītarāgabhayakrodhaḥ sthitadhīrmunirucyate || 56 ||
不幸のなかで心乱されず、幸福を切望せず、
欲望、恐怖、怒りを離れた人は、叡知が確立した聖者と言われる。

バガヴァッド・ギーター第2章第55節

श्रीभगवान् उवाच ।
śrībhagavān uvāca |
シュリーバガヴァーン ウヴァーチャ
クリシュナは語った

śrībhagavān【男性・単数・主格】栄光ある方、神聖な神、威厳ある尊者。ここではクリシュナのことを指す。
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】[彼は]言った、語った

प्रजहाति यदा कामान्
prajahāti yadā kāmān
プラジャハーティ ヤダー カーマーン
彼が欲望を捨てる時

prajahāti【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 pra√hā】[彼は、それは]去る;見捨てる、断念する、放棄する、(義務に)違背する、(約束を)破る;投げる、ほうる、やむ、消え去る
yadā【接続詞】〜である時、〜する時
kāmān【男性・複数・対格】欲望を、願望を、欲求を;愛を、享楽を

सर्वान् पार्थ मनोगतान् ।
sarvān pārtha manogatān |
サルヴァーン パールタ マノーガターン
心にあるすべての、アルジュナよ

sarvān【男性・複数・対格】すべての、一切の
pārtha【男性・単数・呼格】プリターの息子よ。アルジュナのこと。
manas【中性】心、内的器官、知性、理性、精神、良心、思考、意向、気分
gatān【男性・複数・対格、過去受動分詞 √gam】行った、来た、〜に陥った、〜に於ける、〜の中にある、〜に含まれる、〜に向けられた;死んだ;消えた、失われた
→manogatān【男性・複数・対格、manogata、限定複合語】心中におこる、心中に隠された、秘密の

आत्मन्येवात्मना तुष्टः
ātmanyevātmanā tuṣṭaḥ
アートマンニエーヴァートマナー トゥシュタハ
自ら自己に満足した

ātmani【男性・単数・処格、ātman】[-において、-の中に]気息;霊魂;生命、自身;本質、本性;特色;身体;知性、悟性;我、最高我
eva【副詞】実に、真に(強意を表す。しばしば虚辞として使用)
ātmanā【男性・単数・具格、ātman】[-によって、-をもって]気息;霊魂;生命、自身;本質、本性;特色;身体;知性、悟性;我、最高我
tuṣṭas【男性・単数・主格、過去受動分詞 √tuṣ】満足した、満足させられた、悦んだ

स्थितप्रज्ञस्तदोच्यते ॥
sthitaprajñastadocyate ||
スティタプラジュニャスタドーチャテー
そのとき、彼は智慧が確立したと言われる

sthitaprajñas【男性・単数・主格、所有複合語、sthita-prajña】確固とした智慧のある、叡知の堅固な、智慧が安定した、叡知の定まった
tadā【副詞】そのとき、それから
ucyate【三人称・単数・現在・受動活用 √vac】[彼は、それは]言われる、話される

श्रीभगवान् उवाच ।
प्रजहाति यदा कामान्सर्वान्पार्थ मनोगतान् ।
आत्मन्येवात्मना तुष्टः स्थितप्रज्ञस्तदोच्यते ॥ ५५ ॥

śrībhagavān uvāca |
prajahāti yadā kāmānsarvānpārtha manogatān |
ātmanyevātmanā tuṣṭaḥ sthitaprajñastadocyate || 55 ||
クリシュナは語りました。
アルジュナよ、人が心にあるすべての欲望を捨て、自ら自己に満足する時、
その人は智慧が確立した人と言われる。

バガヴァッド・ギーター第2章第54節

अर्जुन उवाच ।
arjuna uvāca |
アルジュナ ウヴァーチャ
アルジュナは言った

arjunas【男性・単数・主格】アルジュナは
uvāca【三人称・単数・パラスマイパダ・完了 √vac】[彼は]言った、話した

स्थितप्रज्ञस्य का भाषा
sthitaprajñasya kā bhāṣā
スティタプラジュニャスヤ カー バーシャー
智慧の定まった者の特徴は、どのようなものか

sthitaprajñasya【男性・単数・属格、所有複合語、sthita-prajña】確固とした智慧のある、叡知の堅固な、智慧が安定した、叡知の定まった
kā【女性・単数・主格、疑問代名詞 kim】何、誰、なぜ、どんな、どのように
bhāṣā【女性・単数・主格】言葉、談話、言語;日常語、口語、方言;記述、定義;告訴、告発、起訴

समाधिस्थस्य केशव ।
samādhisthasya keśava |
サマーディスタッスヤ ケーシャヴァ
三昧に住する者の、クリシュナよ

samādhisthasya【男性・単数・属格、所有複合語、samādhi-stha】瞑想に専念している、三昧に住する
keśava【男性・単数・呼格】ケーシャヴァよ。クリシュナの別名。名前は「美しい(長い)髪をもつ者」の意。

स्थितधीः किं प्रभाषेत
sthitadhīḥ kiṁ prabhāṣeta
スティタディーヒ キン プラバーセータ
叡知の確立した者は、どのように語り

sthitadhīs【女性・単数・主格、所有複合語、sthita-dhī】心の堅固な、叡知の確立した、思慮の安定した
kim【中性・単数・主格、疑問代名詞】何が、誰が、なぜ、どんな、どのように
prabhāṣeta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 pra-√bhāṣ】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]宣言する、告げる、言明する;暴露する;言う、話す;説明する;名付ける;(対格)と対話する

किम् आसीत व्रजेत किम् ॥
kim āsīta vrajeta kim ||
キム アーシータ ヴラジェータ キム
どのように坐し、どのように歩むだろうか

kim【中性・単数・主格、疑問代名詞】何が、誰が、なぜ、どんな、どのように
āsīta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 √ās】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]坐す;住する、止まる;住居を構う;屯営する;休む、留まる、横たわる
vrajeta【三人称・単数・アートマネーパダ・願望法 √vraj】[彼は〜だろう、彼は〜するべき]行く、歩む、進む、旅行する、動く;達する

अर्जुन उवाच ।
स्थितप्रज्ञस्य का भाषा समाधिस्थस्य केशव ।
स्थितधीः किं प्रभाषेत किमासीत व्रजेत किम् ॥ ५४ ॥

arjuna uvāca |
sthitaprajñasya kā bhāṣā samādhisthasya keśava |
sthitadhīḥ kiṁ prabhāṣeta kimāsīta vrajeta kim || 54 ||
アルジュナは尋ねました。
「クリシュナよ、智慧が定まり、三昧に留まる人の特徴はどのようなものでしょうか。
叡知が確立した人は、どのように語り、どのように坐し、どのように歩むのでしょうか。」

バガヴァッド・ギーター第2章第53節

श्रुतिविप्रतिपन्ना ते
śrutivipratipannā te
シュルティヴィプラティパンナー テー
聞くことに惑わされたあなたの(知性が)

śruti【女性】聞くこと、傾聴;音響、騒音;伝統的な宗教的教義、聖典(ヴェーダ)
vipratipannā【女性・単数・主格、過去受動分詞 vi-prati√pad】惑わされた、当惑した、困惑した;誤り、間違い、相違
→śrutivipratipannā【女性・単数・主格、限定複合語】聞くことに惑わされた、聖典から乖離した、ヴェーダの教義を軽視した
te【単数・属格、二人称代名詞 tvad】あなたの

यदा स्थास्यति निश्चला ।
yadā sthāsyati niścalā |
ヤダー スタースヤティ ニシュチャラー
不動のものとして確立する時

yadā【接続詞】〜である時、〜する時
sthāsyati【三人称・単数・パラスマイパダ・未来 √sthā】[それは〜だろう]立つ;静止する;確立する、樹立する、創立する;固定する、決定する
niścalā【女性・単数・主格】不動の;安定した;不変の;不易の

समाधावचलाबुद्धिस्
samādhāvacalābuddhis
サマーダーヴァチャラーブッディス
三昧において動じない知性が

samādhau【男性・単数・処格、samādhi】(処格)に注意することにおいて、〜に熱中していることにおいて;(最高我への)深い瞑想において、深い専心において;三昧において
acalā【女性・単数・主格】不動の、動じない、動かない;山、岩
buddhis【女性・単数・主格】知能、理解力、理性、知性、精神;識別、判断;沈着、機知;知覚;会得;意見、見解;信仰、確信;想定

तदा योगम् अवाप्स्यसि ॥
tadā yogam avāpsyasi ||
タダー ヨーガム アヴァープスヤシ
そのとき、あなたはヨーガに達するだろう

tadā【副詞】そのとき、それから
yogam【男性・単数・対格】ヨーガに;実修に;精神の集中に、瞑想に
※ヨーガ:この場合も、平等の境地をさす。(上村勝彦注)
avāpsyasi【二人称・単数・パラスマイパダ・未来 ava√āp】[あなたは〜だろう]獲得する、得る、入手する;(非難、不和、苦痛等を)被る、苦しむ

श्रुतिविप्रतिपन्ना ते यदा स्थास्यति निश्चला ।
समाधावचलाबुद्धिस् तदा योगमवाप्स्यसि ॥ ५३ ॥

śrutivipratipannā te yadā sthāsyati niścalā |
samādhāvacalābuddhis tadā yogamavāpsyasi || 53 ||
聞くことに惑わされていたあなたの知性が、不動のものとして確立し、
三昧において動じない時、あなたはヨーガに達するだろう。