ハタ・ヨーガやアシュターンガ・ヨーガが広く普及する社会では、ヨーガといえば、身体的なポーズやエクササイズ、または呼吸法を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、伝統的なヨーガには、さらに多くの種類があります。
特に、マントラ瞑想はヨーガの伝統であり、その真の目的である神との合一に欠かすことのできないものです。サンスクリット語の「ヨーガ」という言葉は、「合一」や「結びつき」を意味し、神または崇高な存在との繋がりを象徴します。もちろん、ハタ・ヨーガやアシュターンガ・ヨーガの実践も、崇高な存在に近づくよう人々の意識を開く助けとなるものです。ヨーガの実践に伴い活性化するチャクラによって、最終的には生命力がコントロールされ、意識が上昇し、神との合一を遂げることができると信じられます。
マントラ瞑想で用いられるマントラは、神聖な音や言葉を含んだ特定の波動です。マントラという言葉は、サンスクリット語で心を意味する「マン」と、解放を意味する「トラ」から生まれたといわれます。マントラは、心を物質世界から解放し、精神世界へと導く神聖な音の波動です。その音が物質世界を超越することから、超越的な音と呼ばれることもあります。
マントラは、神の御名やその存在に基づいた神聖な音から構成されます。実際に、マントラには「ラーマ」、「チャンドラ」、「クリシュナ」、「シヴァ」などの神の御名が多く含まれると共に、「ハレー」、「シャーンティ」などの神聖なサンスクリット語の言葉が用いられます。
マントラを唱える際には、その音に注意をしながら、心の中で繰り返し唱えたり、または声に出して唱えることができます。心がさ迷い出ても、マントラの神聖な音に意識が引き戻されるでしょう。数珠を用いて唱えたり、楽器を用いて賛美歌のように唱えたりすることもできます。マントラの詠唱を続けることで、物質世界を超えた神聖な音に心が定まり、内なる世界には平安が生まれます。
また、マントラ瞑想にはすばらしい恩恵があり、神の御名が人々の意識を浄化すると信じられます。私たちの身体は、魂が宿る一時的な場所であり、崇高な意識は身体という物質に覆われていると考えられます。身体という物質は幻想であり、あらゆる苦難が生まれる場に他ありません。物質世界を超越するマントラを定期的に聞いたり唱えたりすることで、身体という物質に束縛され生み出される苦悩から解放されると信じられています。
日本では、マントラというと、怪しい宗教のひとつと捉えられることがあるかもしれません。しかし、マントラ・ヨーガは、インドの伝統的なヨーガの系統に属し、生活の一部として定着しています。聖なる音の持つ力、そしてその音に意識を向けることによって得られる心身の解放に、あらためて目を向けてみてはいかがでしょうか。
(SitaRama)
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