197、アーユルヴェーダ音楽療法入門59 (用語辞典:シ)

シ:
本来正しくは「Si/スィ」であるものの幾つかで、日本に於いてある程度長く用いられて来た為、ここ「シ(正確にはShi)」に分類した語彙もありますことをお許し下さい。

シャブダ:
アーユルヴェーダ治療法のひとつ「問診」。

シャギール/シャギルド:
イスラム教徒のインド古典音楽界に於ける「弟子」のこと。

シャー:
ペルシア語で「王」のこと。
中世インド・イスラム帝国では、本家に唯一の「シャー」が存在したが。後に、本家から許され「地方総督」が領土を持ち、更に「藩王国」の地位を得、更には「シャー」を名乗り乱立した。

シャーナーイ:
ペルシア系の元祖オーボエ「スルナイ」のインドでの呼称。西アジアでは「スルナイ(楽葦)」「ズルナイ(力強い葦)」などとされたが、インドでは「王の葦=笛」となった。循環呼吸法を用いて音を絶やさない。
本来は、イスラム宮廷野外楽や軍楽の楽器であったが、ヴァラナシやムンバイのヒンドゥー領主や豪族も好んで用い、宗教を超えた存在になった。

シャンカ:
法螺貝のこと。かなり古くから、ブラフマン教、仏教、ヒンドゥー教と広く法器として用いられた他、軍楽でも合図に用いられた。(日本の戦国時代と同じように)

シャンティー:
「平和」「平穏」「静寂」のこと。中世ヒンドゥー至上主義者の古典音楽理論の「旋法ラーガに定義された9の感情」のひとつでもある。反対語は「アシャンティー」。

シャイヴァ:
ヒンドゥー教・シヴァ派のこと。ベンガル地方では「シャイヴォ(ショイヴォ)」と訛る。
ヒンドゥー教がブラフマン教を駆逐した後、そのお墨付きを多数文字化した際、多数書かれた「プラーナ文献」では、「シヴァ・プラーナ」「リンガ・プラーナ」「スカンダ(軍神)・プラーナ」「ヴァーユ(本来はブラフマン教の風神)・プラーナ」「アグニ(本来はブラフマン教の火神)・プラーナ」を総称して「シャイヴァ・プラーナ」などと呼ぶ。

シャストリア・サンギート:
文字通り「科学音楽」のこと。
ヒンドゥー布教運動が活発化し、主に演劇を通じて布教することが盛んになった頃に、科学音楽は、大きく変貌し「Performing-Arts」の性格を有した。その頃に、「純然たる音楽(本来の科学や医療目的としての)」を区別して「シャストリア・サンギート」と称し、「布教・芸能的音楽」を「ガンダールヴァ・サンギート」と称し、区別した。近現代のインドに於いて「シャストリア・サンギート」は、殆ど存在せず、語っている場合も、「ガンダールヴァ・サンギート」が、更に「イスラム宮廷古典音楽」の長い時代を経た「古典音楽」に過ぎない。

シッディー(スィッディー):
古くは、瞑想や修行に於ける神秘体験のことを言ったが。後世、特殊なタントリズムや、過激なハタ・ヨーガの(主に欧米に於いて)発展の中で、「奇跡・超常現象的な力、卓越した能力」や、「瞑想の高次の段階で得られるとされる超越体験」など、超能力やオカルティックなイメージに偏った。中世から近世に掛けて、イスラム文化地域でも神秘主義が連立し、同じような神秘体験を多く語ったが、「事実・真実」もあれば「思い込み・自己暗示」「眉唾」などとも境目の無い世界でもある。

シクシャ:
ヴェーダ文献の後(多くはヒンドゥー教台頭の後)に書かれた「韻律学」の指南書。インド古典音楽では、「音律学~音楽・楽理書」の意味で用いられる。

シッシェ:
ヒンドゥー教徒の学問や音楽に於ける「弟子」のこと。
「グル・シッシェ・パランパラ=師弟制度の伝統」に則っている。

シタール:
北インド古典音楽の弦楽器。正確には「スィタール」であり、ペルシア語の「セタール」が訛った。
アヌーシュカ・シャンカル(現在の女流トップクラスSitarist)とノラ・ジョーンズ(女優・歌手)の父であり、ビートルズのジョージハリソンの師であった故ラヴィ・シャンカルによって世界に知られるようになった。その歴史は、説く者がその都合によって大いに誇張され様々な解釈がなされる。原型および同名のインドに於ける弦楽器の歴史は、確かに10世紀頃であり「13世紀の大臣・音楽家アミール・フスロウが古典楽器に昇格させた」は、嘘とは言えない。しかし、前述のビートルズ云々から今日日本でも良く知られた弦楽器を同定するならば。全長120cm程で、サワリ音を持ち(Jawari)、同一フレット上で弦を横に引っ張る技法を多用し(Mind)、共鳴弦を多数持つ(Tarab)「シタール」の発現は、早くても19世紀後半であり、決して古い楽器ではない。

シャタ・タントリ・ヴィーナ:
古代のハープ。正確には、その中の最大の楽器で「百弦」のものを言うが、同系のハープ(舟型胴に皮を張り、湾曲した棹から斜めに弦を張る)の総称的にもなった。東南アジアにも広く伝わり、カンボジアのアンコールの遺跡に多く描かれる他、所謂「ビルマの竪琴」は、今日も用いられている。

シュリー:
1:「ラクシュミ女神」の俗称的な別名。
2:現存する最も古い旋法(ラーガ)のひとつ。1:のラクシュミ女神とは直接関係しない。

シュルティー:
古代インド音楽の音律に於ける「最小単位」の音程のこと。「讃歌:シュローカ」同様に「動詞:シュール(聴く)」を語源としている。基本的に、ヴァーダ科学から様々な古代科学に於いて「単位」の意味で用いられる。日本語の観念では「粒」というニュアンスが最も近い。
古代音楽では、オクターブを「22のシュルティー」に分割し、その配分は、最終的に三種(三番目が現われたころには二番目が滅んでいたという解釈もある)あり、それぞれから七音(所謂ドレミ)を割り出す方法が各数種ある、というのが「古代(の一時期)の旋法学」であった。中世に「ラーガ旋法学」が定着し他を淘汰した後も、「基本音」の観念で用いられる語となった。例えば(ペルシア系の)オーボエ「Shahnai」の合奏では、単音だけを吹く、お弟子が担当するオーボエがあり(指穴が無い専用管楽器の場合もあれば、普通のシャーナイで、基音だけ吹く場合もある)「シュルティー・ウパンギ」と呼ばれた。また1980年代に突如現われた「電子基音楽器」は、「シュルティーBox」と命名された。

シュローカ
ヴェーダ散文、マントラを、五~七音音階で歌う「讃歌」。「シュルティー」同様に「動詞:シュール(聴く)」から発している。
10世紀以降、「ヴァーダ復興主義者」たちが捏造した音楽原理・歴史論「全ての歌はヴェーダから発している」は、かなり無理な主張。だがしかし、実際、1音~3音のヴェーダ詠唱~マントラを吟じていた僧侶が、次第に一部を五~七音音階で歌うようになったり、既に自然発生していた「五~七音音階で歌う讃歌」をも歌うようになった時代的推移(やはり10世紀前後と思われる)から、「1音~3音のヴェーダ詠唱~マントラ→五~七音音階で歌うシュローカ」という観念が定着したと思われる。同系の讃歌「ストータラ」のような厳格な韻律法則はない。同系讃歌の総称の意味合いで用いている専門家も少なくない。

シュローカム
「ヴァーダ讃歌・マントラ」の一種。讃歌。「シュローカ」を南インドの言語習慣(語尾にmを付ける)でこう呼ばれる。

シュレーシャカ・カパ:
トリ・ドーシャのひとつ「カパ」のサブ・ドーシャ(ダートゥ)のひとつ。関節の安定、結合に力を与える。

シャーニ:
土星。インド占星術ジョーティーシュとの関係で説かれるアーユルヴェーダ音楽療法の伝統では、極めて落ち着いた、平穏を与える「基音の代理音」と関係が深い。しかし、この力が亢進し強くなり過ぎる場合は、基音の存在を奪い、バランスを180度反転させてしまう可能性もある。

シンハ(スィンハ):
獅子、獅子座。
太陽信仰が優勢になって以降の獅子座は、太陽との関係性、生命の根源や魂との関係性が多く説かれた。
アーユルヴェーダ音楽療法の伝統でも、基本音との関係が説かれ、星座の中でも中心的な存在とされた。

シュッダ:
古代インド音楽~中世(現在も同様)インド古典音楽に置ける「ナチュラル音程」のこと。「半音上げる=シャープ#音」「半音下げるフラット♭音」に対して呼ばれる。
字義は「真」であるが、音楽に於いては、「元々の」程度の意味であり、日本の魚の名前「マダイの真」「マアジの真」程度の意味である。しかし、ヨガ学では、本来の「真の」の意味の重みで用いられる。

シュクラ:
金星。アーユルヴェーダ音楽療法の伝統では、金星と関連の深い旋法(ラーガ)や楽音は、全体のバランスが保たれている時には、極めて潤滑かつ甘美で優しい経過音であるが、一旦、バランスが崩れた時や、金星関連の音が異常に強調された時は、極めて危険、良くても極めて不安定な状態となり、生命体の心身に重大な悪影響を与える。逆に、この危険性を熟知している古代専門家は、中医・漢方薬の幾つかにもあるように、或る種の「劇薬」として、それを活用した。

シュクラ・ヤジュル(ヴェーダ):
ヴェーダ文献のヤジュル・ヴェーダの中で、現存する最も有名な「黒・白」二種類の一方の「白ヤジュル・ヴェーダ」のこと。一般に、サンヒター(本編)とブラーフマナ(注釈)が分離しているため、歴年の研究者は「混在している黒ヤジュル・ヴェーダの方が古い」と言われるが、疑問も拭えない。
ヤジュル・ヴェーダ総体は、祭祀祭礼の道具、供物などについて(一部に神々への讃歌もあると言う)散文で書かれた上に、それを詠唱すると説かれる。このことを理解するには、古代インドから綿々と継承される基本的な習慣を理解すると良い。それは、「文字化しようとしまいと、普遍的に記憶すべき事柄を、詠歌に込め、その歌を歌いながら行為することを修行とする。例えば、古く日本の台所で言われた「はじめちょろちょろ中ぱっぱ 赤子泣いても蓋取るな」を2~3音の詠歌にして、ご飯炊きの最中詠唱し続けるような感じ。古典音楽の旋法ラーガについてかつては、その主音・副主音・時間帯などの記憶すべき事柄を、そのラーガで作曲したエチュードが教えられた。
しかし、一説には数百とも言われる「異なる解釈の異なる伝承」があるヤジュル・ヴェーダの中の「白ヤジュル」も「黒ヤジュル」もほんの一部であると言われ、他のヴェーダ文献同様に、後世に加筆されたり落とされたものも少なくないと考えられる(定説ではBC.1c成立となっている)。従って、前述した「記憶法と作法」に見られる「論理性」と「或る特定の思考回路の活性」の実践法としての価値を見出すべきである。
また、「文字化出来るし、文字化したが、それに加えて詠唱を行った」ということは、文字化の思考回路、文字を読む思考回路、歌にして詠唱する思考回路などの異なりをヴェーダは熟知し説いていたことになる。しかし、これらを説く研究者はほぼ皆無。

シヴァ神:
ブラフマン~(仏教/ジャイナ教)~ヒンドゥー教を探求する上で、最も重要かつ、最もややっこしい神のひとつ。ヒンドゥー教では「三大神:ブラフマン/シヴァ/ヴィシュヌ」に数えられるが、シヴァ派やシヴァ派系の宗派では「絶対神」としての「イーシュヴァラ」と同一視される。ブラフマン教には存在しなかった筈であり、従って仏教にも取り込まれなかった筈であるが、後世ヒンドゥー至上主義者は様々な関連を説いた。これらの混沌とした事柄を置いて、特筆すべき点が、ヒンドゥーご利益宗教が台頭した後も「荒神」的な性格を維持し、その妃であるパールヴァティー女神の化身、ドゥルガー女神やカーリ女神などにも見られる「畏怖」を象徴する性格を持つ。より「荒神」的なキャラクターとしては、化身(別名という解釈もある)「バイラヴ神」「ルードラ神」が知られるが、「別な地域神が同一視された」とも「別な地域神と習合した」とも言われる。基本的に「創造の神~創造と(その必然としての)破壊の神」の性質が多く語られるが、「(相反する性質が共存する)二元性」の象徴と解釈すれば、「宇宙の摂理」「生命体の基本原理」、更には「陰陽説」とも合致する。

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「インドに関係ないじゃないか!?」と思われるかも知れませんが、無論、当書では書き切れませんでしたが、「日本の楽器→ルーツ(ペルシアとインド)」の物語の背景には、「Naga-Sadhu(裸形上人)」や「Saraswati(妙音天)派修行僧」などの活躍が大であるという解釈が存在します。機会を得る度に、その核心に迫って行きますので、どうぞ応援下さいませ。

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若林は現在、福岡及び近郊の方の「通いレッスン」の他に、全国の民族音楽・民族楽器ファンの方々にSkypeでのレッスンを実施しています。体験の為に、インド楽器とVedic-Chant、アーユルヴェーダ音楽療法の「無料体験講座」も行っています。詳しくは「若林忠宏・民族音楽教室」のFacebook-Page「Zindagi-e-Mosiqui(毎月の実施日時も掲載しています)」か、若林のTime-Lineにメッセージでお尋ね下さい。 九州に音楽仲間さんが居らっしゃる方は是非、ご周知下さると幸いです。

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chametabla@yahoo.co.jp 若林

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(文章:若林 忠宏

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