悪を倒す知識の母

木々の葉が落ち静寂に包まれていた冬が終わり、眩い光が差し込む春の訪れを迎えようとしています。
この美しい自然を動かす偉大な力は、インドでは女神として古来より崇められてきました。
季節の変わり目においては、9日間に渡って、女神たちが真摯に礼拝されます。

ナヴァラートリーと呼ばれるこの9日間の祝祭においてとりわけ熱心に崇められるのが、シヴァ神の妃であるドゥルガー女神の9つの姿です。
その9つの姿の中に、スカンダマーターと呼ばれる女神がいます。

スカンダマーター女神は、スカンダ神の母を意味します。
ターラカースラという凶悪な悪魔を倒したスカンダ神を産んだことから、こうして崇められるようになりました。
スカンダ神は、カールッティケーヤやムルガンなど、数多くの名を持つ霊的探求の守り神です。

スカンダ神が倒したターラカースラは、シヴァ神の子ども以外には殺されないという特別な力を持っていました。
しかし、最初の妻であるサティーを亡くしたシヴァ神は悲嘆にくれ瞑想に耽っていたために、シヴァ神の子どもを授かることは不可能のように見えました。
そんなシヴァ神を目覚めさせ、スカンダ神を授かったのがスカンダマーター女神です。

スカンダ神は、知識を象徴する鋭い槍を持ってターラカースラと戦います。
このターラカースラは、誰しもが持つエゴの象徴として捉えられてきました。
エゴは、私たちを目標に向かって奮起させる原動力となる一方で、必要以上のそれはさまざまな問題を引き起こします。
霊性の道を歩む過程においては、まず取り除かれるべきものとして捉えられてきました。

このエゴの力を適切に用いるために必要なのが、正しい知識です。
スカンダ神が知識を象徴する鋭い槍でターラカースラを倒したように、私たちは知識を用いてエゴを自分自身の制御下におかなければなりません。
そのためには、シヴァ神という純粋な意識に結びつくスカンダマーター女神の力を呼び覚まし、自分自身の内にスカンダ神を生み出す必要があります。

心身ともに不調が生じやすい季節の変わり目は、無知の暗闇に落ちてしまうことが少なくありません。
この時、スカンダマーター女神に祈りを捧げることで、知識という明るい光が差し込み、真に豊かな道を歩み続けることができるはずです。
皆様にも女神の大きな恩寵がありますように、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)