さまざまな問題に直面する日々において、疲弊したり憂鬱な気分になったりすることは少なくありません。
時にはそうした落ち込みが大きな障壁となって、進む道に立ちはだかることもあります。
インドでは、そんな障壁を取り除くと信じられるムドラーの実践があります。
そのムドラーは、ガネーシャ・ムドラーと呼ばれます。
ガネーシャ神は、不吉な出来事をすべて破壊し、全世界に幸福をもたらすと信じられる神格です。
一方で、障壁を克服することで強さを獲得できるように、ガネーシャ神は私たちが歩む道にそっと障壁を置いていくことがあるといわれます。
そんなガネーシャ神を崇めるムドラーは、私たちを身体的に、また精神的に強化すると伝えられるムドラーです。
それは、心臓と心を強化するものであると伝えられます。
ガネーシャ・ムドラーでは、まず左手の手の平が外側を向くように、自分の胸の前に広げます。
そして、その左手の指先を右手の指先で掴むように組み合わせます。
この手の形を胸の前で組んだまま、左手と右手を離さずに、深く呼吸をしながら引っ張り合うのがガネーシャ・ムドラーです。
このムドラーを通じて、実際に両手を引っ張り合い、軽い負荷をかけることで、胸、肩、腕にかけての筋肉が強化されると伝えられます。
また、深い呼吸が伴うことで、心臓に守ろうとする力を生み出し、その働きを強化するとも伝えられてきました。
何よりも、このムドラーの実践においては、自らが生み出す負荷を経験することになります。
ムドラーという、意識に強く働きかける動きを形成する中でその負荷と向き合う時、最大の障壁は、時に自分自身によって生み出されるということに気づくことができるといわれます。
日々においては、沸き起こる疑念や不安が、自分自身の進む道を大きく阻んでいることがあります。
外側ではなく、内側に生じるこの障壁に気づくことが、問題を取り除くために何よりも重要となることが少なくありません。
このムドラーを通じて強化される心や心臓は、「心の座」ともいわれるアナーハタ・チャクラがある場所です。
愛情や感情が満ちるこの場所が強化される時、自信や勇気が高まると伝えられてきました。
このムドラーを通じて呼び覚まされるガネーシャ神の力は、自信や勇気という、障壁を乗り越える強さとなって現れるに違いありません。
(文章:ひるま)
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