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マントラ

ビージャ・アクシャラ その3

前回は、スワミ・シヴァナンダの著書から、ビージャ・マントラの意味を抜粋いたしましたが、この説明の中には、それぞれのビージャ・マントラの最後に唱えられる「ム」の説明がないことに気がついた方もいらっしゃると思われます。
この「ム」の意味は、「オーム」の解説に記載されている“「ム」はイーシュワラとプラジュナの睡眠の状態です”の説明が当てはまるでしょう。睡眠の状態というと、われわれにとってはマイナスのイメージがあるかもしれませんが、ここでいう睡眠とは、われわれが眠くなるときにとる睡眠とは意味が異なります。サンスクリット語のことわざに、「聖者は、人々が目覚めているときに眠り、人々が眠りに就くときに目覚める」というものがあります。これは、一般に、人々は五大欲望に代表されるさまざまな欲望にとらわれ、その欲望を満たすために“目覚め”ます。しかし、聖者はそのような欲望には関心がないため、人々が目覚めているときには“眠る”のです。また、人々が関心の薄い解脱への道、神への欲求は、聖者の第一の関心事であり、そのために人々が“眠る”ときに聖者は“目覚める”のです。
「オーム」のマントラに代表されるように、はじめは世俗的な意義を示す語(「オ」)からはじまり、最後に神への道へと至る(「ム」)のように段階を踏む形式、つまり表層意識から深層意識へとつながる意味をもつマントラはしばしばみうけられます。他の代表的なマントラとしては、ガーヤトリー・マントラもそのような構造になっています。
そのようなことから、他のビージャ・マントラにある結びの語「ム」も、「オーム」に示されているものと同義語で、悟りへの道、終結をあらわす意味をもつと理解してよいでしょう。
ビージャ・アクシャラについては、今回スワミ・シヴァナンダの解釈を参照いたしましたが、同一の神でもさまざまに異なる呼び名があるように、その意味もじつは一義的なものにとどまりません。たとえば、「フリーム」は、マハーマーヤーのビージャであるとのことでしたが、ほかにも「フリダヤ」(ハート)へと通じるマントラであるとか、「サラスワティー」を示すマントラであるとの解釈もあります。また、「クリーム(KLEEM)」はカーマのビージャであるとのことでしたが、「クリーム(KREEM)」と同様、カーリー(あるいはドゥルガー)を示すマントラであるともいわれております。
マントラの一節で、「オーム・フリーム・シュリーム・クリーム…」というビージャをつなげたものがしばしば出てきますが、この一節は、その解釈にしたがうと「フリーム」がサラスワティー、「シュリーム」がマハーラクシュミー、「クリーム」がカーリー(ドゥルガー)という三位一体を示していることになります。精神的な側面に関する活動はサラスワティーが、物質的な側面に関する活動はマハーラクシュミーが、そして肉体的な側面に関する活動はカーリー(ドゥルガー)がつかさどります。この三位一体の女神の恩寵により、あらゆる面での幸福と繁栄があたえられます。
ところで、ガーヤトリー女神は、あるときはサラスワティーの姿を、あるときはマハーラクシュミーの姿を、そしてまたあるときはカーリー(ドゥルガー)の姿をとる三位一体の化身とされています。そのため、ガーヤトリー女神の恩寵を得ることで、神への解脱と至る叡智、またそのために必要な衣食住、身体的な強靱さのすべてがあたえられます。これが、ガーヤトリー・マントラが万能かつ最高位のマントラであるといわれるゆえんでもあります。
ビージャ・アクシャラは、すべてのマントラの基礎となると同時に、それ自身が強力なマントラともなっています。「すべての道はローマに通ず」ではありませんが、すべてのマントラはただひとつの至高神に通ずるということは真理です。それぞれ表現は異なるかもしれませんが、すべてのマントラは、ただひとつの至高神をあらわしており、どのようなマントラ(道)を選んでも、それを継続的に臆念し続けることにより、やがてはひとつの真理に到達することができます。

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