今、世界はウイルスという見えない脅威に慄いています。
この春の美しい気候の中で、9年前には未曾有の大震災に平静を失い、深い祈りを捧げた続けことを思い出します。
インドでは、カラフルな色に染まるホーリーを迎えようとしていた時のことでした。
今年も同じように、その祝祭を迎えようとしています。
さまざまな神格への祈りが捧げられるホーリーでは、人々を真の喜びへと導くクリシュナ神の存在が欠かせません。
そんなクリシュナ神には、大蛇であるカーリヤとの戦いにまつわる神話が伝わります。
ナーガ族の王であったカーリヤは、多数の頭とともに猛毒を持つことで恐れられていました。
神鳥ガルダに捧げられた供物を密かに食べていたカーリヤは、怒ったガルダに打ち負かされ、クリシュナ神の聖地に近いヤムナー川に逃げ込みます。
カーリヤが住みついたヤムナー川は猛毒に冒され、植物は枯れ、動物は死に、牛飼いたちは倒れました。
見かねたクリシュナ神がカーリヤの頭上に飛び上がると、多数の頭を踏みつけるように踊り始めます。
カーリヤは耐えられず、再び打ち負かされるも、カーリヤの妻が命乞いをすると、かつて住んでいた島に帰ることを許されました。
そして、カーリヤが去ったヤムナー川の水は清浄になったと伝えられます。
多数の頭を持つカーリヤは、私たちの飽くなき欲望に例えられることがあります。
その頭は、ある欲望が満たされると、次々に生まれる私たちの欲望のようです。
クリシュナ神は、そんなカーリヤを退治するも、命を奪うことはなく、元の場所に行くように促しました。
この神話を通じては、欲望を排除するのではなく、その進路を変えることが重要であると教えられたように思います。
何かを手に入れたいという欲望が、自己の至福、内なる平和、究極の悟りといった方向に向きを変えると、私たちは徐々に神性に導かれていきます。
一人ひとりがそうして欲望の向きを変える時、世界には何よりも確かな平和が広がるに違いありません。
毒されたヤムナー川も、クリシュナ神の導きによって、清浄を取り戻しました。
9年前も世界の平和を心から願ったように、私たちもこうした危機に学ぶことができるはずです。
クリシュナ神という存在に心を定め、より良い方向へ導かれることを願いながら、世界の平和を祈りたいと感じます。
皆様にも、ホーリーの大きな恩寵がありますように心よりお祈り申し上げます。
(文章:ひるま)
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