太陽の光が溢れ、インドの各地でいよいよ長く暑い夏が始まるチャイトラ月(3月から4月)の満月は、主に北インドにおいて、ハヌマーン・ジャヤンティー(降誕祭)が祝福される時です。
2023年は4月6日です。
猿の姿で崇められるハヌマーン神は、ヒンドゥー教でもっとも力強い神格の1柱であり、ハヌマーン神の礼拝が行われるところには、否定的なエネルギーは近寄ることができないと言われます。
ハヌマーン神が猿の姿を持つのは、ヴァーナラという猿の一族である父ケーシャリと母アンジャナーのもとに生まれたことに理由があります。
ハヌマーン神の母であるアンジャナーは、もともと雲や水の中で生きる精、アプサラーでしたが、ある呪いのために、ヴァーナラとして生きていました。
呪いを解くために息子をもうけなければならなかったケーシャリとアンジャナーは、シヴァ神への苦行を行います。
喜んだシヴァ神は、風神ヴァーユに生命を運ばせ、アンジャナーは息子であるハヌマーン神をもうけました。
それ故、ハヌマーン神はシヴァ神の化身としても崇められています。
精でありながら、呪いのためにヴァーナラという一族にされてしまったアンジャナー。
ヴァーナラは、叙事詩ラーマーヤナにおいて非常に勇敢な姿で描かれ、「森に住む者」という意味を持ちますが、それは本能的に生きる野性の質を示していると例えられることがあります。
そしてその性質は、私たちの誰もが持つものです。
アンジャナーはヴァーナラとして生きながらも、精として美しく苦行を務め上げ、ハヌマーン神を生み、呪いを解きました。
一方で私たちは、自分自身の本質を見失うことなく、理性をもとに行為を務め上げなければなりません。
そうして生まれる行為は、私たちを解放していきます。
ハヌマーン神は、シヴァ神の生命を運んだ風神ヴァーユの子と伝えられることもあります。
猿として、風として、あちこちを飛び回り決して落ち着くことがないハヌマーン神の姿は、揺れ動く私たちの心の象徴でもあります。
しかし、ハヌマーン神の心は固くラーマ神に定まり、その働きは常に正しいものでした。
私たちも自身の内にアンジャナーを据え、ハヌマーン神を生みださなければなりません。
私たちの野性の質も、神々に固く定まることで、どんな悪をも寄せ付けない強さと正しさに生まれ変わります。
時に多くの苦難をもたらし、厳格な師として畏怖される土星のシャニ神も、ハヌマーン神の帰依者だけには、決して悪影響をもたらさないと伝えられます。
皆様に、ハヌマーン神の大きな恩寵がございますよう、心よりお祈り申し上げます。
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