不吉な出来事をすべて破壊し、究極の解脱をもたらすガネーシャ神は、障害除去の神として崇められます。
そんなガネーシャ神には、「障害の支配者」という意味がある、ヴィグネーシュヴァラという別名があります。
ガネーシャ神はヴィグネーシュヴァラとして、障害を取り除く者であると同時に、障害を作り出す者でもあります。
この背景には、ある神話が伝わります。
かつて、ヘーマヴァティー王国を統治するアビナンダナという名前の王がいました。
信心深いアビナンダナ王は、ある時、神々を讃える盛大な供犠を行います。
これを見たインドラ神は、その供犠の凄まじさに、自らの地位が脅かされるのではないかと不安を抱きます。
インドラ神は、時を操る悪魔のカーラにこの供犠を妨害するように命じます。
カーラはヴィグナースラ(障害の悪魔)となって、アビナンダナ王の供犠を妨害し、そして破壊しました。
しかし、ヴィグナースラはとどまることを知らず、他の供犠をも妨害し始めます。
供犠を失った世界は混乱に陥り、ダルマ(正義)が消え、アダルマ(不正)が蔓延するようになりました。
危機感を抱いた神々は、シヴァ神と妃のパールヴァティー女神に祈りを捧げます。
すると、障害の支配者であるヴィグネーシュヴァラとしてのガネーシャ神が誕生します。
ヴィグネーシュヴァラとしてのガネーシャ神は、さまざまな障害を作り出すことによって、ヴィグナースラを打ち倒します。
この神話に見られるように、ガネーシャ神はアダルマを行う者の道に障害を生み出します。
そして、ダルマに従う者の道からは障害を取り除きます。
こうしてガネーシャ神は障害の支配者になったと伝えられます。
私たちは、人生の歩みを進める中で障害にぶつかる時、自らがアダルマを為していないか、その歩みを問う必要があります。
虚偽、幻想、貪欲、悪意、憤怒、暴力、暴言、恐怖、これらはすべてアダルマにあたるものです。
ガネーシャ神が障害を作り出すのは、こうした過ちを私たちに気づかせ、正しい道を歩むことができるように導く目的があります。
ガネーシャ神の恩寵によって、すべては来たる最善のために起きていることを、私たちは理解しなくてはなりません。
そうして日々のひとつひとつの事象に学び、歩みを進める必要があります。
その道からは、すべての不吉な出来事が取り除かれ、やがて究極の目的にたどり着くことができるはずです。
(文章:ひるま)
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