冬が終わり、少しずつ日脚が伸び始める時、インドでは春の到来を祝うヴァサンタ・パンチャミーが祝福されます。光が満ちていくこの時は、サラスワティー女神の降誕を祝福する時でもあります。
うららかな春の到来は、「春眠暁を覚えず」という言葉も伝わるほど、心地が良いものです。一方で、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダでは、冬の間に溜め込んだ不純物が排出されるため、春は身体が重く感じられると伝えられます。それでも、だんだんと明るくなる春の季節には、大きな幸せが目覚めるような感覚を覚えることがあります。
まばゆい光を感じるそんな春の到来は、知識や学問の神として崇められる、サラスワティー女神の降誕が祝福されてきました。霊的な世界において、暗闇とは無知の象徴として捉えられます。そこにあらわれる光は、知識として崇められてきました。春の到来にその降誕が祝福されるサラスワティー女神は、私たちの無知という暗闇に、光という知識が生まれる象徴でもあります。
サラスワティー女神は、罪や穢れを祓い、あらゆるものを清めると捉えられてきた聖なる川の神格として崇められてきました。純白のサリーをまとい、サットヴァ・グナ(清浄と識別の要素)を象徴する白鳥と共に描かれる姿には、美しく清らかなエネルギーが溢れています。そんなサラスワティー女神を礼拝する時、内なる世界は清められ、識別力が高まり、真実を見抜く力が育まれると信じられます。
知識や知性がない限り、私たちは常に混乱し、迷いや疑いに苛まれ、真っ暗な世界で苦悩しなければなりません。そうした無知から生じる罪や穢れは、サラスワティー女神を礼拝することによって祓われ、内なる世界は清らかな喜びに満ちていきます。
日が長くなり、光が満ち始めるこの時。サラスワティー女神への礼拝は、私たちに新たな知識という光を授けてくれることと思います。そして生まれる清らかさは、何よりもの幸せを気づかせてくれるに違いありません。皆様の日々にも、女神の恩寵がありますように、心よりお祈り申し上げます。
(文章:ひるま)
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