美しく鳴り響く鐘の音に耳を澄ませる時、揺れ動く心が静まるように感じることがあります。
そうして生まれる聖域の中では、一瞬であっても、苦悩が消え、自分自身の本質に気づく機会を与えられるようでした。
そんな響きを象徴する、チャンドラガンターという女神がいます。
ドゥルガー女神の9つの化身である、ナヴァドゥルガーの3番目に崇められる女神です。
チャンドラは月、ガンターは鐘を意味します。
半月を身にまとうチャンドラガンター女神は、常に悪と戦う姿勢にあります。
月の鐘を意味する彼女の叫びは、悪を震え上がらせ、月夜の冷たい風のように、平和を生み出すと信じられてきました。
鐘を鳴らすことは、インドの日常において欠かすことのできない行いです。
朝夕の祈りの時間には、あちこちに美しい鐘の音が響き渡ります。
その音から生み出される波動は、あらゆる悪影響を打ち消すと伝えられてきました。
なぜ鐘の音が悪影響を打ち消すのか、チャンドラガンター女神の存在を通じ、教えられたことがあります。
ひとつの鐘は、ひとつの音を生み出します。
同じように、私たちの心がひとつのものに定まる時、そこからは清らかなエネルギーが生まれていきます。
しかし、揺れ動く心は、不安や恐怖、迷いや疑いといった苦悩を次々に生み出し、自らを悪に導いてしまうことも少なくありません。
変化に富む月は、私たちの揺れ動く心の象徴でもあります。
そんな月を身にまとうチャンドラガンター女神は、変化を超越した存在であることを象徴しているかのようです。
そんな女神が響かせる鐘の音は、あらゆる悪を払拭すると信じられてきました。
チャンドラガンター女神は、揺れ動く心を絶対の存在に定めることを、その姿を通じて私たちに伝えています。
その心から、苦悩が生まれることはないはずです。
そうして生まれる清らかなエネルギーは、あらゆる悪を払拭していくに違いありません。
アーシャーダ月(6月~7月)の新月を過ぎると、主にシャクティ派の人々によって祝福される、アーシャーダ・グプタ・ナヴァラートリ(女神を讃える9日間の夜)が始まります。
2019年は、7月3日から13日です。
女神たちを讃える神聖な時、美しいエネルギーを生み出すことができるように、自分自身の心を定める行いを努めたいと感じます。
(文章:ひるま)
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