ヴィシュヌ神の10の化身

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正義が失われ悪がはびこる時、神々は特別な化身となって姿をあらわすと、インドでは信じられることがあります。そんな化身の中で、維持と保護を司るヴィシュヌ神の10の化身「ダシャーヴァターラ」は、とりわけ重要視される存在です。この世界に危機が生じた時、世界を守るために特別な姿となってあらわれると信じれるこのダシャーヴァターラの象徴的な意味について、見つめ直したいと思います。

1.マツシャ(魚)
2.クールマ(亀)
3.ヴァラーハ(猪)
4.ナラシンハ(人獅子)
5.ヴァーマナ(矮人)
6.パラシュラーマ(賢者)
7.ラーマ(王子)
8.クリシュナ
9.ブッダ(覚者)
10.カルキ(カリ・ユガの最後に出現するとされる)
※9番目の化身はバララーマとされることもあります。

マツシャ(魚):起ころうとしていた大洪水から世界を救ったと伝えられます。魚が流れに反しながらも源流に向かって泳げるのは、流れに身を任せる術を知っているからであり、私たちが常に神々に身を任せながら、その源へ向かって歩み続けることを象徴しているともいわれます。

クールマ(亀):乳海撹拌においてアムリタ(不死の甘露)の産出を助けたと伝えられます。亀が自分の意志で手足や頭を甲羅の中に引き込み自らを守るように、私たちが5つの感覚を自身の内に収め、永遠の至福を見つけることを象徴しているともいわれます。

ヴァラーハ(猪):悪魔によって沈められた大地を救うために、猪となって大地を持ちあげたと伝えられます。真理を追究する者は、凄まじい勢いで真っ直ぐに突き進む猪のように、あらゆる犠牲を恐れることなく進むべきであることを象徴しているといわれます。

ナラシンハ(人獅子):神、魔神、人間、動物には殺されることのない魔王を倒すため、神、魔神、人間、動物ではない人獅子となって魔王を倒したと伝えられます。その姿は、この世界に不可能なことはないということ、また、形ではない神の遍在性を象徴しているといわれます。

ヴァーマナ(矮人):神々を恐怖に陥れたバリ王のエゴを破壊し、世界を救ったと伝えられます。矮人でありながら巨大化し、三歩で三界を制してバリ王から世界を奪い返したヴァーマナは、私たちのエゴを取り除き救済する姿を象徴しているといわれます。

パラシュラーマ(賢者):奢り高ぶった数多くのクシャトリヤを滅し、世の中に平和をもたらしたと伝えられます。パラシュラーマはサットヴァ(純質)であり、ラジャス(激質)やタマス(惰質)によって生じた混乱を滅することを象徴しているといわれます。

ラーマ(王子):この地にはびこる邪悪な力を破壊するためにあらわれたと伝えられます。私たちが見失いがちな規律、模範的・道徳的行為、正義、叡智を示すための理想を、ラーマの姿において体現しているといわれます。

クリシュナ:人々へ喜びを広めるためにこの地にあらわれたと伝えられます。多くのリーラー(神の遊戯)を行い、人々を魅了し続けるクリシュナは、私たちを永遠の喜びに導く象徴的な存在でもあります。

ブッダ(覚者):欲望が生み出す苦難を乗り越え、深い瞑想によって悟りを得たブッダは、心の平安のための根本原理を説き、人々に光を与えました。同じように苦難の中を生きる私たちに、その姿が生きる指針を伝えています。

魚に始まり覚者となるまで、現代ではダシャーヴァターラが生命と人間の進化の象徴であると伝える説もあるほど、それぞれの化身を通じては深い意味が伝えられています。自分自身の豊かな成長のためにも、常にこうした存在を中心に、日々を過ごすことを努めたいと感じています。

(文章:ひるま)

参照:http://www.speakingtree.in/allslides/dashavatar-the-ten-incarnations-of-vishnu
https://www.hindujagruti.org/hinduism/knowledge/article/what-are-the-implied-meanings-of-the-ten-incarnations-of-lord-vishnu.html