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雑記帳

10年目の春

褪せた自然が色を帯びていく美しい春の季節。
インドの地で、そんな喜ばしい自然の移り変わりを、繭の中にいるような心地で享受していた時のことでした。
破壊神として世界を新たな秩序へ導くシヴァ神に、ただ祈りを捧げ続けた東日本大震災が起きたことを思い起こします。

生き生きと芽吹く草木から溢れる光を感じていたその春は、一転して、憂悶と暗く心の休まらない時となりました。
誰もが直面した深い悲しみの中で、世界をひとつに繋ぐかのように広がるお互いを思い合う気持ちが、何よりもの救いであったことが忘れられません。
あれから10年の節目となる今年の3月11日は、シヴァ神を讃えるマハーシヴァラートリに重なります。

シヴァ神は、妃であるカーリー女神の足下に横たわって描かれることがあります。
悪を倒したカーリー女神が勝利に酔い、大地が粉々に砕けるほどの踊りを始めた時のことでした。
世界が破壊されないように、シヴァ神は身を投げ出してカーリー女神の下敷きなります。
夫であるシヴァ神を踏んだことで我に返ったカーリー女神は、踊りを止め、世界には平和が戻りました。

私たちは、人生という舞台において、目の前で起こる出来事の数々に踊らされ続けています。
時に荒れ狂うその舞台では、破壊を経験することも少なくありません。
未曽有の大震災を通じては、誰しもの心が、喪失や悲嘆、苦悩や絶望など、何らかの破壊を経験したしたことと思います。

しかし、その心が得た気づきは、世界をひとつに繋ぐ祈りを生み出しました。
あたかも、破壊の中で我に返ったカーリー女神が、その踊りを止め、世界に平和が広がっていく過程を見ているかのようでした。
形を失う中で、真実を得ていく美しさを、休まらない心のどこかで感じていたことを思い出します。

破壊される世界を守るために、身を投げ出した慈悲深いシヴァ神は、私たちの意識です。
人生に踊らされ、破壊を伴う多くの苦難に直面する私たちは、常にそんなシヴァ神に気づいている必要があります。
その気づきは、私たちを本質に結びつけ、そこにある真の至福へと導いてくれるはずです。

再びこの季節を迎える今、あの時の思いを胸に刻み、気づきを持ってこの瞬間を生きることを努めたいと感じます。
それが、今を生きる私たちにできる唯一のことであり、そこから生まれる新たな世界には、真の平和が広がるに違いありません。
皆さまにとって、この春が穏やかでありますように、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)

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