財宝の神として崇められるクベーラ神がその地位を得たのは、一年の大吉日といわれるアクシャヤ・トリティーヤーであったと伝えられます。
クベーラ神は、鬼神であるヤクシャの主とされ、魔王のラーヴァナとは異母兄弟にあたります。
そんなクベーラ神が財宝の神として崇められるようになったのは、シヴァ神への苦行を熱心に行ったからでした。
クベーラ神は、かつて南のランカー島を支配していたことがあります。
しかし、ラーヴァナと対立した際にランカー島を奪われると、世界を放浪し始め、シヴァ神が住まう北のカイラーサ山に辿り着きました。
そこでシヴァ神への苦行を熱心に行うと、シヴァ神は喜び、財宝の神としての地位と、シヴァ神自身が住まう北の方角を守る重要な役割を与えたといわれます。
北の方角を守る役割を担うクベーラ神は、10の方角を守るダシャ・ディクパーラの1柱に数えられます。
インドでは、北向きに開く金庫を置いておくと、クベーラ神が富をいっぱいに満たしてくれるといわれることがあります。
そして、より多くの富が流入するように、住居の北側には広い空間を設け、流れを遮る物は置かないようにすることもあります。
鬼神であるヤクシャは、もともとは自然に住まう神霊とされ、特に水に関連すると伝えられてきました。
古代より、水のあったところには繁栄がありました。
肥沃な大地をもたらす水辺では文明が栄えただけでなく、心身の穢れを清める聖地として、精神的にも人々の拠り所となる場所になりました。
そして、クベーラ神が守る北の方角は、水の要素を持つ方角です。
また、磁場の関係から、北極がある北の方角からは豊かな流れが入るとも伝えられてきました。
ヴァーストゥにおいては、豊かな富が流入するように、北の方角に循環する水の流れを生み出すことが重要視されます。
例えば、北の方角に噴水を設けたり、水槽を置いたりして、清らかで豊かな流れを生み出すことが勧められます。
日々を豊かに過ごすには、何よりもこうして自然の恵みを敬う姿勢が欠かせません。
私たちを育むその偉大な力との調和なしに、真に豊かな日々を送ることはできないはずです。
クベーラ神は、シヴァ神への礼拝によって、財宝の神としての地位を獲得しました。
私たちも、自然への敬意を通じてクベーラ神を礼拝することで、クベーラ神は豊かな富を授けてくれるに違いありません。
(文章:ひるま)
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