世界を維持し保護するヴィシュヌ神は、正義の化身としてラーマ神の姿をとり、この地に現れたと伝えられます。
そんなラーマ神は、魔王のラーヴァナを倒すべく、凶悪な力と激しい戦いを繰り広げました。
ラーヴァナを倒すラーマ神の歩みが綴られたラーマーヤナは、現代においても広く人々に愛される聖典です。
そこには、私たちが困難を乗り越え、正しく生きるための教えが随所に溢れています。
そのラーマーヤナにおいて、ラーマ神の妃であるシーター女神が魔王のラーヴァナに誘拐されると、物語は凶悪な力との戦いに突入します。
シーター女神を救い出すために、ラーマ神は海を越え、ラーヴァナが支配するランカー島に渡る必要がありました。
そこで活躍したのが、ハヌマーン神に率いられた勇敢で強い力を持つ猿軍でした。
猿軍は、次から次へと大きな石や岩を海に投げ入れ、インドとランカー島を結ぶ橋を築きます。
ラーマ神はその橋を通じてランカー島に渡ると、ラーヴァナを倒し、シーター女神を救い出したと伝えられます。
この橋は、猿軍だけの力で築かれたものではありませんでした。
そこには、1匹の小さなリスがいました。
ラーマ神を慕うリスは、その小さな体で一生懸命に小石を運び、海に投げ入れます。
それを見た猿軍は、小石で橋を築くことはできないと、リスをからかいました。
しかし、もっとも重要なものは正義に捧げられた心であると、ラーマ神は猿軍に教えを説きます。
事実、リスが運んだ小石は、大きな石や岩の隙間を埋め、強固な橋を築くものになりました。
この大きな世界を生きる中では、時に、自分自身の存在は取るに足らないものだと感じることがあります。
しかし、このリスの姿が伝えるように、私たち一人ひとりは、万物が暮らす世界に平和を築く強い力を持っています。
かつて、未曾有の大震災を経験した私たちの心は、世界をひとつに繋ぐ祈りを生み出しました。
困難を経た心から生まれた気づきは、世界に大きな変化をもたらすものになったはずです。
今、私たちが正義に心を捧げ、自分自身の務めを全うする時、それは世界に平和を生み出す何よりも強固な力となるに違いありません。
ラーマ神を思いながら、自分自身にできることを精一杯取り組み、この世界の平和を願いたいと感じます。
(文章:ひるま)
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