さまざまな宗教が入り混じり、それぞれの伝統に合わせてお祝い事が欠かせないインドでは、クリスマスもまた祝福を忘れてはならない大切な一日の一つです。大都市では、年を追うごとにその盛大さも大きくなるばかりと伝えられています。
ヒンドゥー教徒が大多数を占めるインドの中で、クリスチャンの占める割合は約2.3%(外務省HPより)ほどですが、12億人を超える人口の中においてその規模は決して少なくはありません。聖トーマスが寄港したと言われる南インドのケララ州などは特にクリスチャンの人口が多く、ポルトガルの植民地であったゴアなど、街でも美しい教会をよく目にします。
クリスマスが近づくと、大都市ではまず美しい装飾がなされ、きらびやかに彩られた街の中でクリスマスマーケットが始まります。ディワリというインドの三大祭りである「光の祭典」には敵いませんが、お祭り好きなインドの人々の心がそのまま表されるかのように、このクリスマスから新年にかけてまた賑やかなひと時を迎えます。
どんなお祝い事の時でも、神様からの贈り物であるミルクを使ったとても甘いお菓子を捧げるのが恒例のインドでは、このクリスマスの日に限って、特別なケーキが振舞われたりもします。夜には教会へ出かけ、クリスマスキャロルを歌い、インドらしい楽しく賑やかな楽器部隊に囲まれて盛大な祝福を捧げ、家族が集まってひと時を過ごします。
変わらないクリスマスのようであっても、家庭から聞こえてくる讃歌がどことなくマントラのように聞こえてしまうのはインドの人々とその土地柄のせいかもしれません。しかし、神を想い祈る言葉の持つ美しさは、どんなものにも代えられない澄んだ響きを心の奥深くまで伝えてくれるものであり、あの清らかな思いの中にやはり引き込まれていくようでした。
北インドはクリスマスを迎えるころからぐっと寒さが厳しくなります。世界中から人々が集まる大きなアシュラムでは、クリスマスの催し物が行われ、人種や宗教を越え人々が一体となった温かさを体と心で感じたのも、そんな寒い夜のことでした。
世俗化し、商業主義に進んでしまう事実があるにせよ、対立が止まない宗教という垣根を越え、私たちが一体となれるその瞬間があることを大切にしたいと、今ここにいて感じます。この生活に見せられる、一つ一つの存在を自分の中の大切なもののよう抱くその穏やかな優しさが、この世界を包み込むことを、聖なる夜が近づく今、心から願ってやみません。
(文章:ひるま)
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