インドでは1月15日に太陽が山羊座に入り、マカラ・サンクラーンティが祝福されます。
これより太陽は北方への回帰をはじめ、少しずつ日脚が伸びるとともに、明るい光が満ちていきます。
マカラ・サンクラーンティを過ぎると神々の昼が始まるといわれることから、この時は霊的にも重要視されてきました。
このマカラ・サンクラーンティにおいて、南インドのケーララ州ではアイヤッパ神の聖地を歩むサバリマラ巡礼がピークを迎えます。
アイヤッパ神は、凶悪な悪魔を倒すためにヴィシュヌ神とシヴァ神から生まれたと信じられる神格です。
禁欲を貫くことで有名なアイヤッパ神を崇めるサバリマラ巡礼は、およそ41日間にわたり、とりわけ厳しい戒行を努めることで知られています。
この巡礼において、巡礼者はイルムディーと呼ばれる袋を頭の上にのせて聖地を巡ります。
イルムディーはふたつの部分からなり、ひとつには巡礼に必要となる個人の所有物が、もうひとつにはギーを満たしたココナッツをはじめとする供物が含まれます。
このギーを満たしたココナッツにはある象徴があります。
ココナッツは「神の果実」を意味する「シュリーファラ」とも呼ばれ、インドの各地で神聖視される果物のひとつです。
ココナッツには3つの凹みのようなものがあり、それは真実を見る第3の目の象徴とされることもあります。
このココナッツを空にした後、ギーを満たします。
ギーは、不純物が取り除かれたもっとも純粋なオイルといわれます。
ギーを用いて灯される炎はサットヴァなエネルギーを放出することから、神々を礼拝する儀式においても重要視されてきました。
ここでは象徴的に、ココナッツが身体をあらわし、満たされたギーが個の魂をあらわすとされます。
そして、厳しい巡礼を終え寺院に辿り着くと、巡礼者はアイヤッパ神にギーを注ぎ、ココナッツはホーマ(護摩)に捧げられ燃やされます。
それは、個の魂が肉体から解放され、神と一体になることを象徴するとされます。
巡礼において、ひとつの袋に包まれた個人の所有物を使い果たすことは、蓄積されたカルマの浄化を意味するとされてきました。
神との一体を頭に掲げ歩むこの巡礼を通じ、そうして深く浄化された心身は、真実とひとつになることが可能になります。
アイヤッパ神は、禁欲を努めながら険しい道を歩む者の心身を浄化し、真実に至る道程を伝えています。
インドには、こうした霊性を高める多くの機会が溢れています。
そんなインドの文化に学びながら、自分自身の内に聖地を見出し、与えられた日々を一歩一歩、真実に向けて大切に歩んでいきたいと感じます。
(文章:ひるま)
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