スピリチュアルインド雑貨SitaRama

雑記帳

アナスーヤーの心

インドの神話には、天上の女神たちを悩ませるほどに謙虚で忠実な女性であったアナスーヤーにまつわる神話が伝わります。
アナスーヤーは、万物の創造神であるプラジャーパティの娘であり、聖者アトリの妻でありました。

アナスーヤーの名前には、「嫉妬のない」「悪意のない」といった意味があります。
実に、アトリの妻として描かれるアナスーヤーの姿には、その名前が示すように美しく慎み深い描写が多くあります。
そのひとつに、シヴァ・プラーナに見られる神話があります。

かつて、チトラクータ山に位置するカーマダ森林が深刻な干ばつに見舞われたことがありました。
水は枯渇し、緑は失われ、その土地はひどく荒れ果てていました。
アトリは妻であるアナスーヤーを伴い、そこで厳しい苦行を行います。
誰もがその土地を去るも、二人は留まり続けました。

アナスーヤーはシヴァ神に祈りながら、苦行に没頭するアトリへの奉仕を懸命に努めます。
その無私の精神に感銘を受けたのは、シヴァ神とその髪に住むガンガー女神(ガンジス川)でした。

時が経ち、苦行から目覚めたアトリは水を欲するも、そこには1滴の水もありません。
アナスーヤーは水を手に入れようと乾いた森に入ります。
そこへガンガー女神が現れると、アナスーヤーの奉仕に感銘を受けたことを伝え、水をもたらします。

アナスーヤーはその水をアトリに捧げました。
アトリは水のあまりの神聖さに驚き、どうやってこの水を手に入れたのかアナスーヤーに尋ねます。
しかし、自分がガンガー女神の水をこの地にもたらしたと事実を述べれば、それは高慢な行為になると、アナスーヤーは答えに悩みます。
そこで、アナスーヤーはシヴァ神の恩寵とアトリの苦行によってガンガー女神が現れたことを伝えます。

そんな二人の姿を見て、ガンガー女神は真実をアトリに告げました。
そして、ガンガー女神は二人の思いに答え、その地に留り、豊かな水として流れ続けるようになります。
やがて、人々が戻り、祭祀を行い、雲が生まれ、雨が降り、食物がたわわに実ると、世界は至福に包まれたと伝えられます。

私たちはこのアナスーヤーの姿に、生きる上での謙虚さを学ぶことができます。
日々において経験する成功は、私たちに自信や勇気を与えてくれるものです。
しかし、それが行き過ぎると心は高慢になり、利己的な思考に染まれば、私たちは祈ることも忘れていきます。
そうして生まれる行為こそ、この世界に深刻な危機をもたらすものです。

アナスーヤーの姿は、与えられた日々に感謝をし、謙虚に生きることこそが、この世界を救う何よりもの力になることを伝えています。
真に豊かな日々を生きるためにも、常にこのアナスーヤーの姿を心に留めながら、毎日を感謝とともに過ごしたいと感じます。

(文章:ひるま)

参照:The Shiva Purana, Chapter 3 - The penance of Anasūyā and Atri

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


RANKING

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

CATEGORY

RECOMMEND

RELATED

PAGE TOP