破壊神としてのシヴァ神には、ナタラージャと呼ばれる舞踏王の姿があります。
無知を象徴する悪魔の上で行われるナタラージャの舞いは、無知を破壊する至福の踊りであり、シヴァ神の慈悲深い恩寵を象徴しているとされます。
そして、シヴァ神がこの踊りを舞ったのは、マハーシヴァラートリの日であったと伝えられます。
シヴァ神の舞踏は、プラバーマンダラと呼ばれる燃え盛る火の輪の中で絶え間なく続きます。
この火の輪は、創造、維持、破壊という、宇宙の循環を象徴するものと伝えられてきました。
火は、神聖なエネルギーであると同時に、一切を焼き尽くす浄化の力を象徴するものです。
途切れのない輪で示される火は、破壊が単なる終わりではなく、新たな創造への道を開く必要な過程の一部であることを伝えています。
未曾有の災害に見舞われた東日本大震災は、マハーシヴァラートリを迎えた時期に重なりました。
毎年、このマハーシヴァラートリを迎える度に、破壊神としてのシヴァ神に心からの祈りを捧げたことを思い起こします。
その祈りは、破壊を受け入れ、新たな創造につながる一歩を踏み出す強い力を与えてくれるものでした。
世界の秩序の中で破壊と創造が不可欠であることを示す火の円は、宇宙の完全性を象徴するものでもあります。
それは、私たちに移り変わる物質世界の儚さを理解させてくれるものであり、変わらない真実に目を向けるよう促すものでもあります。
私たちは、シヴァ神によって導かれるこの宇宙の神聖なリズムの中で命を繋いでいます。
震災を通じて刻まれた破壊の記憶の中で、マハーシヴァラートリはシヴァ神のその偉大な力を際立たせます。
その力が示す恩寵を繰り返し感じることは、美しい時の巡りの中で受け取る無上の贈り物に他ありません。
シヴァ神の恩寵とともに歩みを進め、私たちが変わらない真実に気づきながら日々を生きることができれば、そこには常に至福があるはずです。
あの震災を得て与えられた気づきを胸に、今を生きる使命として、新たに生まれる世界に光を灯し続けたいと感じます。
（文章：ひるま）
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