正義の象徴としてインド全土で広く崇められるラーマの側には、献身的に仕える猿神ハヌマーンの姿が常にあります。主に北インドでは、4月11日の満月に、このハヌマーンの降誕祭が祝福されます。
いかなる悪をも寄せ付けない、ヒンドゥー教の神格の中でとりわけ強い力を持つハヌマーンは、ガダーと呼ばれる大きな棍棒を手にしています。ハヌマーンのエネルギーの象徴として崇められるガダーは、他の神格も手にして描かれることが多くあり、霊性を育む深い意味が秘められています。
ガダーは、勇気、活力、そして太陽のような輝きの象徴でもあります。大自然の巡る均衡の中で、地球が太陽の周りを回りながらそのエネルギーを私たちに授けるように、ガダーを用いる時、そこから生じるエネルギーは私たちの心身に大きな意味を与えます。
重心が片端に寄るガダーを適切に操るには、体力だけでなく、統制された強い精神力から生まれる安定が必要です。統制すべきものとは、変化に富む心、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つの知覚器官、そして、発声・操作・移動・生殖・排泄の5つの行為器官といわれます。時に悪を生み出すこれらを統制することができた時、私たちは初めて、悪のない真の平安を生み出すことが可能となります。
ハヌマーンは、もっとも大きなガダーを操ることができる唯一の存在であると伝えられます。それは、ハヌマーンの心がラーマという正義に強く定まり、その感覚や行為が統制されているからに他ありません。事実、ハヌマーンはラーマの妃であるシーター女神を悪の手から救い出し、王国に平安をもたらしました。
ガダーは、議会や大学などでも秩序を守る権威の象徴として飾られることがあります。人間の心の葛藤が描かれているともいわれるインドの古代叙事詩の戦いにおいても、このガダーが多く登場します。それはまるで、霊的探求の道を歩み抜く術を、このガダーが伝えているようです。ガダーを操る力には、霊的な深い意味が溢れ、その力は世界に平安をもたらすことが明白です。
ハヌマーンのようにどんな悪をも払拭することができるように、正義に心を定めて自分自身を統制し、ガダーを操る力を身につけたいと感じています。皆様にもハヌマーンの大きなお恵みがありますように心よりお祈り申し上げております。
(文章:ひるま)
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