プラーナ文献で述べられているヴィシュヌ神の25のアヴァターラ(化身)のうち、ダッタートレーヤは、8番目の化身とされています。ダッタートレーヤは、世界の創造・維持・破壊を司るブラフマン・ヴィシュヌ・シヴァが三位一体となった姿で描かれることが多く、原初の教師、ヨーガの主と言われています。人々と神々を教える存在として今でもインドの多くの人々から敬われています。
ダルマ(正義)が衰退した現代においては、人々はダッタートレーヤに容易に近づくことができないので、ダッタートレーヤ自身が、人々に接しやすいさまざまな姿に化身して現れます。14世紀の聖者であるスリパーダヴァッラバやナラシンハ・サラスワティはその化身とされています。
ここで話は一気に現代に近づきます。1952年、南インドの自然あふれるメクダトゥで育ったジャヤラクシュミーは、ダッタートレーヤの化身として予言された子どもを超自然的な状態で出産しました。彼女は少女のころから、ラージャ・ヨーガ(瞑想のヨーガ)を実践していたヨーギニーであり、奇跡的な力をもったファキール(イスラム僧)と博学なスワミ(不二一元論の伝統におけるヒンドゥー僧)を師としていました。
ある日、ジャヤラクシュミーは熟考のために洞窟に入ります。すると、洞窟の中に火がともったような光があり、その光のなかに燃えるようなオーラに包まれた長身の人物がいることに気がつきました。その人物は、絵画に描かれるような三つの頭を持っていなかったのですが、ダッタートレーヤでした。ダッタートレーヤは、自分の仕事を進めるために、人々にもっと近づくことができる身体が必要であるという旨を彼女に話し、洞窟を出て、空へと消えていきました。
その体験の後に、なぜかファキールとスワミの両師は、ジャヤラクシュミーをマータ(母)と呼び始めます。そしてスワミは、ダッタートレーヤが彼女のお腹に入り生まれてくることを予言したのでした。
数奇な運命のもと、ジャヤラクシュミーは夫となる男性と出会い、結婚し、妊娠しました。身重となったジャヤラクシュミーは、ブラフマクンダという谷の川辺の岩のうえへ行き瞑想をしていました。恍惚状態に入り、川の水位が上がって彼女の膝を浸していたことには気づきませんでした。瞑想を終えると、膝の上に一人の赤ん坊が乗っていました。その赤ん坊は、生まれながらに黄金の鎖でつながれたルドラクシャ(シヴァに由来する木の実)とサリグラム(ヴィシュヌに由来するヒマラヤ産アンモナイト化石の川石)のネックレスをつけていました。その赤ん坊こそが、現代におけるヨーガの巨匠スリ・スワミジ(スリ・ガナパティ・サッチダーナンダ・スワミジ)でした。
スワミジは、生まれながらにヨーガ経典に描写されているような不思議な力シッディを持ち、数々の奇跡をなし、次第に有名になっていきました。しかしシッディの奇跡的な力は、むしろ普通の力であり、大切なのは、人々のハートに変容を起こすことができるかどうかであるとスワミジは述べています。その変容は本質的に、人々の内側から内発的に起こります。
研ぎ澄まされた心を一定の対象に集中すると、それが瞑想になり、事象の真相を得ることができます。しかし心は生来的に揺れ動くので、必要な集中力を生み出すのは簡単なことではありません。ここに呼吸の果たす役割があります。呼吸のリズミカルな運動を統御することで、それに連なるプラーナ(生命エネルギー)を統御することができます。そしてこのプラーナを統御すると、身体と心を統御することが可能になります。引力、磁力、原子、電子、思いにいたるまで万物はプラーナによってできています。宇宙の全体は、さまざまな振動率で振動するプラーナの大海であり、一繋ぎのものです。プラーナのもっとも精妙な現れは、「思い」であり、心の統御とは、精妙なプラーナの統御のことです。
ダッタクリヤヨーガは、プラーナ―ヤーマ(生命エネルギーの統御)と呼ばれる呼吸法から始まります。ダッタは、「ダッタートレーヤ」を指しています。クリヤは「行為」、ヨーガは自己を普遍なるものに「繋ぐ」ことを意味します。
太古の時代より、人々と神々を導いてきた原初の教師、ダッタートレーヤのダッタクリヤヨーガを日本で学ぶことができるセンターが、2016年のナーダヨーガ(音を瞑想するヨーガ)のコンサートを契機に発足しています。ダッタクリヤヨーガの実修をみなさまにおすすめいたします。
●ダッタクリヤヨーガ基礎クラス 随時開催
http://swamiji-music.jp/yoga/
●大人が学ぶ、子どもたち・若者のための呼吸法とヨーガ一日セミナー
2018年1月28日(日) 紀尾井町サロンホール
http://swamiji-music.jp/swamijiblog/935/
●音楽瞑想のヨーガのためのピアノコンサート
2018年1月28日(日) 紀尾井町サロンホール
http://swamiji-music.jp/swamijiblog/937/
●南インド マイソール シヴァラトリヨーガキャンプツアー情報
2018年2月11日~2月21日
http://swamiji-music.jp/swamijiblog/1057/
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