私たちを取り巻く自然界には、本質を学ぶ多くの機会が溢れています。
インドでは、そうした自然界のあらわれの多くが神格化され、古来より崇められてきました。
そして、世界的に広まったヨーガにも、そんな自然界に見られる動きを真似るポーズが多く伝わります。
その一つに、雄鶏のポーズがあります。
毎朝、輝く太陽を呼び覚ますかのように鳴き始める雄鶏。
夜間や暗所では著しく視力が低下する鶏は、夜の間は不安に包まれ、じっと身を隠すように過ごすといわれます。
そして、太陽が昇る夜明け頃になると、その存在を示すように雄鶏が鳴き始めると伝えられてきました。
一方で、鶏には体内時計が備わっており、光を感じなくとも、時間になれば鳴き始めると伝えられます。
ヨーガで実践される雄鶏のポーズは、クックターサナと呼ばれ、それはまるで二本足で立つ雄鶏のようです。
このポーズでは、まず蓮華座を組み、左右の足のふくらはぎと太ももの間に、それぞれ左右の腕を入れます。
組んだ足を崩さないように肘まで腕を通した後、両手を床につけ、腕の力を使いながら身体を持ち上げます。
このポーズには、膝や股関節の柔軟性を高めたり、腕・肩・手首を強化したり、バランス感覚や集中力を向上させる効果があるとされます。
何よりも、このポーズは脊椎の基底に位置するムーラーダーラ・チャクラを活性化すると伝えられてきました。
ムーラーダーラ・チャクラは、土の要素を持ち、生命エネルギーの拠点となる重要なチャクラです。
ムーラーダーラ・チャクラが滞ると生命エネルギーは妨げられ、人生においては地に足がつかないような大きな不安を感じると伝えられます。
私たちは、日々の中でさまざまな不安を感じることが少なくありません。
その不安の中では、夜の鶏のように、じっと動けないことも往々にあります。
しかし、暗闇を切り開くかのように鳴く雄鶏の姿を真似るこのポーズは、私たちのムーラーダーラ・チャクラを活性化し、生命エネルギーを呼び覚ましていきます。
そうしてエネルギーが生き生きと動き始める時、内なる世界には明るい光とともに安定が生まれ、不安といった暗闇は払拭されていきます。
こうした自然界が見せる動きに調和をするヨーガのポーズは、自分自身の心身と向き合いながら、本質に気づくための大切な機会を与えてくれます。
その貴重な世界へと私たちを誘うヨーガを取り入れながら、心身ともに健やかな日々を過ごしたいと感じます。
(文章:ひるま)
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