クリシュナ・ジャンマーシュタミー(御生誕祭)

2006年8月16日、ヴィシュヌ神の第8番目の化身とされるクリシュナの御生誕祭が行われました。ジャンマーシュタミー(ジャンマ[生誕]+アシュタミー)とはクリシュナの誕生日の意味であり、その他、ゴークラ・アシュタミー、クリシュナ・ジャヤンティー(誕生祭)とも呼ばれています。アシュタミーとは、8番目の意味であり、ヒンドゥーの暦で、シュラーヴァナ月(七月〜八月)、アセンダントがローヒニーの時、月が欠けはじめて第8日目の夜にクリシュナが誕生したことからこのようにいわれています。
クリシュナの生誕については「バーガヴァタ・プラーナ」に詳述されています。その一部を『インド神話』(上村勝彦著、ちくま学芸文庫)[1]を参照してご紹介いたします。
『悪魔どもは暴虐な王の姿をとって地上に出現した。
大地の女神は彼らに苦しめられ、牝牛に姿を変えて梵天に救いを求めた。
梵天はシヴァをはじめとする神々をつれて乳海の岸に行き、瞑想して最高神プルシャ(ヴィシュヌ神)を崇拝した。
梵天は瞑想のうちに天の声を聞いて神々に告げた。
「最高神はヴァスデーヴァの家に生まれるであろう。
天女たちは彼を楽しませるために、(牛飼女として)地上に生まれなさい。
ヴィシュヌ神の一部分であるアナンタ竜は彼の兄として生まれなさい。
聖なるヴィシュヌのマーヤー(幻力)も、主の目的を成就させるために地上に下るであろう。』
クリシュナの生まれた時代は、世界を支配する王が悪魔であったとされ、人々は王の暴政に悩み悲しんでいました。
そのため、人々の願いに応え、ヴィシュヌ神自身が悪魔を滅ぼすためにクリシュナとして地上に降誕しました。
『ある夜、ヴィシュヌ神は、当方に昇る満月のように、デーヴァキーの胎内より出現した。その子はヴィシュヌ神の特徴をことごとくそなえていた。……』
幼児期のクリシュナは、さまざまなリーラー(神の戯れ)が言い伝えられています。
『やがて幼児の誕生日がおとずれ、ヤショーダー[クリシュナの養母]は祝宴の準備でいそがしく働いていた。
幼児は母の乳を吸いたかったが、彼女が来ないので大声で泣き、怒って足をばたばたさせて、そばにあった車を遠くまで蹴とばしてしまった。
車がぶつかって多くのものがこわれた。
ヤショーダーたちは驚いて駆けつけた。
そばにいた子供たちが、この幼児が車を蹴とばしたと言ったが、牛飼いたちは信ずることができなかった。
またある日、ヤショーダーが幼児を膝にのせていると、突然その子が山のように大きくなったので、彼女は驚いてその子を地面に置き、最高神に祈念してバラモンたちを呼びに行った。
ちょうどその頃、カンサに派遣されたトリナーヴァルタという名の悪魔が旋風の姿をとってそこへやって来た。
人々が埃のために何も見ることができないでいる間に、旋風は幼児をさらっていった。
ところが、幼児を運んで空を飛んでいるうちに、悪魔は幼児の異常な重みに耐えることができなくなり、幼児を放そうとしたが、その子は彼の首にしっかりと抱きついて離れなかった。
悪魔はついに地上に墜落し、岩にぶつかって死んでしまった。
またある時、ヤショーダーは幼児に乳を飲ませていた。
子供が乳を飲み終わり、母がやさしく笑ってその顔をなぜていると、その子はあくびをした。
ところが、ヤショーダーは、その子の口の中に、空・星々・太陽・月・海・大陸・山々など、ありとあらゆる世界を見たのであった。
彼女は幼児の口の中に宇宙を見て仰天し、両眼を閉じてしまったものだ。
(『バーガヴァタ・プラーナ』10.5-7)』
クリシュナは実在の人物であるといわれておりますが、そのクリシュナが織りなす奇跡の数々は魅力に満ちあふれ、クリシュナの本質を体現しているようです。クリシュナは、彼の人々を惹きつけて止まないその愛の本質により、いまなお世界中の人々を魅了し続けています。
「アティ・ルドラ・マハー・ヤジュニャ」追記
前回お伝えいたしました人類の平安と繁栄を祈願して行われている「アティ・ルドラ・マハー・ヤジュニャ」についてですが、一部誤解を生む表現がございましたので、ここに追記させていただきます。
「アティ・ルドラ・マハー・ヤジュニャ」の僧侶団代表であるシュリー・ナンジュンダ・ディキシット氏の講話で、次のような解説がございました[2]。
「一人がルドラ(ナマカと思われる)を11回とチャマカを1回唱えると、ルドラとなる。それを11倍するとルドライエーカーダーシニー(エーカーダシャ・ルドラム)となる。さらにそれを11倍すると、マハー・ルドラとなる。マハー・ルドラを11倍すると、アティ・ルドラとなる。1,331人の僧侶が、一日のうちに11回のルドラとチャマカを1回唱えると、アティ・ルドラとなる。あるいは、11人の僧侶が、121日間それを続けるとアティ・ルドラとなる。……」
今回プッタパルティでは、121人の僧侶によりルドラムが朗誦されているようですので、11日間ルドラムを唱え続けるとアティ・ルドラムとなることになります。
アティ・ルドラムは合計14,641回のナマカムと、1,331回のチャマカムを唱えることですが、一人一人の僧侶が14,641回のナマカムと1,331回のチャマカムを唱える必要はなく、僧侶の人数によって唱える回数を割ることができるようです。
誤解を招いてしまいまして申し訳ございませんでした。プッタパルティでのアティ・ルドラ・マハー・ヤジュニャは、本日で終了いたします。占星学的にも霊性修行に適した日であるとされておりますので、この一日を瞑想やジャパなどで過ごし、神聖な想いで満たすとよいかも知れません。
[1] 村上勝彦著,『インド神話』,ちくま学芸文庫,2003
[2] Athi Rudra Maha Yajna: Day One – 9th Aug 2006,
Elaborate Report on the Afternoon Session,
http://www.sssbpt.org/Pages/reports/armyreportfirstday.htm