スラビー・ムドラー

時に荒れ狂う厳しい自然に囲まれるインドの地には、スラビーという限りない恵みを授け、あらゆる願望を満たす牝牛の存在が伝わります。
人々にさまざまな恵みを運ぶ幸せの象徴である牛は、インドでは古代より大切に尊ばれてきました。
そんなスラビーのエネルギーを呼び覚ます、力強いムドラーがあります。

スラビー・ムドラーでは、まず胸の中心で祈るように両手を合わせます。
そして、左手の薬指と右手の小指の先端、右手の薬指と左手の小指の先端を交差させるように合わせます。
次に、左手の中指と右手の人差し指の先端、右手の中指と左手の人差し指の先端を同じように交差させて合わせます。
最後に、右手と左手の親指を離して胸の方に向けます。
この手の形がスラビー・ムドラーです。

一見すると複雑で難しそうに見えるこのムドラーの形は、スラビーが持つ4つの乳房に似ていると伝えられてきました。
スラビーはその4つの乳房から、溢れ出る乳のように望みのものを授けると信じられます。

親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、5本の指にはそれぞれ5元素の象徴があります。
このムドラーで左右の親指を離す時、心身において強すぎる火のエネルギーの均衡が図られると伝えられます。
そこで、残り4つのエネルギーが調和しながら交わると伝えられてきました。

私たちの身体の内では、脊椎の基底にあるとされるムーラーダーラ・チャクラに、クンダリニーという生命エネルギーが眠っていると信じられます。
さまざまな取り組みによって上昇するそのエネルギーは、一説に、お臍のあたりにあるとされる火の要素を持つマニプーラ・チャクラを超えることが難しく、ここで行き詰まると伝えられてきました。

このムドラーでは、その火のエネルギーが落ち着き、調和のもとで生命エネルギーが上昇していくと信じられます。
その豊かな生命エネルギーによって、私たちは願望を実現する力を発揮することができると伝えられてきました。

混迷を極める外界の中においても、常に自分自身の内に前向きなエネルギーを生み出し、世界の平和を担うことができるように、こうした叡智を生かし続けたいと感じます。
世界に叡智の光がありますように、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)