サンスクリット語豆知識 世界に広がったサンスクリット語とインド文化

Ulun Danu temple Beratan Lake in Bali Indonesia, Temple of the l

個人的な話から始まって恐縮ですが、
筆者は先日旅行でバリ島へ行ってきました。
 
霊峰アグン山を抱き海に囲まれた島は
水が豊富で苔むす深く濃い緑に包まれた空気感と瑞々しさ、
賑やかな観光地を少し離れれば
素朴な景色や静けさと祈りに満ちていました。
スピリチュアルな体験もできるスポットとして
近年人気を得ています。
 
インドネシアはイスラム教徒が90%近くを占める国ですが
バリ島だけはヒンドゥー教が信仰されていて、
土着の宗教観と混交した信仰は
インドのヒンドゥー教と区別して
バリ=ヒンドゥーと呼ばれます。
ヒンドゥーの神々を祀った寺院、
精霊を祀った祠などがそこかしこにありました。
 
一般的にヒンドゥー教は「民族宗教」と言われますが、
現代ではヨーガやインド思想を通して
ヒンドゥー教に惹かれる人は増えていますし、
歴史的にも東南アジアの各地へ伝播して、
それぞれの地域の文化や宗教に大きな影響を与えたことを考えると
準世界宗教といえます。
 
東南アジアへの文化や宗教の伝達を
担っていたのがサンスクリット語で、
そのため、東南アジア各国の単語には
サンスクリット語に由来するものが多数あります。
 
挙げきれないほどの例のなかから
日本でも馴染みのあるところでは、
タレントとして有名なデヴィ夫人。
彼女の名前をサンスクリット語風に言えば
デーヴィー(देवी devī)
つまり「女神」という意味です。
 
その夫、故スカルノ大統領の名前も、
マハーバーラタの登場人物
カルナ(कर्ण karṇa)に由来しますし、
 
バリ島の名そのものも
供物を意味するバリ(बलि bali)に由来します。
 
地名や国名では

シンガポール → シンハ・プラ(獅子の町)सिंह-पुर siṁha-pura
スリランカ → シュリー・ランカー(聖なるランカー島)श्री-लङ्का śrī-laṅkā
アンコール → ナガラ(都)नगर nagara
ジャカルタ → ジャヤ・カルタ(勝利の行為) जयकर्ता jayakarta
アユタヤ → アヨーディヤ(ラーマ神の生誕地) अयोध्य ayodhya
ブルネイ → ヴァルナ(水の神) वरुण varuṇa、
       またはブーミ(大地) भूमि bhūmiという説も
カリマンタン → カーラ・マンタナ(燃えさかる季節・気候) कालमन्थन kāla-manthana
ビルマ → ブラフマー ब्रह्मा brahmā
モルディブ → マーラー・ドゥヴィーパ(島々の首飾り) मालाद्वीप mālādvīpa

など、サンスクリット語に由来するといわれています。

(他の語源説があるものもあります)
 
最近では、ヨーガやインド思想を通して
サンスクリット語が広く使われていますが
もっと一般的な例をあげれば、
ゲームやSNSで自分自身を表わすキャラクターのことを
「アバター」といいますよね。
これもサンスクリット語のアヴァターラ
「化身」(अवतार avatāra)からきている言葉です。
 
日本で昔から使われてきた言葉にも
 
旦那 दान-पति dāna-pati ダーナパティ(布施主、仏教語の「檀那波底」「檀那」)
瓦 कपाल kapāla カパーラ(小皿、頭蓋骨、かわらけ)
シャリ(お寿司の) शालि śāli シャーリ(米)
奈落 नरक naraka ナラカ(地獄)
刹那 क्षण kṣaṇa クシャナ(一瞬)
「カルピス」は、カルシウムのカル + サルピス सर्पिस् sarpis(乳製品の一種、醍醐)
から名付けられました。
 
世界に広まったサンスクリット語から
身近にあるサンスクリット語までの一例でした。
 
(文章:pRthivii)