ハヤグリーヴァの降誕

兄弟姉妹の愛の絆を祝うラクシャ・バンダンが祝福されるシュラヴァナ月の満月。この日は、ブラーフミンの間で「ウパーカルマ(アーヴァニ・アヴィッタム)」という重要な儀式が執り行われる時でもあります。ガーヤトリー・マントラを唱えながら、身につけていたブラーフミンの象徴である白い聖紐を新たに付け替える時であり、ガーヤトリー・ジャパの日としても知られています。

「ウパーカルマ」は始まりを意味します。ヴェーダの学習に取り掛かる重要な日として伝えられるこの満月には、ある言い伝えがあります。大昔、マドゥとカイタバという悪魔によって、ブラフマー神から知識の象徴であるヴェーダが盗まれました。すると、ヴィシュヌ神が馬の頭をしたハヤグリーヴァとなり、盗まれたヴェーダを取り戻すと、暗闇に飲み込まれていた世界が光に包まれたのだと伝えられます。

ヴィシュヌ神がハヤグリーヴァとなって降誕した時が、このシュラヴァナ月の満月であると信じられています。ヴェーダを世界に取り戻したハヤグリーヴァの降誕は、無知という暗闇から生じる苦悩が溢れる世界に、知識という光から生じる幸福がもたらされた聖なる時を意味します。

ハヤグリーヴァは、仏教では馬頭観音として知られます。知識の主であるハヤグリーヴァへの礼拝を通じ、その力が呼び覚まされる時、思考は明瞭となり、集中力や記憶力、分析力や直感力が高まるといわれます。そうして向上する知識は、人生のあらゆる苦悩の源である無知を滅するための、何よりも強い武器となるものです。それを手にする時、大きな幸福に包まれるに違いありません。

ハヤグリーヴァは、毎朝、世界に太陽をもたらす重要な存在として崇められます。全世界を照らす太陽は、私たちの内で意識として明るく輝いています。シュラヴァナ月の満月、太陽の光を讃えるガーヤトリー・マントラに触れてみるのも良いかもしれません。ハヤグリーヴァの誕生とともに、自分自身の内で、新たな知識の光が昇ることでしょう。

(文章:ひるま)