神々への祈りが溢れるインドの地には、破壊神として崇められるシヴァ神に捧げられた聖地がとりわけ多く存在します。
インド最北部、ジャンムー・カシミール州に位置するアマルナート洞窟もそのひとつです。
標高3888mのヒマーラヤ山中にあるアマルナート洞窟では、出現する氷柱がスワヤンブーとして崇められます。
それはシヴァ神の象徴であるシヴァリンガムであり、人々はこの氷柱のシヴァリンガムを拝むために、氷河に囲まれた険しい山道を登る巡礼に赴きます。
アマルナート洞窟は、シヴァ神がパールヴァティー女神に不死の秘密を説いた場所として知られます。
パールヴァティー女神が不死の秘密を教えて欲しいとシヴァ神に尋ねた時、シヴァ神はこの人里離れたアマルナート洞窟に向かったといわれます。
その道は、パハルガームから始まりました。
パハルガームにおいて、シヴァ神はまず乗り物である牡牛のナンディを手放します。
そして、チャンダンワーリーの畔に着いた時、シヴァ神はその髪に飾られた三日月を手放しました。
シェーシャナーグの湖に着いた時は、首に巻きつく蛇を手放します。
マハーグナの山に着いた時は、息子のガネーシャ神を手放しました。
そして、パンチャタルニーに着いた時、シヴァ神は5元素を手放します。
そうして洞窟にたどり着いたシヴァ神は、パールヴァティー女神に不死の秘密を説き始めたと伝えられます。
肉体を持って生まれた私たちは、始まりがあり終わりがある時の中で生きています。
その限りある時の中で、見えるもの、聞こえるもの、味わうもの、触れるもの、匂うもの、こうした変化に富んだ刺激的な喜びに魅せられ、心は忙しく動き回ります。
そこでは、自分自身の本質である不変の喜びを見失う瞬間が少なくありません。
シヴァ神は、パールヴァティー女神に不死の秘密を説くために、すべてを手放しました。
生まれ持った肉体を通じて経験する世界の中で、欲望や執着に囚われる私たちは、そんなシヴァ神に心を定める必要があります。
その時、破壊神であり時を超えた偉大な存在であるシヴァ神は、人生という険しい道を歩む私たちに、不変の喜びに至る道程を見せてくれるに違いありません。
そこで私たちは不死の秘密を知ることができるはずです。
(文章:ひるま)
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