139、アーユルヴェーダ音楽療法入門1(音楽療法とは?1)

音楽療法とは何か?
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「音楽療法」というジャンルが語られるようになったのは、1990年代に入ってからで、医学界の一部で関心を抱く人々が増え始めたきっかけは「代替医療」の先駆者であるバリー・キャシレス(Barrie R.Cassileth)がその著書で語ったことだと言われます。

2010年代のことですから、医学界に於ける理解はまだまだ乏しいと言わざるを得ません。しかもキャシレスの著述では、音楽療法は、あくまでも「補完療法」であり、治療効果は無いが、(従来の西洋医学式の)治療やリハビリの効果を高めることが期待出来る、程度の認識のようです。甚だ残念なことです。
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一方、キャシレスの40余年も前の1973年には、米コロラド大学教授のドロシー・レタラック(Dorothy Retallack)が、その著書で音楽による植物の育成度の違いを説きました。

なんと、彼女は植物に「バッハ」「ビートルズ」「インド音楽」を聴かせ、その発育の違いを実験によって明らかにしたのです。

1973年と言えば、私がインド音楽修行を始めた翌年で、その後二三年の間におそらくレタラックの書と思われるものを洋書屋で見た記憶があります。

しかし当時の私は「何を今更西洋人の学者があれこれ言うまでもないことじゃないか」と真面目に読もうともせず購入しませんでした。

1990年代に本気で「音楽療法」に取り組み始めてから、
「あの本は今にしてみれば貴重な資料だ」と探したのですが見つかりません。
多分レタラック女史のものと思うのですが、

同書の写真では、「土から上の枝葉の様子」でしたが、
高校生の時に見た写真は、ガラス張りの実験装置で「土の下の根の伸び具合」を示していました。

「バッハ」を聴かせた場合は「普通の伸び方かやや良い成長率」で、「ビートルズ」は、普通以下にしか生育せず。「インド音楽」では、驚異的な成長を写真は示していました。

もしその写真がレタラックのものではないこと、本当の著書が何であるか?をご存知の方がいらっしゃったら、是非お教え下さいませ。
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しかし、レタラックの実験は、それから40年以上も経って、やはり2010年代に数多くの植物学者から徹底的に批判されるに至ります。

まず「実験データとして対象が少な過ぎる」に始まり、「そもそも彼女がロック嫌いな恣意が加わり過ぎている」というのです。

しかし、今日も同じですが、誹謗・中傷・批判・非難する人は、「自分が得意とする点のみから突いて、全否定する」ものです。

写真を見ても確かにレタラック女史は昔堅気の気難しいキャリアウーマンに見え、「ロック嫌いなのかも」と思えますが、「インド音楽では良く成長した」とするならば、決して「西洋クラッシック音楽至上主義者」ではない訳です。

しかし、2010年代に、例えばテルアビブ大教授のダニエル・チャモヴィッツ(Daniel Chamovitz)などの研究によれば、「植物は聴覚が皆無」なのだそうで、レタラック女史の研究が全て虚実ではないとしても、「音楽を聴いた」ということではなく、「或る域の周波数」が生育に関係していることはある程度確証的となったようです。

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過小評価される音楽療法
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このように、西洋精神医学の世界では、今だに「音楽療法」は、極めて過小評価されているのが実状なのです。
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私は、2007年に福岡に自宅を移してからも三年間、月二回東京に通って、自分の教室の他に、「東京国際音楽療法学院」で即興演奏の授業を務めました。

学院では、通学生の他に、VTRで全国の通信生が学び、通信生も年に一二回東京での研修があり、直接お教えすることが出来ました。

学院は、1990年代に画期的な指導を始め、音楽療法士を育てて来たのですが、学会はその当時から推進派と慎重派に分裂しており、前者が「今の世の中に絶対必要な分野だ」と説くのに対し後者は、「まだまだエビデンスが不十分」と説いていたのです。

その結果、学会も実は二系統になってしまい、それがまとまらない為に「国家資格」が確立せず、一方の学会の資格試験はある程度信用と権威がありますが、世の中の不理解と、2000年代中頃からの介護保険制度の改悪、リハビリ予算の大巾な削減もあって、「音楽療法士」が現場で正しく評価され、充分な報酬が受けられる状態にはなかなかなっていないのが実状です。
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ところがその一方で、「認定制度」が整っていないが為に、自分で勝手に「音楽療法士」を名乗る人物も少なくないことも問題です。
尤も、そのような根拠の無い人々は、この私も「同類だ」と平然と言いますが。

つまり「音楽療法」の実状は、「(非西洋化学薬品の)生薬」と同じく「医療効果」ではなく「サプリメント」としてしか認知されていないのです。

逆に言えば、サプリ=健康食品として認められるけれど、「医療効果・効能」は謳ってはならない(法律違反)ということになってしまうのです。そのため「玉石混淆」どころか「真贋ごちゃまぜ」の状態を招いているのも実状です。 (つづく)

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何時も最後迄ご高読をありがとうございます。

福岡市南区の自宅別棟楽器倉庫の教室では、インド楽器とVedic-Chant、アーユルヴェーダ音楽療法の「無料体験講座」を行っています。詳しくは「若林忠宏・民族音楽教室」のFacebook-Page「Zindagi-e-Mosiqui」か、若林のTime-Lineにメッセージでお尋ね下さい。 九州に音楽仲間さんが居らっしゃる方は是非、ご周知下さると幸いです。

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You-Tubeに関連作品を幾つかアップしております。
是非ご参考にして下さいませ。

Hindu Chant講座Vol.1

Hindu Chant講座Vol.2

Hindu Chant講座Vol.3

Hindu Chant講座Vol.4

Vedic Chant入門講座(基本理解編)

Ayurveda音楽療法紹介(基礎理解編)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編1)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編2)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編3)

「いいね!」「チャンネル登録」などの応援を頂けましたら誠に幸いです。

(文章:若林 忠宏

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若林忠宏氏によるオリジナル・ヨーガミュージック製作(デモ音源申込み)
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グルとアールニの神話

霊性が豊かな神秘の国インドにおいて、現代においてもとりわけ重要視されているのが、グルの存在です。
その伝統の中では、私たちに深い教えを示す多くの神話が伝えられてきました。
グルの存在について、マハーバーラタで説かれる有名な神話を通じ、気づきを深めたいと思います。

ダウミャと呼ばれる聖仙をグルとして、アーシュラムで学びを続けるアールニと呼ばれる弟子がいました。
アールニは、後にウパニシャッドの代表的哲人のひとりに数えられる存在です。

ある寒い冬の日、アーシュラムの畑の溝が崩れ、水が畑に流れ込んでいました。
ダウミャはアールニに、溝の崩れを修復するように指示をします。
アールニは畑へ向かい、さまざまな方法で溝を塞ごうとしますが、溝はいっこうに塞がりません。
大切な畑が台無しになってしまうと焦り始めたアールニは、崩れた畑の溝に横たわり、自らの身体で溝の崩れを塞ぐと、流れ込んでいた水を堰き止めました。

夜になっても戻らないアールニを心配したダウミャは、畑へ向かうと、溝のそばに横たわっているアールニを見つけます。
アールニは冷たい水を身体で受けながら、崩れた溝を塞いでいました。
その姿に感銘を受けたダウミャは、アールニの学びは達成されたと、祝福を授けたといわれます。

グルの喜びは、弟子にとって最高の祝福であると伝えられてきました。
グルに従い聖典の教えを学んでいたアールニは、日々の小さな出来事を通じ、その究極の境地に至ります。
他のために自分を犠牲にすることのできるアールニに、それ以上の学びは必要なかったからです。
そこには、自我の消えた何よりも大きな平安があることに、ダウミャは気づいていたに違いありません。

インドでは現代でも、自分自身を解脱へと導くグルの存在を求め、多くの人々が探求を続けています。
それは、自分自身の本質を見つけるための歩みにも他ありません。

私たちの周りには、人生という多くの学びの機会が溢れています。
与えられた人生の一瞬一瞬をグルとして、謙虚に信愛を持って日々を生きることで、何よりも大きな祝福が与えられるに違いありません。

グル・プールニマーを通じ、自分自身を育む全てに敬意を払うとともに、感謝を捧げたいと感じます。
皆様にも、大きな祝福がありますように、心よりお祈り申し上げます。

(文章:ひるま)

グル・プールニマー2018

インドでは、グル(師)に対しては、とても大きな尊敬が払われます。家庭にあっては親、学校にあっては先生、会社にあっては上司など、グルの指導のもと、人は大きく成長していくことができます。インドでは、グルは神と同一のものと見なしなさいといわれています。それは、太陽の光が反射して月が輝いて見えるように、グルの英知に照らされて、人々が輝きだすといわれるからです。

2018年7月27日は、グルに感謝の意を捧げるグル・プールニマー(師への満月祭)です。
グル・プールニマーの起源は、聖仙ヴィヤーサの誕生日にあたります。
聖仙ヴィヤーサは、ヴェーダ・ヴィヤーサ(ヴィヤーサは編者の意味)とも呼ばれ、ヴェーダ聖典を編纂したことで知られています。彼は、後の時代に、人々の心が醜くなり、すべてのヴェーダを学ぶ能力がなくなることを見通して、莫大なヴェーダを現在の4部(リグ、ヤジュル、サーマ、アタルヴァ)に編纂したといわれています。
さらに、彼はプラーナを記述し、物語や寓話を通じてヴェーダと同様の霊的英知をやさしく説き、それによって多くの人々がヴェーダの英知に触れることができるようになりました。また彼は、ヴェーダンタの本質をなすブラフマー・スートラの作者としても知られています。このような偉業を残したグル・ヴィヤーサを祝福するため、彼の誕生日がグル・プールニマーとして祝われることになりました[1]。

グル・プールニマーの日には、新しい誓いを立て、それを実行することが慣例的に行われています。
例えば、霊的な師がいれば、師からマントラを授かり、それを毎日唱える誓願を立てます。
あるいは毎日瞑想をする、肉食をしないなど、その他の霊的な誓願を立て、実行するのもよいでしょう。

グルの役割について、スワミ・シヴァーナンダは次のように語っています[2]
「人が成長するために、あなたはグルの重要さと神聖な意義について理解していますか。インドがいままでグルを大切にし、グルの意識の光の中で生き続けているのには理由があります。理由もなく、毎年この古くからの伝統を祝い、度々グルへ敬意を払い、信義と忠誠を再確認しているのではありません。グルは、悲しみと死の束縛から脱却させ、真理を体験させる、人々にとっての唯一の保証人なのです。」

またスワミ・シヴァーナンダは、グル・プールニマーの日に行うべきことについて次のように語っています。
「このもっとも神聖な日は、ブラフマームフルタ(午前4時)に起床しなさい。そして、グルの蓮華の御足を瞑想するのです。心の中で、彼の恩寵を祈りなさい。こうしてはじめて、あなたは成就に至ることができます。早朝には、熱心にジャパや瞑想を行いなさい。」
「沐浴したあと、グルの蓮華の御足を礼拝しなさい。また彼の絵や写真に、花やフルーツを供え、お香や樟脳を焚くのもよいでしょう。この日は、断食をするか、食べても牛乳やフルーツだけにするべきです。午後は、あなたのグルの信奉者たちと一緒になり、彼の栄光や教えについて話し合うとよいでしょう。」
「夜は、信奉者たちが集まり、神の御名やグルの栄光を歌いなさい。グルを礼拝するもっともよい方法は、彼の教えに従うことです。彼の教えの顕現としてあなた自身が輝き、彼の栄光とメッセージを伝えなさい。」

グル・プールニマーの日からは、チャトルマースとよばれる神聖な時期が4ヶ月間続き、インドではこの期間に多くのお祭りが行われます。特に2018年7月28日から2018年8月26日までの期間は、シュラヴァナと呼ばれ、チャトルマースの中でも特に神聖な期間とされています(地域によって異なります)。
この時期は、シュラヴァナ(聞くこと)と呼ばれるように、聴聞等による学習に適した期間です。師の教えを聞き、それを実行に移せるよう努力すれば、きっと大きな実りがあることでしょう。

[1]”Guru Purnima”, http://www.amritapuri.org/cultural/guru/purnima.php
[2]Subhamoy Das, “The Guru Purnima”, http://hinduism.about.com/od/festivalsholidays/a/gurupurnima.htm

2018年7月の主な祝祭

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2018年7月の主な祝祭をご紹介いたします。

恵みの雨が降り注ぐモンスーンを迎えると、聖なる4カ月とされるチャトゥルマースが始まります。大きな祝祭が続くこの期間、最初の祝祭であるグル・プールニマー(師を讃える満月祭)が7月の満月に祝福されます。そして、シヴァ神を讃えるもっとも吉祥なひと月とされるシュラヴァナ月が始まります。

7月2日 サンカタハラ・チャトゥルティー
7月9日 エーカーダシー
7月11日 シヴァラートリー
7月13日 新月
7月14日 ラタ・ヤートラー
7月16日 カルカ(蟹座)・サンクラーンティ
7月23日 エーカーダシー/チャトゥルマースの始まり
7月28日 満月/グル・プールニマー
7月29日 シュラヴァナ月の始まり(主に北インド)
7月31日 サンカタハラ・チャトゥルティー

*地域や慣習によって、祝祭の日にちには差異が生じることがあります。

1年を通じた祝祭、またその詳細について、インド暦カレンダーでご紹介しております。

参照:http://www.drikpanchang.com/panchang/month-panchang.html

第25回グループ・ホーマ無事終了のお知らせ

第25回グループ・ホーマにお申込みいただきました皆様、誠にありがとうございました。

第25回グループ・ホーマは、6月23日に無事に終了いたしました。

プージャーの写真を以下に掲載させていただきます。

神々の祝福と、より良い体験がありますよう、心よりお祈り申し上げます。

ヨーガ・スートラ第3章第23節

Hindu God Yoga Sutra of Patanjali Statue on Exterior of Hindu Temple


मैत्र्यादिषु बलानि॥२३॥
Maitryādiṣu balāni||23||
マイトリャーディシュ バラーニ
友愛やその他により、それらの力を獲得する。

簡単な解説:前節において、行為には迅速に結実するものと、緩慢に結実するものがあり、それらの行為へ綜制を行うことで、または、さまざまな前兆によって、死期を知ることができると説かれました。本節では、友愛といった慈などの情操に綜制を向けることにより、それらの力を獲得することができると説かれます。

インド縦断ツアー6

州都グワハティので雷雨

そもそも今回のカーマキャー女神への巡礼は、最初から普通ではありませんでした。
参拝の日は朝から土砂降りでした。あちこちで落雷も起こっているようです。雨が多いアッサム州とは言え、乾季です。車の運転手は、「夜まで止みそうにないなぁ。」 と言いながら車を出しました。カーマキャー女神の夫シヴァは暴風神ですから大雨は祝福なのでしょう。

最初はナヴァグラハ寺院の参拝でした。ナヴァグラハ(9惑星)とは言いますが、実際は9色のシヴァリンガムが惑星に見立てて祀られています。
訪れたタイミングはちょうどホーマの終わったところで、暗闇に揺れる9つの炎が幻想的でした。
実は私はこの寺院の入り口付近で、激しく尻餅をついてしまったのです。雨で濡れた寺院の床はつるつるでした。
尻餅とは言え、歯のかみ合わせが一瞬にしてずれ、あれから3か月経つ現在でも左側の歯で固いものが噛めないのですから、かなり衝撃は大きかったと思います。
皆さんが助け起こしてくれようとしていたのですが、私はその時尾てい骨を強打し、クンダリニーが覚醒してしまったのに気づいていました。

クンダリニー覚醒技法は25年ほど修行しておりますし、過去にも2度大きな覚醒を体験しているので、大丈夫と思ったのですが、まずいことに大部分のエネルギーが顎のあたりで止まってしまったのです。
古来よりヨーガ行者が修行の途中で精神に異常をきたしてしまうケースがあるのですが、そのうちの何割かはクンダリニーが頭頂から抜け切れず体内に留まってしまうことが原因と思われます。
人間の身体がスクーターだとすると完全に動き出したクンダリニーのエネルギーはロケットエンジンくらいの威力があるとも考えられます。
シヴァとその妻たちの手荒い祝福なのかもしれませんが、非常に危険な状態であるのは明らかでした。

以前クンダリニーが意図せず覚醒してしまったときに、たまたま近くにいてすぐ気づいてくださった、ヨーガ教師のMさんが今回も気づいたようで、他の方々が過干渉しないように、さりげなくサポートしてくださいました。

また、私のツアー常連参加者の医師S氏が状態をみてくださり「医学的には脳震盪です。頭は打っていないので医学的には危険はないと思います。霊的にはわかりませんが・・・」とおっしゃってくださったのですが、わざわざ「医学的には」とつけたところに、今の状態が尋常ではないことを感じざるを得ませんでした。
このクンダリニーの事故的覚醒に関しては、次回に続きます。

(文章:ガネーシャ・ギリ)

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ガネーシャ・ギリ氏共著 『インド占星術と運命改善法』

ガネーシャ・ギリによるインド占星術鑑定

ガネーシャ・ギリによるヨーガクラス
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心と身体の調和、環境浄化のためのアグニホートラのマントラ

文明の進歩は、私たちの日常生活に大きな影響を与えてきました。同時に、それは人々を緊張と不安がともなう物質的側面に大きく依存させる結果になっています。
内観を通してこの事実に気がついた人々は、自然の永遠で偉大な力の重要性を感じ、自然のリズムに合わせてすでに歩み始めています。

現代科学は、古代インドの聖者や賢人が発見した事実を今、証明しつつあります。ミクロの元素からマクロな宇宙創造に至るまで、この世界の普遍的真理はすべての個人と深いつながりがあります。

古代のヴェーダによって処方されたあらゆる方法や儀式の中でも、アグニホートラ・シャーンティパータは、平安に達する手法として今日でも他に類を見ないものです。
これらのマントラの純粋な音は、実践者の住処だけでなく、隣家を始め、全ての環境を浄化する作用があるとされます。
しかし言うまでもなく、このマントラや儀式の最も深遠かつ優れた効果は、参加者と聴衆すべての肉体と心、そして魂を調和させ、豊かにさせることに行き着きます。

この強力なヴェーダのマントラの残響が拡大していくことにより、私たちに地、水、火、風、空の生活を潤す自然の元素に対する感謝の念を呼び起こすでしょう。
アグニホートラ(火供)のエネルギーに満ちた音の普遍的な力は、現代生活における緊張と不安を一掃し、すべての人々の魂に、平安、調和、幸福を授けるように組まれています。

バラドヴァージャのアーサナ

2014年より、6月21日はヨーガの普及を目的とした、国際ヨーガの日として祝福されるようになりました。
6月21日は、一年の内で昼間の長さが最も長い夏至にあたります。
インドの暦では、夏至の後の最初の満月において、師を讃えるグル・プールニマーが祝福されるなど、夏至は重要な意味を持ちます。

一説に、ヨーガの伝承は、その起源とされる偉大なグル、シヴァ神によって夏至に始まったと伝えられることがあります。
シヴァ神はこの日、サプタリシ(七聖仙)にヨーガを説き始めたのだと伝えられます。

そのサプタリシの一人に、バラドヴァージャと呼ばれる聖仙がいます。
バラドヴァージャはヴェーダの学びに没頭し、それを達成するために、三度生まれ変わったと伝えられる存在です。
苦労の末にヴェーダの全てを学び、三度目の死が訪れたとき、シヴァ神に解脱を求めるも、シヴァ神はそれを許しませんでした。
バラドヴァージャは、ヴェーダの教えを他と共有することをしていなかったからです。

すると、バラドヴァージャは四度目の生において、ヴェーダを教え、人々を啓発することに喜びを見つけます。
ヴェーダの普及に没頭したバラドヴァージャは、その後、究極の叡智のもとで解脱に至ったと伝えられます。

ヨーガにおいては、そんなバラドヴァージャに捧げられるポーズがあります。
バラドヴァージャのように片足を蓮華座で組み、身体をねじるポーズです。

中心から身体を絞り切るようにねじるこのポーズでは、膝や股関節、腰、背骨の柔軟性を必要とします。
そして、身体を深くねじるために、左右の両端に逆向きの力が働くよう、強く回し曲げなければなりません。
これらの過程において、身体の歪みや消化機能が改善され、心身に浄化が促されると伝えられます。

泥水を吸って生きながら美しい花を咲かせる蓮華は、純粋の象徴として崇められてきました。
このポーズは、社会の荒波の中で生きる私たちが、ヨーガを通じ自分自身を浄化しながら、美しい花を咲かせる過程を物語っているようです。
その先には、苦労を経て究極の境地に至ったバラドヴァージャのように、何よりも美しい果報が待ち受けているはずです。

現在、ヨーガは国際的に認められ、その教えに触れることが容易となりました。
そこには、こうした先人たちの尽きない探求があります。
ヨーガを通じ、それぞれに与えられた道のりを歩むことで、やがて美しい解脱に至ることができるに違いありません。

(文章:ひるま)

138、インド音楽の楽しみ方(11)北インドの準古典叙情詩ガザルの形式

前回Vol.137でご説明しました中世~宮廷終焉までのインド花柳界の二大歌謡のひとつ「Thumri」について述べました。今回は、他方の「Ghazal」ですが、共通項の同じ文章もここに記します。図も共通です。
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図は、上段がトゥムリの構成で、下段がアラブ・ペルシア様式の叙情詩ガザルの構成です。この二種はいずれも中世インド花柳界で発展した準古典音楽叙情歌ですが、厳密には以下のように分別されます。

トゥムリ
1)主にヒンドゥー教徒の下層音楽階級の女子が舞踊と共に身に付ける歌唱様式
ムスリマ(イスラム教徒の女子)の芸姑でも歌う者は居る。
ガザルを歌うヒンドゥー系の芸姑は少なかったと思われるが例外もある。
宮廷文化が終焉した1945年以降は、芸術音楽として宗派階級は問わない。
2)主にヒンドゥー教の神々の物語を、平凡な人間の恋愛叙事詩に見立てて歌う。
イスラム支配下でヒンドゥーイズムを継承する為の策だったとも言われる。
同じ芸姑の舞踊では、全体はペルシア風胡旋舞だが、手首より先のムドラで
ヒンドゥー寺院デーヴァダースィの伝統を継承したとも言われる。
3)基本的に軽いラーガ(旋法)、および混合ラーガを用い、更にしばしば
ラーガに無い音を臨時に加えたりする。
4)同じ一族・家系に生まれた男子は、太鼓:タブラと弓奏楽器:サーランギー
を身につける。
5)歌詞は、主題の一二行しかなく、同じ歌詞や、その部分の単語を様々な旋律で
歌う即興歌謡「Neraval」が本領である。

ガザル
1)アラブで生まれペルシアで育った後、インドでインド音楽とも習合して完成した
ペルシア・シルクロード・アラブ・トルコ・北アフリカにもあるが、各地で
各地の伝統音楽のスタイルで歌われる。
2)二行連句で、冒頭の連句が「主題:結論的な内容」で、その後の展開部で
物語の内容を深めて行く。各二行目に韻が踏まれる。
この構造は、中世ヒンドゥー献身歌バジャンに影響を与えた。
3)各展開部の後は主題に戻るが、その度に伴奏楽器は盛り上がる。
序唱歌手が居る場合、主題に戻ると序唱者の合唱が加わる。これはヒンドゥー
讃歌キールターンに影響を与えた。
4)主にイスラム教徒の下層音楽階級の女子が舞踊と共に身に付ける歌唱様式
恐らく必須ではないが、大概この種の芸姑はトゥムリ系歌謡も歌う。
5)花柳界の他、富豪の邸宅などで歌う近似の歌唱様式もある。
6)主題はほぼ定型通り歌われるが、展開部は即興の余地が多い。
トゥムリのようなNeravalも含むが多くなく、比較すれば遥かに短い。
7)同じ一族・家系に生まれた男子は、太鼓:タブラと弓奏楽器:サーランギー
を身につける。

大雑把に説明するとことようになります。もうお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、見落としがちな重要な点は、元々は両者の音楽カーストは同じだった、ということです。それが10世紀に以降イスラム支配下に於かれた都市で、一方は生き残るためにイスラムに改宗し、一方は、やはり生き残る選択肢として改宗しなかった、ということです。
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トゥムリ歌手の場合、当然のイスラム教徒の客が多い店で歌い踊りますが、ヒンドゥー娘であることの価値がある訳です。逆にムスリマ歌手は、イスラム教徒富豪の邸宅にも出張出来るという事情です。

また古典音楽にとって重要なポイントが二つあります。ひとつは、中世以降この花柳界の音楽文化が古典音楽に大きな影響を与えていたということです。実際弦楽器シタール、太鼓:タブラ、弓奏楽器:サーランギ、そしてカヤール声楽様式などはずべて、この花柳界で生まれたものです。勿論、宮廷古典音楽の末端に加えられ(次第に出世し宮廷文化の最後の時代には主流にまで登り詰める)た後、科学音楽に根差す古い伝統古典音楽の要素も加味されました。

その一方で、もうひとつのポイントは、花柳界の歌姫・舞姫と男兄弟のタブラ、サーランギー奏者たちは、宮廷楽師の貴重な定収入源のお弟子であったことです。宮廷で上位に位置すれば、給料も充分な上に、名演奏を記す度に、聴衆からの「おひねり」や王からの「褒美」が出たりしますが、中下級ですと、給料ではやっとの生活になります。

(以上前回と共通事項)
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ガザルの構成は、トゥムリより遥かに複雑ですが、極めて規則的なので、分かり易い聴き易いと言えます。

まず、歌詞は二行連句で、同時代に発展したヒンドゥー讃歌キールターンや献身歌バジャンにも影響を与えています。

主題と展開部は、いずれも二行連句が「上の句・下の句」の二つの構成になっており、まとめて「バイト」と呼ばれます。冒頭の「主題のバイト」と「最後のバイト」は、特別にそれぞれ「マトゥラー」「マクター」と呼ばれ、マクターは大概四番か、それ以上の場合でも演奏会や録音では割愛して四番に持って来て終わることが多く見られます。

マクターには、作者の名前を雅号のように入れ込むことが風習で、これもヒンドゥー献身歌バジャンどころか、南インド古典声楽のクリティーにも伝わっています。ガザルではこの雅号は「タハッルス」と呼ばれます。

従って、作詞家の名と詩は紛れも無く正確に継承されているということです。しかし、旋律やラーガ、そしてガザルにも多い臨時音は、花柳界での口承伝承に頼る他なく、変化している部分もあるかも知れません。楽器間奏に関しては、伝承と主題の旋律を基に、録音の度に編曲者が作曲しているようです。
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ヒンドゥスタン・ガザルの最大の特徴が、繰り返され主題に戻る毎に次第に盛り上がることです。

図のガザルの一行目では、最初の間奏「サズ(ペルイシア語で「楽器」の意味)は、同じ中庸のテンポのタブラ伴奏で演奏されますが、はじめの展開部の後に初めて戻った主題では、後半にタブラの「ラギー」に替わります。タブラのラギーは、倍速~四倍速で叩きますが、オリジナルのテンポとノリはキープされています。これが最後に主題に戻る時には、戻った頃からラギーに替わって、歌い手は相変わらず淡々と歌うのに対し、伴奏は非常に熱く盛り上げているのです。この構造は、トゥムリと同じです。(トゥムリでは後半にまとめて行いますが)

図の一行目の後半、主題に戻った途中からタブラだけラギーになるのは、実は歌い手ははじめの連句しか歌わないからです。残る下の句は楽器伴奏だけとなります。
そして、間奏は、展開部の二回目の後の戻り以降、撥弦楽器はピッキングを二倍四倍速で弾き、弓奏楽器は運弓を倍にして盛り上げます。
が、次の展開部の直前で、全員「ストン!」と冒頭と同じテンポ・躍動感に戻すのです。

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この手法には、「歌詞を聴き入ること」と「歌詞を理解すること」というガザルの最も重要な基本があります。
まず、何度も聴いたことがある曲(詩)でも、聴衆のみならず伴奏者、歌い手さえもが「初めて」の気分・気持ちで聴き・歌うのです。
これは、ペルシア語やウルドゥー語の詩「シェール」の即興の会の風習から来ているのかも知れません。日本の和歌や川柳の会のように集った愛好者は、車座になり、一人一人皆で決めたテーマで順にその場で即興詩を詠うのです。

単なる詩会と異なる点は、次々隣に回すことと、いささか勝負・腕比べ的であることです。考えている時間は、「しりとり」に近いほど少ないスリリングなものです。日本でも江戸時代に流行った「連歌」があります。

ガザルもトゥムリも、その場その場で即興的に歌うことが主流であったと考えられ、伴奏者もはじめの主題も各展開部も「その時初めて聴いた」という設定です。
従って、伴奏が盛り上がる・派手に弾くことはあり得ないのです。
ところが主題に戻った際は、話しは変わり、二度目に聴く文言ですから、反応せねばならず、ラギーで盛り上げることで反応を示すのです。

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また昔から私は、このガザルを説明する時に「ペッパー警部型」と言って来ましたが、分かり易かろうと思った例えですが、ぼちぼち数年前から、「ペッパー警部って歌を知らない」という人が増えて来て困っています。あの時代ですと、老若男女同じ曲を引き合いに出しても話しが通じましたが、この二十年、皆に通じる曲がないからです。

「ペッパー警部型」の冒頭の歌詞を要約すれば、「ペッパー警部邪魔をするな!私たちはこれから良いところなのだ!」というものですが、「初めて聴いた設定」では、「ペッパー警部って誰?」「私たちって誰?」「良いところって何?」となる訳です。

同様に、パキスタンの「ガザルの帝王」と呼ばれた歌手の名曲では、「もし、恋愛に哲学というものがあるのなら。教えてやって欲しいものだ女性達に」という主題があります。ペッパー警部同様に、これだけでは全く意味が分かりません。なので、展開部でその「理由、事情」を語り、聴衆もそれを聴こうとする訳です。

従って、展開部の直前では伴奏のラギーを止め、聴き入る態勢に切り替えるのです。

逆に主題に再び戻った際は、それが繰り返される度に、
「おお!なるほどね!おっしゃる(主題の)意味が分かって来ましたぞ!」のリアクションの意味を込めてラギーを展開するのです。

このラギーで聴衆も盛り上がるとともに「分かった気分」も充実します。そして、恐らくこのタイミングが「おひねり」の絶好のタイミングとなるのです。

絵のジャケットのLPは、ミルザガリブの作品を歌った往年のガザル歌手のコンピレイション。
写真はパキスタン・カラチで幸運にもインタヴューが出来た「ガザルの帝王」の一人、グーラム・アリ氏と

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何時も、最後までご高読を誠にありがとうございます。

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また、現在実施しております「インド音楽旋法ラーガ・アンケート」は、まだまだご回答が少ないので、
是非、奮ってご参加下さいますよう。宜しくお願いいたします。

https://youtu.be/wWmYiPbgCzg

4月~6月も、インド楽器とVedic-Chant、アーユルヴェーダ音楽療法の「無料体験講座」を行います。詳しくは「若林忠宏・民族音楽教室」のFacebook-Page「Zindagi-e-Mosiqui」か、若林のTime-Lineにメッセージでお尋ね下さい。 九州に音楽仲間さんが居らっしゃる方は是非、ご周知下さると幸いです。

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You-Tubeに関連作品を幾つかアップしております。
是非ご参考にして下さいませ。

Hindu Chant講座Vol.1

Hindu Chant講座Vol.2

Hindu Chant講座Vol.3

Hindu Chant講座Vol.4

Vedic Chant入門講座(基本理解編)

Ayurveda音楽療法紹介(基礎理解編)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編1)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編2)

アーユルヴェーダ音楽療法 (実践編3)

「いいね!」「チャンネル登録」などの応援を頂けましたら誠に幸いです。

(文章:若林 忠宏

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若林忠宏氏によるオリジナル・ヨーガミュージック製作(デモ音源申込み)
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