バッタやイナゴなど、自然界には強靭な後脚で大きく飛び跳ねる直翅目の昆虫がいます。
こうした昆虫の跳躍は、身の危険を察知した時に生み出される生き残りをかけた力ともいわれます。
ヨーガには、これら直翅目の昆虫(グラスホッパー)の姿を真似るポーズの実践が伝わります。
そのポーズは、パールシュヴァ(側面)、ブジャ(腕)、ダンダ(棒)、アーサナ(ポーズ)という言葉からなる、パールシュヴァブジャダンダーサナと呼ばれます。
広くは、グラスホッパー・ポーズとして知られています。
パールシュヴァブジャダンダーサナという名前の通り、脚を棒のように伸ばしながら、捻った身体の側面を腕で支える難易度の高いポーズです。
その姿勢は、今にも飛び跳ねようとする昆虫の姿に重なります。
直翅目の昆虫は、周囲の音や振動を感じ取り、迫り来るものに対して反射を生み出す力があるといわれます。
そんな姿を真似るこのポーズには、内なる声に耳を傾け、自分自身の存在に対してより意味のあるアプローチを生み出す力があるとされます。
このポーズは、股関節の開き、上半身の捻り、腕のバランスという3つの動きが中心となるポーズです。
それぞれの動きは、ムーラーダーラ・チャクラ、マニプーラ・チャクラ、アージュニャー・チャクラに働きかける力があります。
この3つのチャクラは、与えられた命をまっとうする力を私たちに与えてくれるものです。
脊椎の基底にあるムーラーダーラ・チャクラは、土の要素を持ち、生命エネルギーが眠ると伝えられる場所です。
お腹の辺りにあるマニプーラ・チャクラは、火の要素を持ち、太陽が万物を照らすように私たちに自信を与えてくれると伝えられます。
眉間のあたりにあるアージュニャー・チャクラは、第3の目ともいわれるように、集中力を高め、自分自身の本質を知る力を与えてくれるといわれます。
これらのチャクラの働きによって、私たちは自分自身の本質である内なる声を聞き、真の目的に向かって生きるための力を得ることが可能になります。
周囲の喧騒に自分自身の本質をかき消させることが少なくない日々において、こうした動きは、内なる世界に渦巻く真の力に繋がることを可能にしてくれます。
私たちを育む豊かな自然には、本質を学ぶ多くの機会が溢れています。
インドでは、こうした自然界の動きのひとつひとつが神格化され、古来より崇められてきました。
これらの動きを学ぶ時、私たちは与えられた命をまっとうしながら、真に豊かな日々を生きることができるはずです。
(文章:ひるま)
※グラスホッパー・ポーズは、ドラゴンフライ・ポーズと呼ばれることもあります。
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