バガヴァッド・ギーターでクリシュナより教えを受けるアルジュナは、弓の名手であるドローナーチャーリヤを師として弓を修めた、傑出した戦士でした。しかし、大戦マハーバーラタの戦場において、敵方に親族や友人を含め、師であるドローナーチャーリヤの姿があるのを目にし、困惑します。彼らを殺めなければならなかったからです。
そんなアルジュナの心の内を教えられたのが、ヨーガで広く実践されるダヌーラーサナでした。ダヌーラは弓を意味します。うつ伏せの状態から、両手で両足をつかみ引っ張り上げ、背中を反らせるようにしながら胸を開くこのポーズは、まるで弓のような形をとります。
私たちは、日常生活の中で背中を反ることはあまりなく、こうした後屈は、大きなエネルギーを要するアーサナの一つです。普段はない動きの中で、呼吸が難しく感じることも少なくありません。そして、大きく胸が開くことで働き出すアナーハタ・チャクラによって、さまざまな感情が湧き出てくることもあります。
それはまるで、戦場に立ち困惑するアルジュナのようです。苦しい状況と複雑な感情。ダヌーラーサナの実践は、そんな状況の中で、どのように行動をすればいいのか、そして、どのように物事と向き合えばいいのかを教えてくれるアーサナでもあります。
苦しい状況と複雑な感情の中で、ゆっくりと呼吸をする修練を繰り返すことで、どんな状況でも、落ち着きを保つ術を学ばせてくれます。そして、更に大きく胸を開き、自分自身を束縛する感情を解放していくことは、自分自身を真の姿へと近づけてくれるようでした。何より、この修練が日々に落ち着きを与えてくれることを思うと、ただ行為を全うし続けることの重要性を教えられています。
弓を操る傑出した戦士のアルジュナは、クリシュナの教えをもとに、勇ましく戦いに挑みました。私たちの日々に溢れるさまざまな苦難も、ヨーガという術を用いることで、勝ち抜くことができるに違いありません。
(文章:ひるま)
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