あらゆる願いを叶えることができる神秘の力を有していた、ヴァシシュタと呼ばれる聖者がいます。七聖賢の一人に数えられ、ラーマ神に教えを説いた偉大な聖者として崇められるヴァシシュタは、人生における解脱の意味を私たちに説いています。
ヨーガには、このヴァシシュタに捧げられるポーズがあります。片側の手足でバランスを取るこのポーズは、体幹を強化し、左右を交互に行うことで、身体に均整がもたらされるといわれます。深い集中力が必要とされるこのポーズの実践を通じ、ヴァシシュタが説いた重要な教えの意味が見えてきます。
ヴァシシュタの教えは、聖典「ヨーガ・ヴァーシシュタ」で明らかになります。ヨーガ・ヴァーシシュタは、人生の苦しみに苛まれていたラーマ神に教えを説く、ヴァシシュタとラーマ神の対話で構成されます。生きながらの解脱について説かれるその壮大な対話では、私たちが解脱への理解を深めながら、与えられた人生をまっとうする術が説かれていきます。
ヴァシシュタに捧げられるポーズは、深い集中力と慎重なバランスを必要とします。ポーズを維持するためには、明確な焦点も不可欠です。その実践を通じては、均整のとれた心身と共に明瞭な思考が生み出され、真実を理解する力が与えられます。
心身が一方向に傾いていれば、真実は一部しか見えないかもしれません。真実の全体を見るためには、私たちは時に、心身の向きを変えしっかりと焦点を合わせる必要があります。
この世に生を受けた私たちにとって、解脱とは、人生を手放し静寂の中に生きることだけを意味するのではないと幾度となく教えられました。静と動、智慧と行為の間でバランスをとりながら、社会生活の中でさまざまな義務をまっとうし幸せに生きることが、生きながらの解脱のように思います。
ヴァシシュタの教えによって、ラーマ神は完璧な人格者として崇められるようになりました。このポーズを通じて心身に均整をとることで、私たちはよりまっすぐに、解脱への歩みを進めることができるはずです。そこでは、あらゆる願いを叶えることのできる神秘の力を得ることができるに違いありません。
(文章:ひるま)
コメント