ヴァジュラ・ムドラー

夢や目標の実現には、日々において自らを突き動かす原動力となるものが欠かせません。
しかし、途中で意欲を失ったり、怠惰な気持ちを抱いたり、やる気が出ずに足踏みし、悶々とする日々があることも事実です。
ヨーガには、そんな感情を払拭し、熱意を持って物事に取り組むための力を与えてくれる、ある実践が伝わります。

その実践は、ヴァジュラ・ムドラーと呼ばれます。
ヴァジュラは雷雨の神であるインドラ神の武器として知られ、雷のように抑えがたい力があると信じられます。
何にも破壊されることのないその強い力は、ダイヤモンドにも例えられるほどです。
ヴァジュラ・ムドラーの実践を通じては、その性質のように、自分自身の内で高まる強固な熱意を感じることができると伝えられます。

ヴァジュラ・ムドラーは、ゆったりと座った姿勢で行ないます。
その姿勢で、手の平を上に向けて膝の上に置いておきます。
次に、中指、薬指、小指の３本を曲げ、親指の先端と合わせます。
その状態で、人差し指を強くまっすぐに伸ばします。
この手の形を保持するのがヴァジュラ・ムドラーです。

私たちの５本の指には、親指が火、人差し指が風、中指が空、薬指が地、小指が水というように、５大元素の象徴があります。
ヴァジュラ・ムドラーの実践を通じては、体内の風の要素を司る人差し指を突き出すことで、体内において強い風が吹くように風の要素が強まります。
これにより、他の要素が調和する中で、生命エネルギーが流れるナーディー（気道）が一掃されると伝えられます。

ヴァジュラ・ムドラーは、血液循環を改善するムドラーとも呼ばれるように、体内のエネルギーの流れを向上する特別な力があると信じられるムドラーです。
ナーディーの滞りが一掃されることで、潜在的なエネルギーであるクンダリニーの覚醒を助けるともいわれます。

伸ばした人差し指は、燃えるような雷光の武器であるヴァジュラを象徴するものでもあります。
ヴァジュラには、煩悩を打ち砕く武器の象徴があるように、私たちの無知の覆いを拭い去り、知識という明るい光を与えてくれる力があるとされます。
ムドラーを通じ、自分自身の内にその形を築くことで、光のある方へ突き進むまっすぐな力を内なる世界に巡らすことが可能になります。

このヴァジュラ・ムドラーの実践は、思い悩み躊躇することが少なくない日々において、夢や目標に向かって邁進する力を与えてくれると伝えられてきました。
そうして究極の目的に辿り着くことができるように、受け継がれる叡智を中心に据えて日々を歩むことを心がけたいと感じます。

（文章：ひるま）

※ヴァジュラ・ムドラーの実践を通じて強すぎるエネルギーを感じる場合は、数分間の実践に留めることが勧められます。