動乱し混迷する社会においては、刻々と変化する状況に疲弊したり、先の見えない不安を感じたりすることが少なくありません。
霊的叡智の宝庫であるインドの教えには、そんな気分を吹き飛ばすさまざまな実践が伝わります。
自分自身の内でそのエネルギーを強く感じることができる実践のひとつが、マカラ・ムドラーです。
マカラは、ワニを意味します。
じっと動かずに獲物を狙うワニは、凄まじい瞬発力によって急襲し、獲物を捕らえます。
マカラ・ムドラーは、静と動を兼ね備えたそんなワニの動きのように、相反するエネルギーの結合を生み出しながら、瞬時に体内のエネルギーを増加させると信じられるムドラーです。
それは、身体の奥深くに蓄積された、手つかずのエネルギーを呼び覚ますともいわれます。
このムドラーでは、まず両手の平を上に向けて重ね合わせます。
一般的に、女性は左手を上に、男性は右手を上にして重ね合わせます。
そして、下側の手の親指を、上側の手の小指と薬指の間に通して上側の手の平に置きます。
また、上側の手の親指と薬指の先端を合わせ、残りの指は真っ直ぐに伸ばします。
この手の形がマカラ・ムドラーです。
親指は火、人差し指は風、中指は空、薬指は地、小指は水というように、5本の指にはそれぞれ5元素の象徴があります。
このムドラーにおいて、薬指(地)と小指(水)の間を割って通る親指(火)は、手の平にある、溜め込んだものを排出する腎臓のツボを刺激します。
同時に、地の要素を持つムーラーダーラ・チャクラと、水の要素を持つスヴァーディシュターナ・チャクラを活性化すると伝えられてきました。
ムーラーダーラ・チャクラは大地のような安定を生み出し、スヴァーディシュターナ・チャクラは創造や生産を促す力を生み出すとされます。
この2つのチャクラに働きかけるマカラ・ムドラーの実践によって、身体的・精神的な安定を得ながら、蓄積されたエネルギーの貯蔵庫にアクセスすることができるといわれます。
ワニは、静と動を兼ね備えるだけでなく、陸上(地)と水中(水)という相反する要素の間を容易に移動します。
このムドラーを通じて、自分自身の内の相反するエネルギーに結合を生み出し、潜在能力を知ることで、憂鬱な気分や不安を払拭することができるでしょう。
こうした実践を通じて、一人ひとりが豊かに過ごすことで、社会には良いエネルギーが満ちていくはずです。
(文章:ひるま)
※マカラ・ムドラーは、長時間に渡る実践は避け、10分間ほどの実践が勧められます。
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