シヴァ神の恐ろしい化身であるバイラヴァ神は、邪悪な力を破壊する存在として尊ばれる神格です。
バイラヴァ神が破壊するものは、幻想、無知、自我、執着など、私たちの真の幸福を妨げるあらゆる否定的な力にあたります。
これらは、日常生活の中で私たちが無意識のうちに抱え込んでしまうものであり、真の幸福のためにはこれらを意識して解放することが欠かせません。
ヨーガには、このバイラヴァ神の力を呼び覚ますポーズの実践があります。
バイラヴァーサナと呼ばれるこのポーズは、開脚をしながら片側の手足でバランスを取るヴァシシュタのポーズの変形として捉えられます。
バイラヴァーサナでは、この開脚した足を自らの頭の後ろに回す、非常に難易度の高いポーズです。
このポーズの意味を理解するには、バイラヴァ神の誕生にまつわる神話を知る必要があります。
それには、ブラフマー神との有名な神話が伝わります。
創造神であるブラフマー神は、宇宙を創造した自分がもっとも偉大な存在であるとエゴに満ちた傲慢な態度を見せたことがありました。
これに激怒したシヴァ神は恐ろしいバイラヴァ神となり、５つあったブラフマー神の頭のひとつを切り落としたと伝えられます。
バイラヴァーサナにおいて開脚した足を頭の後ろに回す動作は、自らが自分の頭を切り落とすような動作に見えます。
それは、エゴを自ら切り落とす行為を象徴するものであり、悪質な思考に支配されないように、エゴを制御する力を育むことを意味しています。
難易度の高いこのポーズは、一見して挑戦すること自体が不可能に見えるポーズでもあります。
しかし、その挑戦こそ、エゴが生み出す自己像の束縛から自らを解放する力を与えてくれるものに他ありません。
そうして自分の限界を超える勇気を持ち、あらゆる困難に対して柔軟になることを学ぶ時、私たちは真の幸福への道を開くことが可能になります。
ヨーガは自分自身との対話であり、その対話を通じてより良い変化をもたらすための実践です。
バイラヴァ神はこのポーズの取り組みを通じて、エゴという強敵に立ち向かい、すべての課題を乗り越えるための力を与えてくれます。
自分自身を解放するこの道のりを通じて、私たちは最終的に真の幸福へと辿り着くことができるはずです。
（文章：ひるま）
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