健康食材として広く用いられる野菜に、タマネギやニンニクがあります。
多くの効能が伝えられるとともに、豊かな風味によって料理を引き立てるタマネギやニンニクは、食卓に欠かすことのできない食材でもあります。
しかし、このタマネギとニンニクは、霊性を育む観点においては控えるべき食材として知られています。
特に、霊性修行に励む間や、プージャーなどのサットヴァ(純質)のエネルギーを受ける時には、摂取を避けることが勧められます。
神々に捧げられるプラサーダ(供物)においても、タマネギやニンニクが使用されることはありません。
これには、タマネギやニンニクが好ましくない影響を生み出す刺激物と考えられていることに理由があります。
それを示す、ある言い伝えがあります。
一説に、このタマネギとニンニクは、凶星とみなされるラーフとケートゥであると伝えられることがあります。
これには、ヒンドゥー教の創造神話である乳海攪拌にまつわる神話が伝わります。
不死の霊薬であるアムリタを生み出す乳海撹拌において、悪魔たちに盗まれたアムリタを取り返そうと、ヴィシュヌ神はモーヒニーという美女になりすましました。
モーヒニーは悪魔たちを誘惑し、その間にアムリタを取り戻します。
その後、取り戻したアムリタを神々に分配しようとした時、そこに神々の姿をした悪魔がやってきます。
モーヒニーは気がつかず、その悪魔にもアムリタを分け与えました。
しかし、太陽と月によってその悪事がばらされると、モーヒニーは悪魔の首を切り落とします。
すると、その悪魔は凶星として蔑まれるラーフとケートゥになり、その口からはアムリタが地面に滴り落ちます。
そうしてこぼれ落ちたアムリタから生まれたのが、タマネギとニンニクであると伝えられます。
タマネギやニンニクに見られるネギ属(Allium)の植物は、ラジャス(激質)とタマス(暗質)に分類され、熱情や無知を増大させると信じられてきました。
そうして生まれる欲望は、興奮や不安を刺激することから、霊性修行を妨げると考えられています。
そんなタマネギとニンニクがラーフとケートゥに例えられることは、私たちに明確な意味を与えてくれています。
ラーフとケートゥがそうであったように、欲望のもとで為される行為は、自らを困難に陥れるということです。
実際に、タマネギやニンニクに含まれるアリシンには、多くの効能があるも、過剰摂取によっては健康障害を引き起こす危険性があることが伝えられます。
多くの効能が伝えられるタマネギとニンニクはアムリタでありながら、その使用方法によっては好ましくない影響が生じるということを、ラーフとケートゥが気づかせてくれているようです。
どのような事柄も、適切に正しい方法で用いることが、何よりもの恩恵を与えてくれるものになります。
健やかな心身で毎日を過ごすためにも、こうした価値ある教えを学び、日々に生かしていくことを心がけたいと感じます。
(文章:ひるま)
※タマネギとニンニクにまつわる神話は、この他にも異なる神話が伝わります。
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