インド古典中もっとも有名なバガヴァッド・ギーターの原典講読です。
インドの霊的文化の支柱となる本書を、サンスクリット語の学習をしながらお楽しみください。
कच्चिन् नोभयविभ्रष्टश्
kaccin nobhayavibhraṣṭaś
カッチン ノーバヤヴィブラシュタシュ
両者から脱落した者は、ではないのか?
kaccit【疑問副詞 kaccid】何か;〜にないものを望むも;決して〜ない
na【否定辞】〜でない
ubhaya【男性】両方の
vibhraṣṭas【男性・単数・主格 vibhraṣṭa(√bhraṃśの過去受動分詞】落ちた;(―゜)から逃れた;消失した;(―゜)において不成功な;(―゜)を奪われた
→ubhayavibhraṣṭas【男性・単数・主格、限定複合語】[〜は、〜が]両者において不成功な、両方を奪われた
※「両者」=「行為の道とヨーガの道」(シャンカラ)、「放擲とヨーガ」(ゼーナー)、「行為の道と知識の道」(マドゥスーダナ)(上村勝彦注)
छिन्नाभ्रम् इव नश्यति ।
chinnābhram iva naśyati |
チンナーブラム イヴァ ナッシャティ
ちぎれ雲のように消える
chinna【√chidの過去受動分詞】切られた、切り取られた、切断された;刻目を付けられた;束縛された;失われた
abhram【中性・単数・主格 abhra】[〜は、〜が]曇天;(雨)雲;空
→chinnābhram【中性・単数・主格、同格限定複合語】[〜は、〜が]ちぎれ雲、断雲
iva【副詞】〜のように、〜と同様に、言わば
naśyati【三人称・単数・パラスマイパダ・現在 √naś】[彼は〜、それは〜]失われる、滅する、没する、消える、去る;逃げる、避ける;無益である、徒労である
अप्रतिष्ठो महाबाहो
apratiṣṭho mahābāho
アプラティシュトー マハーバーホー
拠り所なく、クリシュナよ
apratiṣṭha【男性・単数・主格 apratiṣṭha】根拠のない、滅ぶべき、不安定な;価値のない
mahābāho【男性・単数・呼格 mahābāhu】[〜よ]強大な腕力を持つ(者)、長い腕を持つ(者)、強い臂を持つ(者)。ここではクリシュナのこと。
विमूढो ब्रह्मणः पथि ॥
vimūḍho brahmaṇaḥ pathi ||
ヴィムードー ブラフマナハ パティ
ブラフマンの道において迷い
vimūḍhas【男性・単数・主格 vimūḍha(vi√muhの過去受動分詞)】〜に関して途方に暮れた、当惑した、不確実な;愚かな
brahmaṇas【中性・単数・属格 brahman】[〜の、〜にとって]聖智に満ちた者、婆羅門;祭官とくにヴェーダ祭式を総監する祭官;ブラフマンを神格化した最高神、梵天、宇宙の創造者として保持者ヴィシュヌおよび破壊神シヴァとともにトリムルティを形成する神格;理性
pathi【男性・単数・処格 path】[〜において、〜のなかで]路、道、小路;旅程;正路;地獄
कच्चिन्नोभयविभ्रष्टश्छिन्नाभ्रमिव नश्यति ।
अप्रतिष्ठो महाबाहो विमूढो ब्रह्मणः पथि ॥३८॥
kaccinnobhayavibhraṣṭaśchinnābhramiva naśyati |
apratiṣṭho mahābāho vimūḍho brahmaṇaḥ pathi ||38||
二つの道から脱落した者は、拠り所なく、ブラフマンの道において迷い、
ちぎれ雲のように消えるのではないか?クリシュナよ。
コメント